冬きては
志ぐるゝ雲の
絶間だに
四方の木葉の
ふらぬ日ぞなき
ふゆきては
しぐるるくもの
たえまだに
よものこのはの
ふらぬひぞなき
Пришла зима,
Из облаков льющийся дождь
Хоть прерывается,
А листва везде
Облетает день за днём...

先づ咲ける
花とやいはむ
うち渡す
遠方のべの
春のあわ雪
まづさける
はなとやいはむ
うちわたす
とほかたのべの
はるのあわゆき


にほの海や
霞みて暮るゝ
春の日に
渡るも遠し
瀬多の長橋
にほのうみや
かすみてくるる
はるのひに
わたるもとほし
せたのながはし
В море Нио
Туманом закончился
День весеннпй,
А переправа ещё далеко:
Длинный мост Сэта...

たをやめの
袖も干しあへず
飛鳥川
たゞ徒らに
春雨ぞ降る
たをやめの
そでもほしあへず
あすかがは
ただいたづらに
はるさめぞふる


老の身に
苦しき山の
坂越えて
何とよそなる
花を見るらむ
おいのみに
くるしきやまの
さかこえて
なにとよそなる
はなをみるらむ


鐘の音は
霞の底に
明けやらで
影ほのかなる
春の夜のつき
かねのねは
かすみのそこに
あけやらで
かげほのかなる
はるのよのつき


郭公
おのがふる聲
立ち歸り
そのかみ山に
いまなのるらむ
ほととぎす
おのがふるこゑ
たちかへり
そのかみやまに
いまなのるらむ


道のべの
山田のみしめ
引きはへて
長き日月の
早苗とる也
みちのべの
やまだのみしめ
ひきはへて
ながきひつきの
さなへとるなり


難波江や
汐干の潟の
芦の葉も
なほ波越ゆる
五月雨のころ
なにはえや
しおほしのかたの
あしのはも
なほなみこゆる
さみだれのころ


月ならで
夜河にさせる
篝火も
おなじ桂の
ひかりとぞ見る
つきならで
よかはにさせる
かかりひも
おなじかつらの
ひかりとぞみる


つかへこし
秋は六十に
遠けれど
雲居の月ぞ
見る心地する
つかへこし
あきはむそぢに
とほけれど
くもゐのつきぞ
みるここちする


千早振
神南備山の
むら時雨
紅葉をぬさと
染めぬ日はなし
ちはやふる
かむなびやまの
むらしぐれ
もみぢをぬさと
そめぬひはなし


散り果つる
後さへ跡を
定めねは
嵐の末の
木の葉なりけり
ちりはつる
のちさへあとを
ささめねは
あらしのすゑの
このはなりけり


いつとても
かゝる人目の
山里は
草の原にぞ
冬を知りける
いつとても
かかるひとめの
やまざとは
くさのはらにぞ
ふゆをしりける


五十餘り
送ると思ひし
身の上に
また歸りける
年のくれ哉
いそぢあまり
おくるとおもひし
みのうへに
またかへりける
としのくれかな


鳥の音に
關の戸出づる
旅人を
まだ夜深しと
おくる月かげ
とりのねに
せきのといづる
たびひとを
まだよふかしと
おくるつきかげ
К птичьим голосам
Выходит из ворот заставы
Путник,
И на него падают в ещё
Глубокой ночи лучи луны.

