百敷や
古き軒端の
しのぶにも
なほあまりある
むかしなりけり
ももしきや
ふるきのきばの
しのぶにも
なほあまりある
むかしなりけり
О, дворец государей!
На стрехе обветшалой трава
«Синобу» — тоски сокрытой —
Все гуще, гуще растёт,
Нескончаема память былого.
Данное стихотворение взято из его личного изборника. Написано оно было за несколько лет до ссылки.
難波潟
月の出しほの
夕なぎに
春のかすみの
限りをぞ知る
なにはがた
つきのいでしほの
ゆふなぎに
はるのかすみの
かぎりをぞしる


春よりも
花はいくかも
なきものを
強ひても惜め
鶯のこゑ
はるよりも
はなはいくかも
なきものを
しひてもをしめ
うぐひすのこゑ


影しあれば
をられぬ波も
をられ鳬
汀の藤の
春のかざしに
かげしあれば
をられぬなみも
をられけり
みぎはのふぢの
はるのかざしに


山城の
常磐のもりは
名のみして
下草いそぐ
夏は來にけり
やましろの
ときはのもりは
なのみして
したくさいそぐ
なつはきにけり


秋風の
枝吹しをる
木の間より
かつ〴〵見ゆる
山の端の月
あきかぜの
えだふきしをる
このまより
かつがつみゆる
やまのはのつき


敷島や
御室の山の
岩こすげ
それとも見えず
霜さゆるころ
しきしまや
みむろのやまの
いはこすげ
それともみえず
しもさゆるころ


すゞ分くる
篠にをりはへ
旅衣
ほす日も知らず
山のした露
すずわくる
しのにをりはへ
たびころも
ほすひもしらず
やまのしたつゆ


苫屋形
枕ながれぬ
浮寐には
ゆめやは見ゆる
あらき濱かぜ
ともやかた
まくらながれぬ
うきねには
ゆめやはみゆる
あらきはまかぜ


仄にも
しらせてけりな
東なる
霞のうらの
あまのいさり火
ほのかにも
しらせてけりな
あづまなる
かすみのうらの
あまのいさりひ


濱千鳥
通ふ計の
跡はあれど
みぬめの浦に
ねをのみぞ鳴く
はまちとり
かよふばかりの
あとはあれど
みぬめのうらに
ねをのみぞなく


秋の日の
山のは遠く
なるまゝに
麓の松の
かげぞすくなき
あきのひの
やまのはとほく
なるままに
ふもとのまつの
かげぞすくなき


降りつもる
松の枯葉の
深ければ
雪にもおそき
谷のかげ草
ふりつもる
まつのかれはの
ふかければ
ゆきにもおそき
たにのかげくさ


櫻花
咲くと見しまに
高砂の
松をのこして
かゝるしらくも
さくらばな
さくとみしまに
たかさごの
まつをのこして
かかるしらくも
Когда смотрел
На сакуры горной цветенье:
Как будто в Такасаго
Белое облако накрыло всё,
Оставив видными лишь сосны.
Примерный перевод

吉野河
雪げの水の
春のいろに
さそふともなき
花の下かぜ
よしのかは
ゆきげのみづの
はるのいろに
さそふともなき
はなのしたかぜ


雪とのみ
ふるの山邊は
埋もれて
青葉ぞ花の
志るしなりける
ゆきとのみ
ふるのやまべは
うづもれて
あをばぞはなの
しるしなりける
Покрылось всё
Возле горы Фуру
Как будто снегом:
Но по листьям зелёным
Понятно, что это цветы...
Примерный перевод

夏深き
板井の水の
いはまくら
秋風ならぬ
あかつきぞなき
なつふかき
いたゐのみづの
いはまくら
あきかぜならぬ
あかつきぞなき


狩人の
入野の露の
しらま弓
すゑもとをゝに
秋かぜぞ吹く
かりひとの
いりののつゆの
しらまゆみ
すゑもとををに
あきかぜぞふく


少女子が
玉ものすそや
しをるらむ
野島がさきの
秋の夕露
をとめこが
たまものすそや
しをるらむ
のじまがさきの
あきのゆふつゆ
Не дев ли юных
С подолов жемчужных осталась
Как путеводная нить
На мысе Нудзима
Осеннего вечера роса.
Примерный перевод
をとめこ = это обычно или юная дева, не замужем, или танцовщица госэти
しをる = заломить ветку, пометить путь
夕霧の
籬の秋の
はなずゝき
をちかたならぬ
袖かとぞ見る
ゆふぎりの
まがきのあきの
はなずゝき
をちかたならぬ
そでかとぞみる


