逢ふ事を
交野へとてぞ
我はゆく
身を同名に
思ひなしつゝ
あふことを
かたのへとてぞ
われはゆく
みをおなじなに
おもひなしつつ


消えず共
野原の雪を
踏分けて
わが跡よりや
若菜つまゝし
きえずとも
のはらのゆきを
ふきわけて
わがあとよりや
わかなつままし


おのづから
去年來て訪ひし
人計り
思出づやと
花に待つ哉
おのづから
こぞきてとひし
ひとばかり
おもひいづやと
はなにまつかな


つれなくて
殘るならひを
暮れて行く
春に教へよ
有明の月
つれなくて
のこるならひを
くれてゆく
はるにおしへよ
ありあけのつき


待たずとも
我と鳴くべき
夕暮を
つれなくすぐす
郭公かな
またずとも
われとなくべき
ゆふぐれを
つれなくすぐす
ほととぎすかな


幾秋も
君ぞ映して
みかは水
雲居に絶えぬ
ほしあひのかげ
いくあきも
きみぞうつして
みかはみづ
くもゐにたえぬ
ほしあひのかげ


今も又
をりを忘れぬ
花ならば
ことしも結べ
あきのしら露
いまもまた
をりをわすれぬ
はなならば
ことしもむすべ
あきのしらつゆ


里人も
さすがまどろむ
程なれや
更けて砧の
おとぞ少なき
さとひとも
さすがまどろむ
ほどなれや
ふけてきぬたの
おとぞすくなき
И жители села,
Бывает,
Засыпают?
Стемнело лишь —
И колотушки звук почти не слышен.

強面さも
よしや祈らじ
神だにも
受けずば後の
頼なければ
つよおもさも
よしやいのらじ
かみだにも
うけずばのちの
たのみなければ


つらく共
是を限と
いひやらむ
げに身を捨て
ば人や惜むと
つらくとも
これをかぎりと
いひやらむ
げにみをすてて
ばひとやをむと


和歌の浦や
色をかさねて
濱千鳥
七たび同じ
跡をつけぬる
わかのうらや
いろをかさねて
はまちとり
ななたびおなじ
あとをつけぬる


世をすつる
一方をこそ
歎きつれ
共に背くと
聞くぞ悲しき
よをすつる
ひとかたをこそ
なげきつれ
ともに??くと
きくぞかなしき

??
立ちわたる
かすみに波は
埋もれて
磯邊の松に
のこる浦風
たちわたる
かすみになみは
うづもれて
いそべのまつに
のこるうらかぜ
Проплывающим
Туманом покрыты
Волны,
У сосен возле скал
Ещё остался бухты ветер.

風通ふ
おなじよそめの
花の色に
雲も移ろふ
みよしのゝ山
かぜかよふ
おなじよそめの
はなのいろに
くももうつろふ
みよしののやま
В той самой дали,
Где гуляет ветер,
В цвет сакуры
Окрашенные облака тоже тускнеют
На горе Ёсино.

東雲の
よこ雲ながら
立ちこめて
あけもはなれぬ
峰の秋霧
しののめの
よこくもながら
たちこめて
あけもはなれぬ
みねのあききり
Пока восточные
Облака клубятся грядами
В наступающем рассвете
От гор не отлипает
Осенний густой туман.
*озарённые восходящим солнцем
村雲の
うきてそら行く
山風に
木葉殘らず
ふるしぐれかな
むらくもの
うきてそらゆく
やまかぜに
このはのこらず
ふるしぐれかな
В горном ветре
По небу плывут
Облака.
Не оставляет листвы на деревьях
Идущий зимний дождь.

いかにせむ
包む人めに
せきかねて
泪も袖の
色に出でなば
いかにせむ
つつむひとめに
せきかねて
なみだもそでの
いろにいでなば
Как же быть?
Не сделать заставы
Для людских глаз,
А слёзы так ярко
Проступили цветом на рукаве...

今は又
あかず頼めし
影もみず
そことも知らぬ
山の井の水
いまはまた
あかずたのめし
かげもみず
そこともしらぬ
やまのゐのみづ
Сейчас я снова
Не вижу свет, на который без устали
Так полагался.
Но не знает он о дне
Горного колодца.

