皆人の
家路わするゝ
花ざかり
なぞしも歸る
春のかりがね
みなひとの
いへぢわするる
はなざかり
なぞしもかへる
はるのかりがね


暮れて行く
春の手向や
これならむ
けふ社花は
幣と散けれ
くれてゆく
はるのたむけや
これならむ
けふこそはなは
ぬさとちりけれ


徒らに
野澤に見ゆる
螢かな
窓にあつむる
ひとやなからむ
いたづらに
のさはにみゆる
ほたるかな
まどにあつむる
ひとやなからむ


誰が袖に
秋まつほどは
包みけむ
今朝はこぼるゝ
露の白玉
たがそでに
あきまつほどは
つつみけむ
けさはこぼるる
つゆのしらたま


山深き
すまひからにや
身にしむと
都の秋の
風をとはゞや
やまふかき
すまひからにや
みにしむと
みやこのあきの
かぜをとはばや


暮れ行けば
端山繁山
さはり多み
逢はでや鹿の
妻を戀ふ覽
くれゆけば
はやましげやま
さはりおほみ
あはでやしかの
つまをこふらん


他に又
野はなければや
小男鹿の
爰にしも鳴く
聲の聞ゆる
ほかにまた
のはなければや
さをしかの
ここにしもなく
こゑのきこゆる


曇りなく
月漏れとてや
河口の
關のあらきが
間遠なるらむ
くもりなく
つきもれとてや
かはくちの
せきのあらきが
まとほなるらむ


掻き暮し
雲の旗手ぞ
しぐれ行く
天つ空より
冬や來ぬらむ
かきくらし
くものはたてぞ
しぐれゆく
あまつそらより
ふゆやこぬらむ


心とや
行くも歸るも
なげくらむ
人やりならぬ
ひなの別路
こころとや
ゆくもかへるも
なげくらむ
ひとやりならぬ
ひなのわかれぢ


更け行けば
出づべき月と
聞くからに
兼て心の
闇ぞ晴ぬる
ふけゆけば
いづべきつきと
きくからに
かねてこころの
やみぞはれぬる


愚かなる
涙の露の
いかでなほ
消えてはちすの
玉となる覽
おろかなる
なみだのつゆの
いかでなほ
きえてはちすの
たまとなるらん


石清水
きよき心に
すむときく
神のちかひは
猶もたのもし
いはしみづ
きよきこころに
すむときく
かみのちかひは
なほもたのもし


心のみ
かぎり知られぬ
みだれにて
幾年月を
忍ぶもぢずり
こころのみ
かぎりしられぬ
みだれにて
いくとしつきを
しのぶもぢずり


強面きも
言はねば社と
思はずば
年月いかで
長らへもせむ
つれなきも
ことはねばこそと
おもはずば
としつきいかで
ながらへもせむ


忍ぶるも
ためしあらじと
苦しきを
顯れば又
いかゞ歎かむ
しのぶるも
ためしあらじと
くるしきを
あらはればまた
いかがなげかむ


かへるさの
別のみかは
まつ人の
つれなきもうき
有明の空
かへるさの
わかれのみかは
まつひとの
つれなきもうき
ありあけのそら


聞く度に
勿來關の
名もつらし
行ては歸る
身に知られつゝ
きくたびに
なこそのせきの
なもつらし
ゆきてはかへる
みにしられつつ


いつまでか
しき忍ぶべき
そのまゝに
我塵はらふ
床のさ莚
いつまでか
しきしのぶべき
そのままに
われちりはらふ
とこのさむしろ


年月は
あはぬ恨と
思ひしに
恨みてあはず
何時なりにけむ
としつきは
あはぬうらみと
おもひしに
うらみてあはず
いつなりにけむ


子日とて
けふ引初むる
小松原
木高きまでを
みる由もがな
ねのひとて
けふひきそむる
こまつはら
きたかきまでを
みるよしもがな


我のみや
影もかはらむ
飛鳥川
ふちせも同じ
月はすめども
われのみや
かげもかはらむ
あすかがは
ふちせもおなじ
つきはすめども


かねてより
袖も志ぐれて
すみ染の
夕色ます
山のもみぢば
かねてより
そでもしぐれて
すみぞめの
ゆふべいろます
やまのもみぢば


道あれと
なにはの事も
思へども
蘆わけ小舟
末ぞとほらぬ
みちあれと
なにはのことも
おもへども
あしわけをぶね
すゑぞとほらぬ


袖ふれば
色までうつれ