古郷に
思ひ出づとも
知らせばや
越えて重なる
山の端の月
ふるさとに
おもひいづとも
しらせばや
こえてかさなる
やまのはのつき


跡たれし
もとのちかひを
忘れずば
昔にかへれ
和歌の浦波
あとたれし
もとのちかひを
わすれずば
むかしにかへれ
わかのうらなみ


志られじな
霞にこめて
陽炎の
小野の若草
志たにもゆとも
しられじな
かすみにこめて
かげろふの
をののわかくさ
したにもゆとも


陸奥の
亂れて摺れる
狩衣
名をだに立つる
ひとに志られじ
みちのくの
みだれてずれる
かりごろも
なをだにたつる
ひとにしられじ


音たてぬ
物から人に
知らせばや
ゑにかく瀧の
わき返る共
おとたてぬ
ものからひとに
しらせばや
ゑにかくたきの
わきかへるとも


伊駒山
へだつる中の
峯の雲
何とてかゝる
こゝろなるらむ
いこまやま
へだつるなかの
みねのくも
なにとてかかる
こころなるらむ


訪へかしな
蜑の眞手形
さのみやは
待つに命の
存へもせむ
とへかしな
あまのまてかた
さのみやは
まつにいのちの
ながらへもせむ


僞の
ある世悲しき
心こそ
たのまじとだに
おもひさだめね
いつはりの
あるよかなしき
こころこそ
たのまじとだに
おもひさだめね


忘れねよ
夢ぞと言ひし
かねごとを
などその儘に
頼まざり劔
わすれねよ
ゆめぞといひし
かねごとを
などそのままに
たのまざりけむ


よな〳〵の
泪しなくば
こけ衣
秋おく露の
ほどは見てまし
よなよなの
なみだしなくば
こけころも
あきおくつゆの
ほどはみてまし


消えのこる
跡とて人に
問はるゝも
猶たのみなき
庭の白雪
きえのこる
あととてひとに
とはるるも
なほたのみなき
にはのしらゆき


垂乳根の
親のいさめの
數々に
思ひ合せて
ねをのみぞなく
たらちねの
おやのいさめの
かずかずに
おもひあはせて
ねをのみぞなく


昔とて
かたるばかりの
友もなし
みのゝを山の
松の古木は
むかしとて
かたるばかりの
とももなし
みのゝをやまの
まつのふるきは


あら玉の
年は一夜を
へだてにて
今日より春と
立つ霞かな
あらたまの
としはひとよを
へだてにて
けふよりはると
たつかすみかな
Новояшмового
Года ночь первая
Прошла,
И с той поры весна настала
И дымка тоже поднялась!

佐保姫の
名におふ山も
はるくれば
かけて霞の
衣ほすらし
さほひめの
なにおふやまも
はるくれば
かけてかすみの
ころもほすらし


白雲の
色はひとつを
さくら花
さきぬとにほふ
春の山かぜ
しらくもの
いろはひとつを
さくらはな
さきぬとにほふ
はるのやまかぜ
Едины цветом
С белым облаком
Сакуры цветы
Расцвели, — и цвет, и запах
В ветре весеннем.

立ちまよふ
おなじ高間の
山櫻
雲のいづこに
花の散るらむ
たちまよふ
おなじたかまの
やまさくら
くものいづこに
はなのちるらむ


ちればかつ
波のかけたる
柵や
井出こすかぜの
山吹のはな
ちればかつ
なみのかけたる
しがらみや
ゐでこすかぜの
やまぶきのはな


時鳥
まつとばかりの
短夜に
ねなまし月の
かげぞ明け行く
ほととぎす
まつとばかりの
みぢかよに
ねなましつきの
かげぞあけゆく


滿つ汐の
ながれひるまも
なかりけり
浦の湊の
五月雨の頃
滿つしほの
ながれひるまも
なかりけり
うらのみなとの
さみだれのころ


朝ぼらけ
あらしの山は
峰晴れて
ふもとをくだる
秋の川霧
あさぼらけ
あらしのやまは
みねはれて
ふもとをくだる
あきのかはきり
На самом рассвете
На горе Араси
Вершина прояснилась,
А по основанию спускается
Осенний речной туман...

相坂や
鳥のそら音の
關の戸も
あけぬと見えて
すめる月影
あふさかや
とりのそらねの
せきのとも
あけぬとみえて
すめるつきかげ


秋をへて
遠ざかり行く
古へを
おなじ影なる
月に戀ひつゝ
あきをへて
とほざかりゆく
いにしへを
おなじかげなる
つきにこひつつ


今日も又
暮れぬと思へば
足曳の
山かき曇り
ふるしぐれ哉
けふもまた
くれぬとおもへば
あしびきの
やまかきくもり
ふるしぐれかな


矢田の野の
あさぢが原も
埋れぬ
いくへあらちの
峯の白雪
やたののの
あさぢがはらも
うづもれぬ
いくへあらちの
みねのしらゆき


山の端の
みえぬを老に
喞てども
霞みにけりな
春の明ぼの
やまのはの
みえぬをおいに
かこてども
かすみにけりな
はるのあけぼの


數ふれば
残る彌生も
あるものを
我身の春に
今日別れぬる
かずふれば
のこるやよひも
あるものを
わがみのはるに
けふわかれぬる


言のはの
かはらぬ松の
藤浪に
又立ちかへる
春をみせばや
ことのはの
かはらぬまつの
ふぢなみに
またたちかへる
はるをみせばや


みそぎ河
ゆくせも早く
夏くれて
岩こす浪の
よるぞ凉しき
みそぎかは
ゆくせもはやく
なつくれて
いはこすなみの
よるぞすずしき
Быстро, как поток бегущий реки,
Где совершают святое омовенье,
Кончается лето,
И переливающиеся через камни,
Набегающие волны прохладны.