烟さへ
霞そへけり
なには人
あし火たく屋の
春のあけぼの
けぶりさへ
かすみそへけり
なにはひと
あしひたくやの
はるのあけぼの


おなじくば
空に霞の
關もがな
雲路の雁を
しばしとゞめむ
おなじくば
そらにかすみの
せきもがな
くもぢのかりを
しばしとどめむ


行く先の
雲は櫻に
あらはれて
越えつる峰の
花ぞかすめる
ゆくさきの
くもはさくらに
あらはれて
こえつるみねの
はなぞかすめる


老いてこそ
涙も曇れ
春の夜の
月はいつより
霞みそめけむ
をいてこそ
なみだもくもれ
はるのよの
つきはいつより
かすみそめけむ


山川の
岩にせかるゝ
音もなし
うへ越す波の
五月雨のころ
やまかはの
いはにせかるる
おともなし
うへこすなみの
さみだれのころ


鵜飼舟
せゞさしのぼる
白浪に
うつりてくだる
篝火のかげ
うかひふね
せぜさしのぼる
しらなみに
うつりてくだる
かかりひのかげ


小山田の
庵立ちかくす
秋霧に
もる人なしと
鹿ぞ鳴くなる
をやまだの
いほたちかくす
あききりに
もるひとなしと
しかぞなくなる


暮るゝ間の
空に光は
うつろひて
まだ峰こえぬ
秋の夜の月
くるるまの
そらにひかりは
うつろひて
まだみねこえぬ
あきのよのつき


明石がた
沖にかたぶく
月影に
雲こそなけれ
波ぞかゝれる
あかしがた
おきにかたぶく
つきかげに
くもこそなけれ
なみぞかかれる


目に見えぬ
心計りは
慕へども
身をし分かねば
秋ぞ止らぬ
めにみえぬ
こころばかりは
したへども
みをしわかねば
あきぞとまらぬ


おのづから
吹かぬ絶間も
嵐山
名に誘はれて
散る木の葉哉
おのづから
ふかぬたえまも
あらしやま
なにさそはれて
ちるこのはかな


高砂の
をのへの嵐
ふくほどは
ふれどつもらぬ
松のしら雪
たかさごの
をのへのあらし
ふくほどは
ふれどつもらぬ
まつのしらゆき


踏みわけむ
我跡さへに
惜しければ
人をもとはぬ
庭の白雪
ふみわけむ
われあとさへに
をしければ
ひとをもとはぬ
にはのしらゆき


よる〳〵は
砧の音を
さそひ來て
風ぞ枕に
ころもうちける
よるよるは
きぬたのおとを
さそひきて
かぜぞまくらに
ころもうちける


道まもる
七の社の
めぐみこそ
我が七十ぢの
身に餘りけれ
みちまもる
ななのやしろの
めぐみこそ
わがななそぢの
みにあまりけれ


更けぬるか
眞弓つき弓
押し返し
謠ふ神樂の
もとすゑの聲
ふけぬるか
まゆみつきゆみ
おしかへし
うたふかぐらの
もとすゑのこゑ


思ひ餘る
心を何に
包まゝし
なみだはしばし
袖にせくとも
おもひあまる
こころをなにに
つつままし
なみだはしばし
そでにせくとも


命をば
後にすつ共
つれなさの
つらき限は
いきてこそみめ
いのちをば
のちにすつとも
つれなさの
つらきかぎりは
いきてこそみめ


つれもなき
人をば置て
祈るとも
あはずば又や
神を恨みむ
つれもなき
ひとをばおきて
いのるとも
あはずばまたや
かみをうらみむ


たのみける
心と人の
しるばかり
僞をだに
待つときかれむ
たのみける
こころとひとの
しるばかり
いつはりをだに
まつときかれむ


たのめ置く
たが誠より
夕暮の
またるゝ物に
思ひそめけむ
たのめおく
たがまことより
ゆふぐれの
またるるものに
おもひそめけむ


算へても
いつ迄獨
またれけむ
百夜も過ぬ
志ぢのはしがき
かぞへても
いつまでひとり
またれけむ
ももよもすぎぬ
しぢのはしがき


つれなきに
すてし命も
惜まれて
あふに變るは
心なりけり
つれなきに
すてしいのちも
をしまれて
あふにかはるは
こころなりけり


頼まじな
うつろひぬべき
白菊の
霜待つほどの
契ばかりは
たのまじな
うつろひぬべき
しらきくの
しもまつほどの
ちぎりばかりは


歎けども
覺めての後に
かひなきは
まだ見ぬ夢の
契なりけり
なげけども
さめてののちに
かひなきは
まだみぬゆめの
ちぎりなりけり


遂にきて
絶えける物を
水無瀬川
ありて行く水
今は頼まじ
つひにきて
たえけるものを
みなせがは
ありてゆくみづ
いまはたのまじ


うきをだに
思ひも知らぬ
心にて
我さへ身をも
忘れける哉
うきをだに
おもひもしらぬ