更科の
山のあらしも
聲すみて
木曾のあさ衣
月にうつなり
さらしなの
やまのあらしも
こゑすみて
きそのあさぎぬ
つきにうつなり


龍田山
木葉吹きしく
秋風に
落ちていろづく
松のしたつゆ
たつたやま
このはふきしく
あきかぜに
おちていろづく
まつのしたつゆ


山風に
時雨やとほく
なりぬらむ
雲にたまらぬ
有あけの月
やまかぜに
しぐれやとほく
なりぬらむ
くもにたまらぬ
ありあけのつき


み室山
秋の時雨に
染めかへて
霜がれのこる
木々の下ぐさ
みむろやま
あきのしぐれに
そめかへて
しもがれのこる
きぎのしたぐさ
Гора Мимуро
Под осенним дождём
Окрасилась,
А у травы под деревьями
Пора увяданья...
Примерный перевод

山川の
氷も薄き
水の面に
むら〳〵つもる
今朝のはつゆき
やまかはの
こほりもうすき
みのおもに
むらむらつもる
けさのはつゆき
На горной реке,
Где тонок ледок,
И на поверхность воды,
Собирается в кучки
Утренний первый снежок.
Примерный перевод

伊駒山
雲なへだてそ
秋の月
あたりのそらは
時雨なりとも
いこまやま
くもなへだてそ
あきのつき
あたりのそらは
しぐれなりとも
Над горой Икома
Не скрывайте, облака,
Осеннюю луну,
Пусть с неба надо мною
И льёт осенний дождь.
Примерный перевод