天の河
八十ぢにかゝる
老の波
又たち歸り
けふにあひぬる
あまのかは
やそぢにかかる
おいのなみ
またたちかへり
けふにあひぬる


古は
おどろかされし
荻のはに
吹きくる風を
寐覺にぞまつ
いにしえは
おどろかされし
をぎのはに
ふきくるかぜを
ねざめにぞまつ


身のうさの
さのみは如何
増るぞと
又廻りあふ
月やみる覽
みのうさの
さのみはいかが
まさるぞと
まためぐりあふ
つきやみるらん


みしことの
皆かはり行く
老の身に
心ながきは
あきのよの月
みしことの
みなかはりゆく
おいのみに
こころながきは
あきのよのつき


つかふとて
みるよ無りし
我宿の
月には獨
ねぞなかれける
つかふとて
みるよなかりし
わがやどの
つきにはひとり
ねぞなかれける


立返り
又つかふべき
道もがな
年ふりはつる
宿の志らゆき
たちかへり
またつかふべき
みちもがな
としふりはつる
やどのしらゆき
Ах, хотел бы я
Дорогу ту, какой вернуться можно было б
И вновь служить,
Но скопились годы
На выпавшем у дома белом снеге.

冬きては
雪の底なる
高砂の
松をともとぞ
いとゞふりぬる
ふゆきては
ゆきのそこなる
たかさごの
まつをともとぞ
いとどふりぬる


移りゆく
日數しられて
夏草の
つゆわけごろも
秋風ぞふく
うつりゆく
ひかずしられて
なつくさの
つゆわけごろも
あきかぜぞふく
На выцветающие
И много дней повидавшие,
Как летние травы,
Густую росу разделявшие одежды
Дует ветер осенний.