くれなゐの
初花染に
さける梅が枝
そでふれば
いろまでうつれ
くれなゐの
はつはなそめに
さけるうめがえ


吹く風の
誘ふ匂ひを
しるべにて
行くへ定めぬ
花の頃かな
ふくかぜの
さそふにほひを
しるべにて
ゆくへささめぬ
はなのころかな
Ведомый
Цветом, ароматом,
Что ветер доносит,
И сам не знаю, куда бреду
В эту пору сакуры цветенья.

所から
光かはらば
春のつき
明石のうらは
かすまずもがな
ところから
ひかりかはらば
はるのつき
あかしのうらは
かすまずもがな


深みどり
いろも變らぬ
松が枝は
藤社春の
志るしなりけれ
ふかみどり
いろもかはらぬ
まつがえは
ふぢこそはるの
しるしなりけれ
На ветках сосны,
Что цветом неизменны
И всегда зелены,
Цветы глицинии —
Признак весны!

新玉の
としをかさねて
かへつれど
猶ひとへなる
夏衣かな
あらたまの
としをかさねて
かへつれど
なほひとへなる
なつころもかな


夕闇に
あさせ白波
たどりつゝ
みをさかのぼる
鵜かひ舟哉
ゆふやみに
あさせしらなみ
たどりつつ
みをさかのぼる
うかひふねかな
В вечерней мгле
Всё набегают белые волны
На мелководья,
И поднимается по теченью
Рыбачья лодка с бакланами!

さらでだに
夏をわするゝ
松陰の
岩井の水に
秋はきにけり
さらでだに
なつをわするる
まつかげの
いはゐのみづに
あきはきにけり


わきてこの
心盡しは
秋ぞとも
木のまの月の
影よりぞしる
わきてこの
こころつくしは
あきぞとも
このまのつきの
かげよりぞしる


年をへて
雲のうへにて
みし秋の
かげも戀しき
望月のこま
としをへて
くものうへにて
みしあきの
かげもこひしき
もちづきのこま


古への
風もかはらぬ
我宿は
すみなれてこそ
月も見るらめ
いにしへの
かぜもかはらぬ
わがやどは
すみなれてこそ
つきもみるらめ


汲みて社
千歳も豫て
しられけれ
ぬれてほすてふ
菊の下水
くみてこそ
ちとせもかねて
しられけれ
ぬれてほすてふ
きくのしたみづ


枝かはす
よその紅葉に
埋もれて
秋は稀なる
山のときは木
えだかはす
よそのもみぢに
うづもれて
あきはまれなる
やまのときはき


少女子が
袖志ろたへに
霜ぞおく
豐の明も
夜や更けぬらむ
をとめこが
そでしろたへに
しもぞおく
とよのあかりも
よやふけぬらむ


八百日ゆく
濱の眞砂地
はる〴〵と
限もみえず
つもる白雪
やほかゆく
はまのまさごち
はるばると
かぎりもみえず
つもるしらゆき
Даже если много дней
По дороге по песку побережья
Идти далеко-далеко,
Не будет видно края
Выпавшего белого снега.

今はまた
霞へだてゝ
おもふかな
大うち山の
春のあけぼの
いまはまた
かすみへだてて
おもふかな
おほうちやまの
はるのあけぼの


おく露は
色もかはらぬ
夕べかな
わが身一つの
すみ染の袖
おくつゆは
いろもかはらぬ
ゆふべかな
わがみひとつの
すみそめのそで
Вечером,
Когда выпавшая роса даже
Цвет свой не меняет,
Лишь только у меня
Рукав чернилами окрашен.
??
同じくば
もろこし船も
よりなゝむ
知る人もなき
袖の湊に
おなじくば
もろこしふねも
よりななむ
しるひともなき
そでのみなとに