言のはも
わが身時雨の
袖の上に
誰を忍ぶの
杜の木がらし
ことのはも
わがみしぐれの
そでのうへに
たれをしのぶの
もりのこがらし


あら玉の
年の明け行く
山かづら
霞をかけて
春は來にけり
あらたまの
としのあけゆく
やまかづら
かすみをかけて
はるはきにけり


見わたせば
霞ぞたてる
高砂の
松はあらしの
音ばかりして
みわたせば
かすみぞたてる
たかさごの
まつはあらしの
おとばかりして


ほの〴〵と
明け行く山の
櫻花
かつ降り増る
雪かとぞ見る
ほのぼのと
あけゆくやまの
さくらばな
かつふりまさる
ゆきかとぞみる


朝な〳〵
みつの上野に
かる草の
昨日の跡は
かつ茂りつゝ
あさなさな
みつのうへのに
かるくさの
きのふのあとは
かつしげりつつ


僞の
なき世なりとも
いかゞせむ
契らでとはぬ
夕暮のそら
いつはりの
なきよなりとも
いかがせむ
ちぎらでとはぬ
ゆふぐれのそら


暮をだに
猶まちわびし
有明の
ふかき別と
なりにけるかな
くれをだに
なほまちわびし
ありあけの
ふかきわかれと
なりにけるかな


月もなほ
見し面影や
かはるらむ
なきふるしてし
袖の泪に
つきもなほ
みしおもかげや
かはるらむ
なきふるしてし
そでのなみだに


池水に
みぎはの松の
うつるより
月も千年の
影やそふらむ
いけみづに
みぎはのまつの
うつるより
つきもちとせの
かげやそふらむ


夕づく日
かすむ末野に
行く人の
すげの小笠に
春風ぞ吹く
ゆふづくひ
かすむすゑのに
ゆくひとの
すげのをかさに
はるかぜぞふく


ちくま川
春行く水は
澄みにけり
消えていくかの
峯の白雪
ちくまかは
はるゆくみづは
すみにけり
きえていくかの
みねのしらゆき


河のせに
秋をや殘す
もみぢ葉の
うすき色なる
山ぶきの花
かはのせに
あきをやのこす
もみぢはの
うすきいろなる
やまぶきのはな


池水は
風もおとせで
蓮葉の
うへこす玉は
ほたるなりけり
いけみづは
かぜもおとせで
はちすはの
うへこすたまは
ほたるなりけり


湊川
夏の行くては
知らねども
流れて早き
瀬々のゆふしで
みなとかは
なつのゆくては
しらねども
ながれてはやき
せぜのゆふしで


村雨の
空吹きすさぶ
夕かぜに
一葉づゝ散る
玉のをやなぎ
むらさめの
そらふきすさぶ
ゆふかぜに
ひとはづつちる
たまのをやなぎ


旅衣
朝立つ人は
たゆむなり
霧にくもれる
あけくれのそら
たびごろも
あさたつひとは
たゆむなり
きりにくもれる
あけくれのそら


思餘り
知られむと思ふ
ことの葉も
猶人つての
中ぞ悲しき
おもあまり
しられむとおもふ
ことのはも
なほひとつての
なかぞかなしき


忘れむと
思ふはおのが
心にて
誰が驚かす
なみだなるらむ
わすれむと
おもふはおのが
こころにて
たがおどろかす
なみだなるらむ


鹿のねを
入相の鐘に
吹きまぜて
己れ聲なき
みねのまつ風
しかのねを
いりあひのかねに
ふきまぜて
おのれこゑなき
みねのまつかぜ


千鳥鳴く
さほの山風
聲冴えて
かは霧白く
あけぬこの夜は
ちとりなく
さほのやまかぜ
こゑさえて
かはきりしらく
あけぬこのよは


入日さす
みねの浮雲
たなびきて
遙かにかへる
鳥のひと聲
いりひさす
みねのうきくも
たなびきて
はるかにかへる
とりのひとこゑ


夕付日
山のあなたに
なる儘に
雲の旗手ぞ
いろかはり行く
ゆふづくひ
やまのあなたに
なるままに
くものはたてぞ
いろかはりゆく


ますら男が
山かたつきて
住む庵の
外面に渡す
杉のまろ橋
ますらをが
やまかたつきて
すむいほの
そともにわたす
すぎのまろはし


曉と
おもはでしもや
時鳥
まだなかぞらの
つきに鳴くらむ
あかつきと
おもはでしもや
ほととぎす
まだなかぞらの
つきになくらむ


淺茅生や
床は草葉の
蟋蟀
なく音もかるゝ
野べのはつしも
あさぢうや
とこはくさばの
きりきりす
なくねもかるる
のべのはつしも


君もげに
是ぞ限の
形見とは
知らでや千世の
跡をとめけむ
きみもげに