詠めつゝ
思へばおなじ
月だにも
都にかはる
佐夜のなか山
ながめつつ
おもへばおなじ
つきだにも
みやこにかはる
さよのなかやま


池水の
たえず澄べき
御代なれば
松の千年も
とはに逢見む
いけみづの
たえずすむべき
みよなれば
まつのちとせも
とはにあひみむ


濁江の
水草隱れの
うきぬなは
苦しとだにも
知る人はなし
にごりえの
みづくさぐれの
うきぬなは
くるしとだにも
しるひとはなし


いかにせむ
戀は果てなき
陸奥の
忍ぶ計に
逢はでやみなば
いかにせむ
こひははてなき
みちのくの
しのぶばかりに
あはでやみなば


心こそ
通はぬ中の
關ならめ
などかなみだの
人めもるらむ
こころこそ
かよはぬなかの
せきならめ
などかなみだの
ひとめもるらむ


たのまじな
逢ふにかへむと
契るとも
今いく程の
老の命は
たのまじな
あふにかへむと
ちぎるとも
いまいくほどの
おいのいのちは


さり共と
思ふかひなき
よな〳〵の
僞をだに
頼みはてばや
さりともと
おもふかひなき
よなよなの
いつはりをだに
たのみはてばや


手枕に
結ぶすゝきの
初尾花
かはす袖さへ
つゆけかりけり
たまくらに
むすぶすゝきの
はつをはな
かはすそでさへ
つゆけかりけり


別路の
有明の月の
うきにこそ
たへて命は
つれなかりけれ
わかれぢの
ありあけのつきの
うきにこそ
たへていのちは
つれなかりけれ


わするべき
今はわが身の
泪だに
心にかなふ
夕ぐれぞなき
わするべき
いまはわがみの
なみだだに
こころにかなふ
ゆふぐれぞなき


かひなしな
いひしに變る
おなじ世に
あればと頼む
命計は
かひなしな
いひしにかはる
おなじよに
あればとたのむ
いのちばかりは


我みても
昔は遠く
なりにけり
ともに老木の
からさきの松
われみても
むかしはとほく
なりにけり
ともにおいこの
からさきのまつ


わかの浦に
おひずば爭で
藻汐草
浪の所爲も
かき集めまし
わかのうらに
おひずばいかで
もしほくさ
なみのしよゐも
かきあつめまし

所爲?
おもふほど
心を人に
しられねば
うしといふにも
理はなし
おもふほど
こころをひとに
しられねば
うしといふにも
ことはりはなし


見しことの
たゞ目の前に
覺ゆるは
寐覺の程の
昔なりけり
みしことの
ただめのまへに
おぼゆるは
ねざめのほどの
むかしなりけり


名を殘す
苔の下共
待もせず
ある世ながらに
埋れぬる身は
なをのこす
こけのしたとも
まちもせず
あるよながらに
うづもれぬるみは


いつのまに
昔の跡と
なりぬらむ
たゞよの程の
庭のしら雪
いつのまに
むかしのあとと
なりぬらむ
ただよのほどの
にはのしらゆき


主しらで
紅葉は折らじ
白波の
立田の山の
おなじ名も憂し
ぬししらで
もみぢはをらじ
しらなみの
たつたのやまの
おなじなもうし


榊葉の
かはらぬ色に
年ふりて
神代ひさしき
あまのかぐ山
さかきばの
かはらぬいろに
としふりて
かみよひさしき
あまのかぐやま


里人や
若菜つむらし
朝日さす
三笠の野べは
春めきにけり
さとひとや
わかなつむらし
あさひさす
みかさののべは
はるめきにけり
Живущие в хижине горной,
Наверное, собирают молодые травы, —
Утреннее солнце светит
И на полях горы Микаса
Повеяло весною!