こころにて
われさへみをも
わすれけるかな


年もへぬ
何をか今は
斯て身の
老となるをの
まつことにせむ
としもへぬ
なにをかいまは
かくてみの
おいとなるをの
まつことにせむ


いとゞ猶
泪をそへて
身の爲の
うきを志らする
月の影かな
いとどなほ
なみだをそへて
みのための
うきをしらする
つきのかげかな


山陰の
松に寂しき
嵐こそ
きかじとすれど
しひて吹きけれ
やまかげの
まつにさびしき
あらしこそ
きかじとすれど
しひてふきけれ


跡とめて
ふみまよはじと
思ふにも
我が敷島の
道ぞ苦しき
あととめて
ふみまよはじと
おもふにも
わがしきしまの
みちぞくるしき


我までは
世々にかはらず
つかへきぬ
猶末たゆな
關の藤河
われまでは
よよにかはらず
つかへきぬ
なほすゑたゆな
せきのふぢかは


今さらに
とふにも秋の
草枕
きえにし露の
たびぞかなしき
いまさらに
とふにもあきの
くさまくら
きえにしつゆの
たびぞかなしき


明けぬれど
己がねぐらを
出でやらで
竹の葉隱れ
鶯ぞ鳴く
あけぬれど
おのがねぐらを
いでやらで
たけのはがくれ
うぐひすぞなく


ひと方に
吹きつる風や
弱るらむ
なびきも果てぬ
青柳の糸
ひとかたに
ふきつるかぜや
よはるらむ
なびきもはてぬ
あをやぎのいと


暮れぬとて
立ちこそ歸れ
櫻狩
なほ行くさきに
花を殘して
くれぬとて
たちこそかへれ
さくらかり
なほゆくさきに
はなをのこして


冬されば
冴ゆる嵐の
山の端に
こほりをかけて
出づる月影
ふゆされば
さゆるあらしの
やまのはに
こほりをかけて
いづるつきかげ


風さゆる
うぢのあじろ木
瀬を早み
氷も波も
碎けてぞ見る
かぜさゆる
うぢのあじろき
せをはやみ
こほりもなみも
くだけてぞみる


朽ち殘る
古き軒端の
梅が枝も
又とはるべき
春を待つらし
くちのこる
ふるきのきはの
うめがえも
またとはるべき
はるをまつらし


今日は猶
あやめの草の
うきねにも
最ど三歳の
露ぞ乾かぬ
けふはなほ
あやめのくさの
うきねにも
いとどみとせの
つゆぞかはかぬ


藻しほやく
烟も波も
うづもれて
霞のみ立つ
春のあけぼの
もしほやく
けぶりもなみも
うづもれて
かすみのみたつ
はるのあけぼの


立ちよりて
梅のにほひを
狩衣
袖にうつさむ
人なとがめそ
たちよりて
うめのにほひを
かりごろも
そでにうつさむ
ひとなとがめそ


山櫻
うつろふいろの
花の香に
かすみの袖も
にほふ春かぜ
やまさくら
うつろふいろの
はなのかに
かすみのそでも
にほふはるかぜ


雪と降る
花にしをりも
埋もれて
又踏み迷ふ
春のやまみち
ゆきとふる
はなにしをりも
うづもれて
またふみまよふ
はるのやまみち


惜むとて
暮るゝ日數の
留まらば
猶いかばかり
春を慕はむ
をしむとて
くるるひかずの
とどまらば
なほいかばかり
はるをしたはむ


暮るゝより
露と亂れて
夏草の
茂みにしげく
飛ぶほたる哉
くるるより
つゆとみだれて
なつくさの
しげみにしげく
とぶほたるかな


待ち出でゝ
しばし凉しく
見る月の
光にやがて
明くる短夜
まちいでて
しばしすずしく
みるつきの
ひかりにやがて
あくるみぢかよ


あだなりな
露もて結ぶ
野邊の庵
眞垣と頼む
霧のへだては
あだなりな
つゆもてむすぶ
のべのいほり
まがきとたのむ
きりのへだては


秋風の
拂ふも待たで
村雲の
かゝる尾上を
出づるつきかげ
あきかぜの
はらふもまたで
むらくもの
かかるおのえを
いづるつきかげ


浪の上に
映れる月は
在りながら
伊駒の山の
峯ぞ明け行く
なみのうへに
うつれるつきは
ありながら
いこまのやまの
みねぞあけゆく


聞けば早
うらがれにけり
淺茅原
虫の音までも
霜や置く覽
きけばはや
うらがれにけり
あさぢはら
むしのねまでも
しもやおくらん


露分けし
野邊の笹原
風冴えて
又霜こほる
ふゆは來にけり
つゆわけし
のべのささはら
かぜさえて
またしもこほる
ふゆはきにけり


冴ゆる夜の
雪げの空の
村雲を
氷りて傳ふ
ありあけのつき
さゆるよの
ゆきげのそらの
むらくもを
こほりてつたふ
ありあけのつき


漕ぎ出づる
芦分小舟
などか又
名殘をとめて