わが泪
あふをかぎりと
思ひしに
猶いひしらぬ
袖の上かな
わがなみだ
あふをかぎりと
おもひしに
なほいひしらぬ
そでのうへかな


中々に
面影さらぬ
形見にて
今はあだなる
夜はのつきかな
なかなかに
おもかげさらぬ
かたみにて
いまはあだなる
よはのつきかな


隱沼に
生ふる菖蒲の
我なれや
繁きうきねも
知る人ぞなき
かくぬまに
おふるあやめの
われなれや
しげきうきねも
しるひとぞなき


妹とわれ
花田の帶の
中なれや
色變るかと
見れば絶えぬる
いもとわれ
はなたのおびの
なかなれや
いろかはるかと
みればたえぬる


憂事は
津守の海士の
朝夕に
恨むとだにも
志らせてしがな
うきごとは
つもりのあまの
あさゆふに
うらむとだにも
しらせてしがな


今もまた
行きても見ばや
石の上
ふるの瀧つせ
跡を尋ねて
いまもまた
ゆきてもみばや
いそのかみ
ふるのたきつせ
あとをたづねて


いつとなく
今はならひの
寐覺にて
老いて志らるゝ
曉の空
いつとなく
いまはならひの
ねざめにて
をいてしらるる
あかつきのそら


谷の戸は
まだあけやらず
思ふらむ
高き峯には
日影さす也
たにのとは
まだあけやらず
おもふらむ
たかきみねには
ひかげさすなり


古へも
今もかはらぬ
月かげを
雲のうへにて
詠めてしがな
いにしへも
いまもかはらぬ
つきかげを
くものうへにて
ながめてしがな


水の面に
うつりうつらぬ
影に社
澄み濁りける
心をば志れ
みのおもに
うつりうつらぬ
かげにこそ
すみにごりける
こころをばしれ


長き夜の
心のやみも
しるべせよ
なほのこりける
法の燈火
ながきよの
こころのやみも
しるべせよ
なほのこりける
のりのともしび


男山
老いてさか行く
契あらば
つくべきつゑも
神ぞきる覽
をとこやま
をいてさかゆく
ちぎりあらば
つくべきつゑも
かみぞきるらん


道あれど
我世を神に
契るとて
けふ踏初むる
志賀の山ごえ
みちあれど
わがよをかみに
ちぎるとて
けふふみそむる
しがのやまごえ


榊とり
ますみのかゞみ
かけしより
神の國なる
我國ぞかし
さかきとり
ますみのかがみ
かけしより
かみのくになる
われくにぞかし


難波がた
入江に立てる
みをつくし
霞むぞ春の
しるしなりける
なにはがた
いりえにたてる
みをつくし
かすむぞはるの
しるしなりける


春の立つ
あとこそ見ゆれ
朝日影
さすや岡邊に
消ゆる白雪
はるのたつ
あとこそみゆれ
あさひかげ
さすやをかべに
きゆるしらゆき


かく計
をしと思ふ日を
暮れぬとて
花みで歸る
人さへぞうき
かくばかり
をしとおもふひを
くれぬとて
はなみでかへる
ひとさへぞうき


我も又
いざ語らはむ
ほとゝぎす
待ちつる程の
心づくしを
われもまた
いざかたらはむ
ほととぎす
まちつるほどの
こころづくしを


夏の夜も
かげぞ凉しき
久方の
月のいづくに
秋やどるらむ
なつのよも
かげぞすずしき
ひさかたの
つきのいづくに
あきやどるらむ


かきくらす
空とも見えず
夕立の
過行く雲に
入日さしつゝ
かきくらす
そらともみえず
ゆふだちの
すぎゆくくもに
いりひさしつつ


垣根なる
草も人目も
霜がれぬ
秋のとなりや
遠ざかるらむ
かきねなる
くさもひとめも
しもがれぬ
あきのとなりや
とほざかるらむ


跡垂れし
神世に植ゑば
住吉の
松も千年を
過ぎにけらしも
あとたれし
かみよにうゑば
すみよしの
まつもちとせを
すぎにけらしも


たとへ來し
扇もさこそ
わするらめ
月をも月と
分かぬ心に
たとへこし
あふぎもさこそ
わするらめ
つきをもつきと
わかぬこころに


この寐ぬる
朝の原の
つゆけさは
おき別れつる
泪なりけり
このいぬる
あしたのはらの
つゆけさは