さえかへり
山風あるる
常磐木に
降りもたまらぬ
春の沫雪
さえかへり
やまかぜあるる
ときはきに
ふりもたまらぬ
はるのあはゆき


泡雪は
降りもやまなん
まだきより
待たるる花の
散るとまがふに
あはゆきは
ふりもやまなん
まだきより
またるるはなの
ちるとまがふに


立ち歸り
春は來にけり
さゞ波や
氷吹きとく
志賀のうら風
たちかへり
はるはきにけり
さざなみや
こほりふきとく
しがのうらかぜ


下もえや
先づいそぐらむ
白雪の
淺澤小野に
若菜つむなり
したもえや
まづいそぐらむ
しらゆきの
あささはをのに
わかなつむなり


けぬが上に
降るかとぞ見る
梅が枝の
花に天ぎる
春の沫雪
けぬがうへに
ふるかとぞみる
うめがえの
はなにあめぎる
はるのあはゆき


難波江や
冬ごもりせし
梅が香の
四方にみちくる
春の汐風
なにはえや
ふゆごもりせし
うめがかの
よもにみちくる
はるのしほかぜ


咲かぬより
花は心に
懸れども
其かと見ゆる
雲だにもなし
さかぬより
はなはこころに
かけれども
それかとみゆる
くもだにもなし


ながしとも
思はで暮れぬ
夕日かげ
花にうつろふ
春の心は
ながしとも
おもはでくれぬ
ゆふひかげ
はなにうつろふ
はるのこころは


花を見て
慰むよりや
三吉野の
山をうき世の
外といひけむ
はなをみて
なぐさむよりや
みよしのの
やまをうきよの
ほかといひけむ


山吹の
花こそいはぬ
いろならめ
もとの籬を
問ふ人もがな
やまぶきの
はなこそいはぬ
いろならめ
もとのまがきを
とふひともがな


なほざりに
鳴きてや過ぐる
郭公
まつは苦しき
心づくしを
なほざりに
なきてやすぐる
ほととぎす
まつはくるしき
こころづくしを


五月雨は
行くさき深し
いはた河
渡る瀬ごとに
水まさりつゝ
さみだれは
ゆくさきふかし
いはたかは
わたるせごとに
みづまさりつつ


蚊遣火の
下やすからぬ
烟こそ
あたりの宿も
猶くるしけれ
かやりびの
したやすからぬ
けぶりこそ
あたりのやども
なほくるしけれ


天の河
絶えじとぞ思ふ
たなばたの
同じ雲居に
あはむ限は
あまのかは
たえじとぞおもふ
たなばたの
おなじくもゐに
あはむかぎりは


袖にこそ
みだれそめけれ
春日野の
若むらさきの
萩が花摺
そでにこそ
みだれそめけれ
かすがのの
わかむらさきの
はぎがはなずり


秋風に
峰行く雲を
出でやらで
待つほど過ぐる
十六夜の月
あきかぜに
みねゆくくもを
いでやらで
まつほどすぐる
いざよひのつき


さとの名も
あらはに志るし
長月の
月の桂の
秋のこよひは
さとのなも
あらはにしるし
ながつきの
つきのかつらの
あきのこよひは


きり〴〵す
思ふ心を
いかにとも
互に知らで
なき明すかな
きりぎりす
おもふこころを
いかにとも
互にしらで
なきあかすかな


船もがな
いざよふ波の
音はして
まだ夜は深し
うぢの網代木
ふねもがな
いざよふなみの
おとはして
まだよはふかし
うぢのあじろぎ


かち人の
野分にあへる
深簔の
毛を吹くよこそ
苦しかるらめ
かちひとの
のわきにあへる
ふかみのの
げをふくよこそ
くるしかるらめ


みがき置く
あとを思はゞ
玉津島
今もあつむる
光をもませ
みがきおく
あとをおもはば
たまつしま
いまもあつむる
ひかりをもませ


常ならぬ
世にふるはては
消えぬとや
げに身を捨し
雪の山道
つねならぬ
よにふるはては
きえぬとや
げにみをすてし
ゆきのやまみち


底きよく
澄ます心の
水のおもに
結ぶ氷を
かさねてぞ見る
そこきよく
すますこころの
みづのおもに
むすぶこほりを
かさねてぞみる


うきにはふ
芦の下根の
水籠り
に隱て人を
戀ひぬ日はなし
うきにはふ
あしのしたねの
みづかごり
にかくてひとを
こひぬひはなし


名にたゝむ
後ぞ悲しき
富士のねの
同じ烟に
身を粉へても
なにたたむ
のちぞかなしき
ふじのねの
おなじけぶりに
みをまがへても


下もえの
思の烟
末つひに
うき名ながらや
そらに立ちなむ
したもえの
おもひのけぶり
すゑつひに
うきなながらや
そらにたちなむ


世々かけて
思へばつらき
報哉
たが心より
つれなかりけむ
よよかけて
おもへばつらき
むくひかな
たがこころより
つれなかりけむ


海士の住む
里の苫屋の
くずかづら
一方にやは
浦風もふく
あまのすむ
さとのともやの
くずかづら
ひとかたにやは
うらかぜもふく


自から
思ひ出づとも
かひぞなき
契りしまゝの