これぞかぎりの
かたみとは
しらでやちよの
あとをとめけむ


風吹けば
峯のときは木
露落ちて
空より消ゆる
春のあわ雪
かぜふけば
みねのときはき
つゆおちて
そらよりきゆる
はるのあわゆき


芦邊より
潮滿ちくらし
天つ風
吹飯の浦に
たつぞ鳴くなる
あしべより
しほみちくらし
あまつかぜ
ふけひのうらに
たつぞなくなる


音羽川
山にや春の
越えつらむ
せき入れておとす
雪の下水
おとはかは
やまにやはるの
こえつらむ
せきいれておとす
ゆきのしたみづ


花の色に
猶をり知らぬ
かざしかな
三輪の檜原の
春の夕暮
はなのいろに
なほをりしらぬ
かざしかな
みはのひばらの
はるのゆふぐれ


水鳥の
羽がひの山の
春のいろに
ひとりまじらぬ
岩棡かな
みづとりの
はがひのやまの
はるのいろに
ひとりまじらぬ
いは棡かな


眞菰生ふる
伊香保の沼の
いか計り
浪越えぬらむ
梅雨の頃
まこもおふる
いかほのぬまの
いかばかり
なみこえぬらむ
さみだれのころ


秋田もる
かりほの苫屋
薄からし
月に濡れたる
よはのさ莚
あきたもる
かりほのともや
うすからし
つきにぬれたる
よはのさむしろ


志ぐれつる
村雲ながら
吹く風を
知らでや月の
山を出づ覽
しぐれつる
むらくもながら
ふくかぜを
しらでやつきの
やまをいづらん


清瀧や
岩間によどむ
冬がはの
うへは氷に
むすぶつきかげ
きよたきや
いはまによどむ
ふゆがはの
うへはこほりに
むすぶつきかげ


知る知らず
行くも歸るも
逢坂の
關の清水に
影は見ゆらむ
しるしらず
ゆくもかへるも
あふさかの
せきのしみづに
かげはみゆらむ


鳥の音の
曉よりも
つらかりき
おとせぬ人の
夕ぐれのそら
とりのおとの
あかつきよりも
つらかりき
おとせぬひとの
ゆふぐれのそら


和歌の浦
や羽根打ちかは
し濱千鳥
波に書置く
跡や殘らむ
わかのうら
やはねうちかは
しはまちと
りなみにかおく
あとやのこらむ


ふる雪に
いづれを花と
わぎもこが
をる袖にほふ
春の梅が枝
ふるゆきに
いづれをはなと
わぎもこが
をるそでにほふ
はるのうめがえだ


はなとりの
ほかにも春の
ありかほに
かすみてかかる
山の端の月
はなとりの
ほかにもはるの
ありかほに
かすみてかかる
やまのはのつき


今こむと
いはぬばかりぞ
ほととぎす
ありあけの月の
むらくもの空
いまこむと
いはぬばかりぞ
ほととぎす
ありあけのつきの
むらくものそら


みねの松
入日すずしき
やまかげの
すそのの小田に
早苗とるなり
みねのまつ
いりひすずしき
やまかげの
すそののをだに
さなへとるなり


さみだれの
雲のはれまを
待ちえても
月みる程の
夜半ぞすくなき
さみだれの
くものはれまを
まちえても
つきみるほどの
よはぞすくなき


草の葉に
置そめしより
白露の
袖の外なる
夕暮そなき
くさのはに
おきそめしより
しらつゆの
そでのほかなる
ゆふぐれそなき


明石かた
海士のとまやの
煙にも
しはしそくもる
秋のよの月
あかしかた
あまのとまやの
けぶりにも
しはしそくもる
あきのよのつき


をくら山
すそのゝ里の
夕霧に
やとこそみえね
衣うつ也
をくらやま
すそののさとの
ゆふぎりに
やとこそみえね
ころもうつなり


水くきの
をかのあさちの

霜のふりはや
夜さむ成らん
みづくきの
をかのあさちの
きりきりす
しものふりはや
よさむなるらん


をとは河
秋せく水の
しからみに
あまるも山の
木葉成けり
をとはかは
あきせくみづの
しからみに
あまるもやまの
このはなりけり


風さゆる
夜はの衣の
関守は
ねられぬまゝの
月やみるらん
かぜさゆる
よはのころもの
せきもりは
ねられぬままの
つきやみるらん


すか原や
ふしみの里の
さゝまくら
夢もいくよの
人めよくらん
すかはらや
ふしみのさとの
ささまくら
ゆめもいくよの
ひとめよくらん


一すちに
うきになしても
憑まれす
かはるにやすき
人の心は
ひとすちに
うきになしても
たのまれす
かはるにやすき
ひとのこころは