おきわかれつる
なみだなりけり


久方の
天の岩戸の
あけしより
出づる朝日ぞ
くもる時なき
ひさかたの
あめのいはとの
あけしより
いづるあさひぞ
くもるときなき


萬代の
春日を今日に
なせりとも
猶あかなくに
花や散る覽
よろづよの
かすがをけふに
なせりとも
なほあかなくに
はなやちるらん


風の音の
俄に變る
くれはとり
あやしと思へば
秋は來に鳬
かぜのおとの
にはかにかはる
くれはとり
あやしとおもへば
あきはきにけり


たなばたに
心をかして
歎くかな
明方ちかき
あまのかは風
たなばたに
こころをかして
なげくかな
あけかたちかき
あまのかはかぜ


唐土も
おなじ空こそ
志ぐるらめ
から紅に
もみぢするころ
もろこしも
おなじそらこそ
しぐるらめ
からくれなゐに
もみぢするころ


我宿の
物なりながら
大井河
せきも止めず
行く木の葉かな
わがやどの
ものなりながら
おほゐかは
せきもとどめず
ゆくこのはかな


憂き節は
數にもあらず
しづた卷
くり返しては
尚ぞ戀しき



思ひ入る
深山の里の
しるしとて
浮世隔つる
まどのくれ竹
おもひいる
みやまのさとの
しるしとて
うきよへだつる
まどのくれたけ


鶯の
囀るけさの
はつ音より
あらたまりける
春ぞ志らるゝ
うぐひすの
さへづるけさの
はつねより
あらたまりける
はるぞしらるる


是も又
在明のかげと
見ゆるかな
吉野の山の
花のしらゆき
これもまた
ありあけのかげと
みゆるかな
よしののやまの
はなのしらゆき


蓮葉の
玉かとぞ見る
池水の
にごりにしまぬ
秋の夜のつき
はちすはの
たまかとぞみる
いけみづの
にごりにしまぬ
あきのよのつき


神代より
幾よろづ代に
なりぬらむ
思へば久し
秋の夜の月
かみよより
いくよろづよに
なりぬらむ
おもへばひさし
あきのよのつき


秋の野の
尾花が本に
鳴く鹿も
今は穗に出でゝ
妻を戀ふらし
あきののの
をはながもとに
なくしかも
いまはほにいでて
つまをこふらし


いとゞまた
限も見えず
武藏野や
天ぎる雪の
あけぼのゝ空
いとどまた
かぎりもみえず
むさしのや
あめぎるゆきの
あけぼののそら


白妙の
光ぞまさる
ふゆの夜の
月のかつらに
雪つもるらし
しろたへの
ひかりぞまさる
ふゆのよの
つきのかつらに
ゆきつもるらし


分け過ぐる
千種の花の
すり衣
おもひ亂るゝ
旅のそらかな
わけすぐる
ちたねのはなの
すりころも
おもひみだるる
たびのそらかな


忘れじの
言の葉なくば
中々に
とはぬ月日を
恨みざらまし
わすれじの
ことのはなくば
なかなかに
とはぬつきひを
うらみざらまし


雲間より
いざよふ月に
あくがれて
いとゞ西にも
行く心哉
くもまより
いざよふつきに
あくがれて
いとどにしにも
ゆくこころかな


龜山の
みねたちこえて
見渡せば
きよたき川を
おとす筏師
かめやまの
みねたちこえて
みわたせば
きよたきかはを
おとすいかだし


是ぞげに
初音なるらむ
聞く人も
待ちあへぬ間の
郭公かな
これぞげに
はつねなるらむ
きくひとも
まちあへぬまの
ほととぎすかな


曉の
枕の志たに
住みなれて
寐覺ことゝふ
きり%\すかな
あかつきの
まくらのしたに
すみなれて
ねざめこととふ
きり%\すかな


小夜衣
かへすかひなき
思ひ寐の
夢にも人を
恨みつるかな
さよころも
かへすかひなき
おもひねの
ゆめにもひとを
うらみつるかな


八雲立つ
出雲八重垣
かきつけて
昔語りを
見るぞかしこき
やくもたつ
いづもやへかき
かきつけて
むかしかたりを
みるぞかしこき


法の花
今も古枝に
咲きぬとは
もと見し人や
思ひ出づらむ
のりのはな
いまもふるえに
さきぬとは
もとみしひとや
おもひいづらむ