郭公
我れに勝りて
待つ人の
あればやよそに
初音鳴くらむ
ほととぎす
われにまさりて
まつひとの
あればやよそに
はつねなくらむ


誰れか又
秋風ならで
ふるさとの
庭の淺茅の
露もはらはむ
たれかまた
あきかぜならで
ふるさとの
にはのあさぢの
つゆもはらはむ


眺めても
心のひまの
あればこそ
つきには人の
衣うつらめ
ながめても
こころのひまの
あればこそ
つきにはひとの
ころもうつらめ


いつのまに
とはずと人を
恨むらむ
今朝こそ積れ
庭の白雪
いつのまに
とはずとひとを
うらむらむ
けさこそつもれ
にはのしらゆき


さのみやは
つらさにたへて
存らへむ
限ある世の
命なれ共
さのみやは
つらさにたへて
ながらへむ
かぎりあるよの
いのちなれとも


うき事も
いふにぞつらき
山吹は
心ありける
花のいろかな
うきことも
いふにぞつらき
やまぶきは
こころありける
はなのいろかな


年たけぬ
人だに背く
世中に
老いてつれなく
いかゞ殘らむ
としたけぬ
ひとだにそむく
よのなかに
おいてつれなく
いかがのこらむ


さゞ波や
志がのからさき
氷る夜は
松より外の
浦風もなし
さざなみや
しがのからさき
こほるよは
まつよりほかの
うらかぜもなし
Ночью, когда
Замерзает мыс Карасаки
В Сига, в Садзанами,
Нет другого в бухте ветра,
Кроме ветра в соснах...
Примерный перевод

ぬるがうちに
暫し慰む
心かな
覺めては夢と
思ひしれども
ぬるがうちに
しばしなぐさむ
こころかな
さめてはゆめと
おもひしれども


數ならぬ
身は理と
おもへども
猶うき時は
世をぞうらむる
かずならぬ
みはことはりと
おもへども
なほうきときは
よをぞうらむる

ことわり??
いきてこそ
今年も見つれ
山櫻
はなに惜しきは
命なりけり
いきてこそ
ことしもみつれ
やまさくら
はなにをしきは
いのちなりけり


ほとゝぎす
一聲とこそ
思ひしに
待ち得てかはる
我が心哉
ほととぎす
ひとこゑとこそ
おもひしに
まちえてかはる
わがこころかな


古へは
急ぐばかりを
心にて
くれ行くとしを
歎きやはせし
いにしへは
いそぐばかりを
こころにて
くれゆくとしを
なげきやはせし


あふ事を
猶さりともと
思ふこそ
命も志らぬ
頼みなりけれ
あふことを
なほさりともと
おもふこそ
いのちもしらぬ
たのみなりけれ


後の世の
報を爭で
志らせまし
さてもや人の
思ひよわると
のちのよの
むくひをいかで
しらせまし
さてもやひとの
おもひよわると


待ちよわる
心やあると
秋風の
身にさむからぬ
夕暮もがな
まちよわる
こころやあると
あきかぜの
みにさむからぬ
ゆふぐれもがな


待侘ぶる
心盡しの
程をだに
みせばや夜はの
月ぞふけゆく
まわぶる
こころつくしの
ほどをだに
みせばやよはの
つきぞふけゆく


今は早や
よそにのみ聞く
曉も
同じ音にこそ
鳥はなくなれ
いまははやや
よそにのみきく
あかつきも
おなじねにこそ
とりはなくなれ


山ふかみ
人の往來や
絶えぬらむ
苔に跡なき
岩のかげみち
やまふかみ
ひとのゆききや
たえぬらむ
こけにあとなき
いはのかげみち


今は早
世をも恨みず
身一つの
憂きに爲てぞ
音は泣れける
いまははや
よをもうらみず
みひとつの
うきにためてぞ
おとはなれける


遙なる
沖の干潟の
小夜千鳥
みちくる汐に
こゑぞちかづく
はるかなる
おきのひかたの
さよちとり
みちくるしほに
こゑぞちかづく


今日も又
浦風荒れて
湊田に
つりせぬ海士や
早苗取るらむ
けふもまた
うらかぜあれて
みなとたに
つりせぬあまや
さなへとるらむ


やとるへき
露をはのこせ
よひのまの
月待程の
野への秋風
やとるへき
つゆをはのこせ
よひのまの
つきまつほどの
のへのあきかぜ


さそふへき
木葉も今は
残らねは
はけしくとても
山おろしの風
さそふへき
このはもいまは
のこらねは
はけしくとても
やまおろしのかぜ


われのみと
心つくさし
山桜
花もさくへき
ころはまつらん
われのみと
こころつくさし
やまさくら
はなもさくへき
ころはまつらん


秋ふかく
なりゆくすまの
浦風に
関もる人や
夜さむなるらん
あきふかく
なりゆくすまの
うらかぜに
せきもるひとや
よさむなるらん


あすとたに
またれぬ程の
老の身は
命のうちの
あらましもなし
あすとたに
またれぬほどの
おいのみは
いのちのうちの
あらましもなし


小車の
法のをしへを
頼ますは
なほ世にめくる
身とやならまし
をぐるまの
のりのをしへを
たのますは
なほよにめくる
みとやならまし