障りだにせぬ
こぎいづる
あしわけをぶね
などかまた
なごりをとめて
さはりだにせぬ


言の葉に
なげくとは見よ
鏡山
慕ふこゝろに
影は無くとも
ことのはに
なげくとはみよ
かがみやま
したふこころに
かげはなくとも


我が中は
浦より遠に
置く網の
引けども寄らぬ
程ぞ苦しき
わがなかは
うらよりとほに
おくあみの
ひけどもよらぬ
ほどぞくるしき


今は早や
絶えにしまゝの
現にて
みる慰めの
夢だにもなし
いまははや
たえにしままの
うつつにて
みるなぐさめの
ゆめだにもなし


果は又
蜑の住むてふ
里と云へ
ば導べだにな
き見を恨つゝ
はてはまた
あまのすむてふ
さとといへ
ばしるべだにな
きみをうらつつ


最ど猶
憂きにつけてぞ
思ふにも
云ふにも餘る
人のつらさは
いとどなほ
うきにつけてぞ
おもふにも
いふにもあまる
ひとのつらさは


たのもしな
祈るにつけて
曇なき
日吉のかげに
道ぞ迷はぬ
たのもしな
いのるにつけて
くもりなき
ひよしのかげに
みちぞまよはぬ


朝あけ
の窓吹入るゝ
春風に
いづくともなき
梅が香ぞする
あしたあけ
のまどふいるる
はるかぜに
いづくともなき
うめがかぞする


こぬ人は
心づくしの
秋かぜに
逢ふたのみなき
松蟲のこゑ
こぬひとは
こころづくしの
あきかぜに
あふたのみなき
まつむしのこゑ


うらがるゝ
野べの尾花の
袖の霜
結びすてゝも
暮るゝ秋哉
うらがるる
のべのをはなの
そでのしも
むすびすてても
くるるあきかな


長閑なる
老の寢覺の
寂しきに
鳥の八聲を
かぞへてぞ聞く
のどかなる
おいのねざめの
さびしきに
とりのやこゑを
かぞへてぞきく


立歸り
和歌の浦波
この御世に
老いて再び
なをぞかけつる
たちかへり
わかのうらなみ
このみよに
をいてふたたび
なをぞかけつる


梢をば
よそに隔てゝ
梅の花
かすむかたより
にほふ春かぜ
こずゑをば
よそにへだてて
うめのはな
かすむかたより
にほふはるかぜ


ひと枝も
折らで歸らば
古里に
花見ぬものと
人やおもはむ
ひとえだも
をらでかへらば
ふるさとに
はなみぬものと
ひとやおもはむ


大井川
山もと遠く
漕ぎつれて
ひろ瀬にならぶ
篝火のかげ
おほゐかは
やまもととほく
こぎつれて
ひろせにならぶ
かかりひのかげ


夕立の
かつ〴〵晴るゝ
雲間より
雨をわけても
さす日影哉
ゆふだちの
かつがつはるる
くもまより
あめをわけても
さすひかげかな


野邊ごとに
招けばとても
花薄
袖をたのみて
くる人もなし
のべごとに
まねけばとても
はなすすき
そでをたのみて
くるひともなし


詠めじと
思ひ棄つれど
哀のみ
身にそひて憂き
秋の夕ぐれ
ながめじと
おもひ棄つれど
あはれのみ
みにそひてうき
あきのゆふぐれ


西になる
影は木の間に
顯れて
松の葉見ゆる
ありあけの月
にしになる
かげはこのまに
あらはれて
まつのはみゆる
ありあけのつき


風に行く
たゞ一村の
浮雲に
あたりは晴れて
降る時雨かな
かぜにゆく
ただひとむらの
うきくもに
あたりははれて
ふるしぐれかな


踏分けて
出でつるもとの
跡をさへ
又降り埋む
庭の雪かな
ふきわけて
いでつるもとの
あとをさへ
またふりうずむ
にはのゆきかな


かすむとも
此春よりや
よはの月
老の心も
晴れて見るべき
かすむとも
このはるよりや
よはのつき
おいのこころも
はれてみるべき


つれなさを
志ばし忘れて
時鳥
待たでや見まし
有明のそら
つれなさを
しばしわすれて
ほととぎす
またでやみまし
ありあけのそら


やがて又
つゞきの里に
かきくれて
遠くも過ぎぬ
夕立の空
やがてまた
つづきのさとに
かきくれて
とほくもすぎぬ
ゆふだちのそら


忘れじと
言ひしばかりの
契こそ
行く末遠き
頼みなりけれ
わすれじと
いひしばかりの
ちぎりこそ
ゆくすゑとほき
たのみなりけれ


自から
憂きをわするゝ
あらましの
身の慰めは
心なりけり
おのづから
うきをわするる
あらましの
みのなぐさめは
こころなりけり


松山は
心づくしに
ありとても
名をのみ聞て
見ぬぞ悲しき
まつやまは
こころづくしに
ありとても
なをのみききて
みぬぞかなしき