おもひ侘
さてもまたれし
夕暮の
よそなる物に
成にけるかな
おもひわび
さてもまたれし
ゆふぐれの
よそなるものに
なりにけるかな


飛鳥川
七瀬の淀に
吹風の
いたつらにのみ
ゆく月日かな
あすかがは
ななせのよどに
ふくかぜの
いたつらにのみ
ゆくつきひかな


百敷や
ふるき軒はの
忍ふにも
猶あまりある
むかし成けり
ももしきや
ふるきのきはの
しのふにも
なほあまりある
むかしなりけり


聞たひに
あはれとはかり
いひ捨て
いくよの人の
夢をみつらん
きくたひに
あはれとはかり
いひすてて
いくよのひとの
ゆめをみつらん


春日野や
また霜かれの
春風に
あをはすくなき
荻の焼原
かすがのや
またしもかれの
はるかぜに
あをはすくなき
をぎのやけはら


波まより
夕日かゝれる
高砂の
松のうはゝは
かすまさりけり
なみまより
ゆふひかかれる
たかさごの
まつのうははは
かすまさりけり


難波江の
塩干のかたや
かすむらん
あしまに遠き
あまのいさり火
なにはえの
しほひのかたや
かすむらん
あしまにとほき
あまのいさりひ


白雲や
花よりうへに
かゝる覧
さくらそ高き
かつらきの山
しらくもや
はなよりうへに
かかるらん
さくらそたかき
かつらきのやま


ともしして
こよひもあけぬ
玉くしけ
二村山の
みねの横雲
ともしして
こよひもあけぬ
たまくしけ
ふたむらやまの
みねのよこぐも


かきりあれは
昨日にまさる
露もなし
軒のしのふの
秋の初風
かきりあれは
きのふにまさる
つゆもなし
のきのしのふの
あきのはつかぜ


心あらは
衛士のたく火も
たゆむらん
こよひそ秋の
月はみるへき
こころあらは
ゑじのたくひも
たゆむらん
こよひそあきの
つきはみるへき


宮城野に
しからむ萩や
散ぬらん
あらはれてなく
さをしかのこゑ
みやぎのに
しからむはぎや
ちりぬらん
あらはれてなく
さをしかのこゑ


秋風は
いたらぬ袖も
なき物を
たか里よりか
衣うつらん
あきかぜは
いたらぬそでも
なきものを
たかさとよりか
ころもうつらん


さらしなや
夜わたる月の
里人も
なくさめかねて
衣うつ也
さらしなや
よわたるつきの
さとひとも
なくさめかねて
ころもうつなり


秋山の
よもの草木や
しほる覧
月は色そふ
嵐なれとも
あきやまの
よものくさきや
しほるらむ
つきはいろそふ
あらしなれとも


秋風に
なひく浅茅は
霜かれて
色ことになる
嶺の紅葉は
あきかぜに
なひくあさぢは
しもかれて
いろことになる
みねのもみぢは


大井川
もみちの色は
かはるとも
ふるきなかれの
跡はみゆらん
おほゐかは
もみちのいろは
かはるとも
ふるきなかれの
あとはみゆらん


ふかきよの
雲ゐの月や
さえぬらん
霜にわたせる
かさゝきの橋
ふかきよの
くもゐのつきや
さえぬらん
しもにわたせる
かささきのはし


みちのくの
野田の玉河
みわたせは
塩風こして
こほる月かけ
みちのくの
のたのたまかは
みわたせは
しほかぜこして
こほるつきかけ


春日野や
こその弥生の
花のかに
そめし心は
神そしるらん
かすがのや
こそのやよひの
はなのかに
そめしこころは
かみそしるらん


神なひの
岩瀬の杜の
はつ時雨
忍ひし色は
秋風そふく
かむなびの
いはせのもりの
はつしぐれ
しのひしいろは
あきかぜそふく


我袖や
松のかけなる
秋草の
うへはつれなき
色にいてなん
わがそでや
まつのかけなる
あきくさの
うへはつれなき
いろにいてなん


今さらに
人をはなにか
つらゝゐる
したにもしのふ
みつからそうき
いまさらに
ひとをはなにか
つららゐる
したにもしのふ
みつからそうき


偽と
おもひなからも
たのむかな
うきをしらぬは
心なりけり
いつはりと
おもひなからも
たのむかな
うきをしらぬは
こころなりけり


おもひ出よ
木のはのしたの
忘水
うつりし色に
たえははつとも
おもひいでよ
このはのしたの
わすれみづ
うつりしいろに
たえははつとも


のほりにし
春の霞を
したふとて
