明けぬるか
木間もりくる
月影の
光もうすき
蝉のはごろも
あけぬるか
このまもりくる
つきかげの
ひかりもうすき
せみのはごろも


さを鹿の
鳴く音もいたく
更けにけり
嵐の後の
山のはの月
さをしかの
なくおともいたく
ふけにけり
あらしののちの
やまのはのつき


月になく
雁の羽風の
さゆる夜に
霜をかさねて
うつ衣かな
つきになく
かりのはかぜの
さゆるよに
しもをかさねて
うつころもかな


飛鳥川
かはる淵瀬も
ある物を
せくかた志らぬ
年の暮かな
あすかがは
かはるふちせも
あるものを
せくかたしらぬ
としのくれかな
На реке Асука
Тоже есть места, где
Мель сменяется топью,
И вот не знающий остановки
Конец года наступил.
Примерный перевод

山河の
石まの水の
うすごほり
われのみ下に
むせぶ頃かな
やまかはの
いしまのみづの
うすごほり
われのみしたに
むせぶころかな


あだにみし
人の心の
ゆふ襷
さのみはいかゞ
かけて頼まむ
あだにみし
ひとのこころの
ゆふたすき
さのみはいかが
かけてたのまむ


あだなりと
何恨みけむ
山櫻
はなぞみしよの
形見なりける
あだなりと
なにうらみけむ
やまさくら
はなぞみしよの
かたみなりける


此里は
しぐれにけりな
秋の色の
顯はれそむる
峯の紅葉ば
このさとは
しぐれにけりな
あきのいろの
あらはれそむる
みねのもみぢば


涙もて
たれかおりけむ
唐衣
たちてもゐても
ぬるゝ袖かな
なみだもて
たれかおりけむ
からころも
たちてもゐても
ぬるるそでかな


暮れて行く
春の別は
いかにぞと
花を惜まぬ
人にとはゞや
くれてゆく
はるのわかれは
いかにぞと
はなををしまぬ
ひとにとはばや


都出でゝ
百夜の波の
舵枕
なれても疎き
ものにぞありける
みやこいでゝ
ももよのなみの
かぢまくら
なれてもうとき
ものにぞありける


涙川
うき瀬に迷ふ
水の泡の
流石に消えぬ
身をいかにせむ
なみだかは
うきせにまよふ
みづのあはの
さすがにきえぬ
みをいかにせむ


住吉の
松ふく風も
かはらねば
岸うつ浪や
むかしなるらむ
すみよしの
まつふくかぜも
かはらねば
きしうつなみや
むかしなるらむ


春はまづ
とはれし物を
山深み
雪ふりにける
身社つらけれ
はるはまづ
とはれしものを
やまふかみ
ゆきふりにける
みこそつらけれ


暮れかゝる
志のやの軒の
雨のうちに
ぬれて言とふ
時鳥哉
くれかかる
しのやののきの
あめのうちに
ぬれてこととふ
ほととぎすかな


埋れぬ
これや難波の
玉がしは
藻にあらはれて
飛ぶ螢かな
うづもれぬ
これやなにはの
たまがしは
もにあらはれて
とぶほたるかな


鐘のおとも
明け離れ行く
山のはの
霧にのこれる
有明の月
かねのおとも
あけはなれゆく
やまのはの
きりにのこれる
ありあけのつき


いたづらに
今年も暮れぬ
とのへもる
袖の氷に
月を重ねて
いたづらに
ことしもくれぬ
とのへもる
そでのこほりに
つきをかさねて


物思ふ
秋はいかなる
秋ならむ
あらしも月も
かはる物かは
ものおもふ
あきはいかなる
あきならむ
あらしもつきも
かはるものかは
Тоскую:
Какой же эта осень
Будет?
И шторм, и луна —
Изменчивы...
Примерный перевод

旅衣
きてもとまらぬ
ものゆゑに
人だのめなる
逢坂のせき
たびごろも
きてもとまらぬ
ものゆゑに
ひとだのめなる
あふさかのせき


忘れずば
しをれて出でし
春雨の
故郷人も
そでぬらすらむ
わすれずば
しをれていでし
はるさめの
ふるさとひとも
そでぬらすらむ
Если не забыла,
Поникшая, вышла,
Наверное,
Под весенним дождём промочить рукава
Любимая из родного села.
Примерный перевод
* Дождь скроет следы слёз разлуки
袖の色を
偖のみ人に
知せずば
心にそめし
かひやなからむ
そでのいろを
さてのみひとに
しらせずば
こころにそめし
かひやなからむ