心ならずば
おのづから
おもひいづとも
かひぞなき
ちぎりしままの
こころならずば


うらむるも
戀ふる心の
外ならで
おなじ泪ぞ
せく方もなき
うらむるも
こふるこころの
ほかならで
おなじなみだぞ
せくかたもなき


いたづらに
老の寐覺の
ながき夜は
我泪にぞ
鳥もなきける
いたづらに
おいのねざめの
ながきよは
われなみだにぞ
とりもなきける


五月雨の
草の庵の
よるの袖
しづくも露も
さてや朽ちなむ
さみだれの
くさのいほりの
よるのそで
しづくもつゆも
さてやくちなむ


難波江や
朝おく霜に
折れふして
殘るともなき
よゝの葦原
なにはえや
あさおくしもに
をれふして
のこるともなき
よよのあしはら


消えずとて
頼むべきかは
老がよの
ふくるに殘る
閨の埋火
きえずとて
たのむべきかは
おいがよの
ふくるにのこる
ねやのうずみび


都人
なにの色にか
たづねみむ
しぐれぬさきの
秋のやま里
みやこひと
なにのいろにか
たづねみむ
しぐれぬさきの
あきのやまさと


春日山
松ふくかぜの
高ければ
そらにきこゆる
萬世のこゑ
かすがやま
まつふくかぜの
たかければ
そらにきこゆる
よろづよのこゑ


朝日山
長閑けき春の
けしきより
八十氏人も
若菜摘むらし
かすがやま
のどけきはるの
けしきより
やそうじひとも
わかなつむらし


霞めども
隱れぬ物は
梅の花
風にあまれる
にほひなりけり
かすめども
かくれぬものは
うめのはな
かぜにあまれる
にほひなりけり


廣澤の
いけの堤の
柳かげ
みどりもふかく
はるさめぞ降る
ひろさはの
いけのつつみの
やなぎかげ
みどりもふかく
はるさめぞふる


歸る雁
羽根打ちかはす
志ら雲の
道行きぶりは
櫻なりけり
かへるかり
はねうちかはす
しらくもの
みちゆきぶりは
さくらなりけり


旅人の
ゆきゝの岡は
名のみして
花に留まる
春の木のもと
たびびとの
ゆききのをかは
なのみして
はなにとどまる
はるのこのもと


夏きては
たゞ一重なる
衣手に
いかでか春を
立ち隔つらむ
なつきては
ただひとへなる
ころもでに
いかでかはるを
たちへだつらむ


葵草
かざす卯月の
ほとゝぎす
ひとの心に
まづかゝりつゝ
あふひくさ
かざすうつきの
ほととぎす
ひとのこころに
まづかかりつつ


山もとの
遠の日影は
さだかにて
かたへ凉しき
夕だちの雲
やまもとの
とほのひかげは
さだかにて
かたへすずしき
ゆふだちのくも


夕まぐれ
秋來るかたの
山の端に
影珍らしく
いづるみか月
ゆふまぐれ
あきくるかたの
やまのはに
かげめづらしく
いづるみかつき


色かはる
梢を見れば
さほ山の
朝霧がくれ
かりは來にけり
いろかはる
こずゑをみれば
さほやまの
あさぎりがくれ
かりはきにけり


夕やみに
見えぬ雲間も
顯はれて
時々てらす
宵のいなづま
ゆふやみに
みえぬくもまも
あらはれて
ときどきてらす
よひのいなづま


炭がまの
烟に春を
たち籠めて
よそめ霞める
小野の山もと
すみがまの
けぶりにはるを
たちこめて
よそめかすめる
をののやまもと


哀れなど
あひも思はぬ
故郷も
旅寢となれば
戀しかるらむ
あはれなど
あひもおもはぬ
ふるさとも
たびねとなれば
こひしかるらむ


郭公
今は五月と
名のるなり
我がしのび音ぞ
時ぞともなき
ほととぎす
いまはさつきと
なのるなり
わがしのびねぞ
ときぞともなき


生きて世の
忘形見と
成やせむ
夢計りだに
ぬともなき夜は
いきてよの
わすれかたみと
なりやせむ
ゆめばかりだに
ぬともなきよは


まどろまぬ
時さへ夢の
見えつるは
心に餘る
往來なりけり
まどろまぬ
ときさへゆめの
みえつるは
こころにあまる
ゆききなりけり


聞きてだに
身こそ焦るれ
通ふなる
夢の直路の
ちかの鹽竈
ききてだに
みこそこかるれ
かよふなる
ゆめのただぢの
ちかのしほがま


八聲なく
かけの垂れ尾の
己れのみ
長くや人に
思ひ亂れむ
やごゑなく
かけのたれをの
おのれのみ
ながくやひとに
おもひみだれむ


契りしを
頼めばつらし
おもはねば
なにを命の
慰めぞなき
ちぎりしを
たのめばつらし
おもはねば
なにをいのちの
なぐさめぞなき


絶えねばと
思ふも悲し
さゝ蟹の
厭はれながら
かゝる契は
たえねばと
おもふもかなし
ささかにの
いとはれながら
かかるちぎりは


おのづから
猶ゆふかけて
神山の
玉ぐしの葉に
殘る志ら雪
おのづから
なほゆふかけて
かみやまの
たまぐしのはに
