夜寒なる
田中の井戸の
秋風に
稻葉を分けて
鹿ぞ鳴くなる
よさむなる
たなかのゐとの
あきかぜに
いなはをわけて
しかぞなくなる


秋山の
麓をめぐる
夕ぎりに
浮きて過ぎ行く
はつかりの聲
あきやまの
ふもとをめぐる
ゆふぎりに
うきてすぎゆく
はつかりのこゑ
В тумане,
Что окружил подножья
Осенних гор,
Первые крики гусей
Пролетающих мимо...
Примерный перевод

思へ唯
ふりぬる後の
年の暮
いにしへだにも
惜まれし身に
おもへただ
ふりぬるのちの
としのくれ
いにしへだにも
をしまれしみに


暮れずとて
里の續きは
打過ぎぬ
是より末に
宿やなからむ
くれずとて
さとのつづきは
うちすぎぬ
これよりすゑに
やどやなからむ


落ちそむる
涙は袖に
現れて
つゝみならはぬ
程やみゆらむ
おちそむる
なみだはそでに
うつつれて
つつみならはぬ
ほどやみゆらむ


春日山
ふりさけ見れば
嶺に生ふる
松は木高く
年ふりに鳬
かすがやま
ふりさけみれば
みねにおふる
まつはきたかく
としふりにけり


九重の
たけのそのよも
忘られず
きゝてなれにし
鶯のこゑ
ここのへの
たけのそのよも
わすられず
ききてなれにし
うぐひすのこゑ


すまばやと
思ふみ山の
奥までも
友となるべき
月の影かな
すまばやと
おもふみやまの
おくまでも
ともとなるべき
つきのかげかな


古への
名殘やなほも
へだてまし
月におぼえぬ
昔なりせば
いにしへの
なごりやなほも
へだてまし
つきにおぼえぬ
むかしなりせば


むかし思ふ
老の泪に
そふ物は
我が身を秋の
時雨なりけり
むかしおもふ
おいのなみだに
そふものは
わがみをあきの
しぐれなりけり


あはれなり
思ひしよりも
ながらへて
昔をこふる
老の心は
あはれなり
おもひしよりも
ながらへて
むかしをこふる
おいのこころは


たけぐまの
松を頼みに
ながらへて
昔をみきと
誰に語らむ
たけぐまの
まつをたのみに
ながらへて
むかしをみきと
たれにかたらむ


思へたゞ
おいの命の
ながきねに
又ねをそへて
なげく心を
おもへただ
おいのいのちの
ながきねに
またねをそへて
なげくこころを


立ち歸り
君がためとや
藤なみも
又時すぎて
春にあふらむ
たちかへり
きみがためとや
ふぢなみも
またときすぎて
はるにあふらむ


かつ消ゆる
庭には跡も
見え分かで
草葉にうすき
春の沫雪
かつきゆる
にはにはあとも
みえわかで
くさばにうすき
はるのあはゆき


御祓する
ゆくせの波も
さ夜ふけて
秋風近し
賀茂の川みづ
みそぎする
ゆくせのなみも
さよふけて
あきかぜちかし
かものかはみづ
Поздним вечером волны,
Где проходит обряд очищенья,
Реки Камо холодны,
Скоро подует ветер
Надвигающейся осени.
Примерный перевод

冬のきて
霜の降りはも
哀れなり
我もおいその
もりの下草
ふゆのきて
しものふりはも
あはれなり
われもおいその
もりのしたくさ


松の風
かけひの水に
聞きかへて
都の人の
おとづれはなし
まつのかぜ
かけひのみづに
ききかへて
みやこのひとの
おとづれはなし


思ひ遣る
老の涙の
落ち添ひて
露も時雨も
干すひまぞ無き
おもひやる
おいのなみだの
おちそひて
つゆもしぐれも
ほすひまぞなき


大原や
神代の松の
深みどり
千世もと祈る
すゑのはるけさ
おほはらや
かみよのまつの
ふかみどり
ちよもといのる
すゑのはるけさ


みるめなき
習ひしられて
春は猶
霞にたどる
志賀の浦なみ
みるめなき
ならひしられて
はるはなほ
かすみにたどる
しがのうらなみ


秋來ぬと
思ひもあへぬ
衣手の
たが習はしに
露けかるらむ
あきこぬと
おもひもあへぬ
ころもでの
たがならはしに
つゆけかるらむ


山吹の
花越す浪も
口なしに
移ろひ行くか
井手のたまがは
やまぶきの
はなこすなみも
くちなしに
うつろひゆくか
ゐでのたまがは