もみぢ葉の
かげ見し水の
うす氷
とまらぬ色を
何結ぶらむ
もみぢはの
かげみしみづの
うすこほり
とまらぬいろを
なにむすぶらむ


故郷に
なきて歎くと
ことづてよ
道行きぶりの
春の雁がね
ふるさとに
なきてなげくと
ことづてよ
みちゆきぶりの
はるのかりがね


世を秋の
山のあらしの
烈しきに
いかでか澄める
有明の月
よをあきの
やまのあらしの
はげしきに
いかでかすめる
ありあけのつき


山ふかみ
雲消えなばと
思ひしに
又道絶ゆる
やどの夏ぐさ
やまふかみ
くもきえなばと
おもひしに
またみちたゆる
やどのなつぐさ


踏み分けて
誰れかは訪はむ
蓬生の
庭も籬も
あきの志ら露
ふみわけて
たれかはとはむ
よもぎうの
にはもまがきも
あきのしらつゆ


湊いりの
たなゝし小舟
跡見えて
芦の葉むすぶ
うす氷かな
みなといりの
たななしをぶね
あとみえて
あしのはむすぶ
うすこほりかな


袖の上に
變らぬ月の
かはるかな
ありし昔の
影を戀ひつゝ
そでのうへに
かはらぬつきの
かはるかな
ありしむかしの
かげをこひつつ


何となく
昔戀しき
我が袖の
濡れたる上に
やどるつきかげ
なにとなく
むかしこひしき
わがそでの
ぬれたるうへに
やどるつきかげ


志づたまき
數にも非ぬ
身なれ共
仕へし道は
忘れしもせず
しづたまき
かずにもあらぬ
みなれとも
つかへしみちは
わすれしもせず


あひ難き
御代にあふみの
鏡山
曇なしとは
ひともみるらむ
あひかたき
みよにあふみの
かがみやま
くもりなしとは
ひともみるらむ


身に換へて
思ふも苦し
櫻花
咲かぬ深山に
やどもとめてむ
みにかへて
おもふもくるし
さくらばな
さかぬみやまに
やどもとめてむ


志がらきの
外山の紅葉
散り果てゝ
寂しき峯に
降る時雨哉
しがらきの
とやまのもみぢ
ちりはてて
さびしきみねに
ふるしぐれかな


わさ田もる
床の秋風
吹き初めて
假寐寂しき
月を見るかな
わさだもる
とこのあきかぜ
ふきそめて
かりねさびしき
つきをみるかな


月待つと
立ちやすらへば
白妙の
衣の袖に
置けるはつしも
つきまつと
たちやすらへば
しろたへの
ころものそでに
おけるはつしも


ふるさとに
咲かばまづ見む
梅の花
むかしに似たる
色や残ると
ふるさとに
さかばまづみむ
うめのはな
むかしににたる
いろやのこると
На родине моей,
Если вдруг цвётёт,
Сперва посмотрю:
Остался ль на ней
Тот самый цвет, как прежде...
Примерный перевод

すむひとも
あはれいくよの
ふるさとに
あれまくしらぬ
花のいろかな
すむひとも
あはれいくよの
ふるさとに
あれまくしらぬ
はなのいろかな


心こそ
ゆくゑもしらね
秋風に
さそはれ出る
月をなかめて
こころこそ
ゆくゑもしらね
あきかぜに
さそはれいづる
つきをなかめて


しらさりき
をとに聞こし
三輪川の
流れて人を
こひん物とは
しらさりき
をとにききこし
みはかはの
ながれてひとを
こひんものとは


昔見し
あらしの山に
さそはれて
木葉のさきに
ちる涙哉
むかしみし
あらしのやまに
さそはれて
このはのさきに
ちるなみだかな


夕されは
あさの葉なかる
みよしのゝ
滝つ川うちに
みそきすらしも
ゆふされは
あさのはなかる
みよしのの
たきつかはうちに
みそきすらしも


奥山の
嶺の時雨を
分ゆけは
ふかき谷より
のほる白雲
おくやまの
みねのしぐれを
わけゆけは
ふかきたにより
のほるしらくも


山ふかき
里のしるへに
なる物は
入相の鐘の
声にそ有ける
やまふかき
さとのしるへに
なるものは
いりあひのかねの
こゑにそありける