そむる衣の
色もはかなし
のほりにし
はるのかすみを
したふとて
そむるころもの
いろもはかなし


いる月の
おほろのし水
いかにして
つゐにすむへき
影をとむらん
いるつきの
おほろのしみづ
いかにして
つゐにすむへき
かげをとむらん


春のよの
みしかき夢と
聞しかと
なかき思ひの
さむるともなし
はるのよの
みしかきゆめと
ききしかと
なかきおもひの
さむるともなし


秋風に
又こそとはめ
津の国の
生田の杜の
はるのあけほの
あきかぜに
またこそとはめ
つのくにの
いくたのもりの
はるのあけほの


人ならぬ
岩木もさらに
かなしきは
みつのこしまの
秋の夕暮
ひとならぬ
いはきもさらに
かなしきは
みつのこしまの
あきのゆふぐれ


かくはかり
物思ふ秋の
いくとせに
猶のこりける
わかなみたかな
かくはかり
ものおもふあきの
いくとせに
なほのこりける
わかなみたかな


ふしわふる
籬の竹の
なかきよも
猶をきあまる
秋の白露
ふしわふる
まがきのたけの
なかきよも
なほをきあまる
あきのしらつゆ


ふかき夜の
雲ゐの月や
さえぬらん
霜にわたせる
かさゝきのはし
ふかきよの
くもゐのつきや
さえぬらん
しもにわたせる
かささきのはし

Есть в свитке "Зима"
霧はれは
あすもきてみん
鶉なく
いはたのをのは
紅葉しぬらん
きりはれは
あすもきてみん
うづらなく
いはたのをのは
もみぢしぬらん


いかはかり
麓のさとの
しくるらん
とを山うすく
かゝるむら雲
いかはかり
ふもとのさとの
しくるらん
とをやまうすく
かかるむらくも


うしとても
身をはいつくに
おくの海の
うのゐる岩も
波はかくらん
うしとても
みをはいつくに
おくのうみの
うのゐるいはも
なみはかくらん


くるゝ間も
頼むものとは
なけれとも
しらぬそ人の
命なりける
くるるまも
たのむものとは
なけれとも
しらぬそひとの
いのちなりける


うきたひに
そむきても又
いかゝせん
此世ひとつの
思ひならねは
うきたひに
そむきてもまた
いかかせん
このよひとつの
おもひならねは


山賎の
薗の垣ほの
梅の花
春しれとしも
うへすや有けん
やまがつの
そののかきほの
うめのはな
はるしれとしも
うへすやありけん


御吉野の
山のあなたの
桜花
人にしられぬ
人や見るらん
みよしのの
やまのあなたの
さくらばな
ひとにしられぬ
ひとやみるらん


夕立の
なこりはかりの
にはたつみ
日比もきかぬ
かはつ鳴なり
ゆふだちの
なこりはかりの
にはたつみ
ひころもきかぬ
かはづなくなり


狩人の
草分衣
ほしもあへす
秋のさか野の
よもの白露
かりひとの
くさわけころも
ほしもあへす
あきのさかのの
よものしらつゆ


爪木こる
遠山人は
かへるなり
里まてをくれ
秋の三か月
つまきこる
とほやまひとは
かへるなり
さとまてをくれ
あきのみかつき


秋をたに
いつかと思ひし
あらを田に
かりほす程に
成そしにける
あきをたに
いつかとおもひし
あらをたに
かりほすほどに
なりそしにける

*3あらを田はイ
秋深き
八十うち川の
はやきせに
紅葉そくたる
あけのそほ舟
あきふかき
やそうちかはの
はやきせに
もみぢそくたる
あけのそほふね


神無月
嵐にましる
むらさめに
色こきたれて
ちる木葉かな
かみなづき
あらしにましる
むらさめに
いろこきたれて
ちるこのはかな


雪のうちに
冬はいなはの
峰の松
つゐにもみちぬ
色たにもなし
ゆきのうちに
ふゆはいなはの
みねのまつ
つゐにもみちぬ
いろたにもなし


いにしへに
あらすなからの
橋はしら
ふりにし跡を
忍はすもなし
いにしへに
あらすなからの
はしはしら
ふりにしあとを
しのはすもなし


明石かた
波路はるかに
成まゝに
人こそみえね
海士の釣舟
あかしかた
なみぢはるかに
なるままに
ひとこそみえね
あまのつりぶね


あはれなる
遠山はたの
庵かな
柴のけふりの
たつにつけても
あはれなる
とほやまはたの
いほりかな
しばのけふりの
たつにつけても