のこるしらゆき


五月暗
ともしに向ふ
しかばかり
逢ふも逢はぬも
哀世の中
さつきやみ
ともしにむかふ
しかばかり
あふもあはぬも
あはれよのなか


哀にぞ
月に背くる
燈火の
ありとはなしに
我がよ更けぬる
あはれにぞ
つきにそむくる
ともしびの
ありとはなしに
わがよふけぬる


閼伽棚の
花の枯葉も
打ちしめり
朝ぎりふかし
峰の山でら
あかだなの
はなのかれはも
うちしめり
あさぎりふかし
みねのやまでら


和歌の浦に
身ぞうき波の
蜑小舟
流石かさなる
跡な忘れそ
わかのうらに
みぞうきなみの
あまをぶね
さすがかさなる
あとなわすれそ


古への
流れの末を
うつしてや
横川の杉の
しるしをもみる
いにしへの
ながれのすゑを
うつしてや
よかはのすぎの
しるしをもみる


行き歸り
みつの小河を
さす棹の
みなれし跡も
かすむ春哉
ゆきかへり
みつの小かはを
さすさほの
みなれしあとも
かすむはるかな


かすむ夜の
月の桂も
木の間より
光を花と
うつろひにけり
かすむよの
つきのかつらも
このまより
ひかりをはなと
うつろひにけり


今日も又
大宮人の
さくら花
のどけき春の
かざしにぞ挿す
けふもまた
おほみやひとの
さくらはな
のどけきはるの
かざしにぞさす


飽かず見る
花の匂も
深き夜の
雲居にかすむ
はるの月かげ
あかずみる
はなのにほひも
ふかきよの
くもゐにかすむ
はるのつきかげ


明け易き
夜の間ならずば
月影を
秋の空とや
思ひ果てまし
あけよすき
よのまならずば
つきかげを
あきのそらとや
おもひはてまし


七夕の
雲のころもの
衣々に
歸るさつらき
あまのかはなみ
たなばたの
くものころもの
きぬぎぬに
かへるさつらき
あまのかはなみ


天の原
光さし添ふ
かさゝぎの
かゞみと見ゆる
秋の夜の月
あまのはら
ひかりさしそふ
かささぎの
かがみとみゆる
あきのよのつき


諸人の
今日九重に
匂ふてふ
菊にみがける
つゆのことの葉
もろひとの
けふここのへに
にほふてふ
きくにみがける
つゆのことのは


敷島や
大和にはあらぬ
紅の
色の千しほに
染むるもみぢ葉
しきしまや
やまとにはあらぬ
くれなゐの
いろのちしほに
そむるもみぢは


三島野や
くるれば結ぶ
矢形尾の
鷹も眞白に
雪は降りつゝ
みしまのや
くるればむすぶ
矢かたをの
たかもましらに
ゆきはふりつつ


夜寒なる
豐のあかりを
霜の上に
月冴え渡る
雲のかけはし
よさむなる
とよのあかりを
しものうへに
つきさえわたる
くものかけはし


目に見えぬ
心ばかりは
後れねど
獨や山を
今日は越ゆらむ
めにみえぬ
こころばかりは
おくれねど
ひとりややまを
けふはこゆらむ


唐衣
はる〴〵來ぬる
旅寐にも
袖ぬらせとや
又しぐるらむ
からころも
はるばるこぬる
たびねにも
そでぬらせとや
またしぐるらむ


旅衣
はる〴〵來ぬる
八橋の
むかしの跡に
そでもぬれつゝ
たびごろも
はるばるこぬる
やつはしの
むかしのあとに
そでもぬれつつ


逢ふまでの
契も待たず
夏引の
手びきの糸の
戀のみだれは
あふまでの
ちぎりもまたず
なつひきの
てびきのいとの
こひのみだれは


果敢なしや
誰が僞の
なき世とて
頼みし儘の
暮を待つらむ
はかなしや
たがいつはりの
なきよとて
たのみしままの
くれをまつらむ


そのまゝに
さても消えなで
白露の
おきて悲しき
道の芝草
そのままに
さてもきえなで
しらつゆの
おきてかなしき
みちのしばくさ


から藍の
八しほの衣
ふりぬとも
染めし心の
色はかはらじ
からあひの
やしほのころも
ふりぬとも
そめしこころの
いろはかはらじ


玉かづら
いかに寐し夜の
手枕に
つらき契の
かけ離れけむ
たまかづら
いかにねしよの
たまくらに
つらきちぎりの
かけはなれけむ


神がきや
かげものどかに
石清水
すまむ千年の
末ぞ久しき
かみがきや
かげものどかに
いはしみづ
すまむちとせの
すゑぞひさしき


道のべの
松の下葉に
引く志めは
みわ据ゑ祭る
印なるらし
みちのべの
まつのしたばに
ひくしめは
みわすゑまつる
しるしなるらし


いく世にか
神の宮居の
なりぬらむ
ふりて久しき
住吉の松
いくよにか
かみのみやゐの
なりぬらむ
ふりてひさしき
すみよしのまつ


傳へくる
庭の教の
かたばかり
跡あるにだに
猶まよひつゝ
つたへくる
にはのおしへの
かたばかり
あとあるにだに
なほまよひつつ


垂乳根の
昔の跡と
思はずば
松のあらしや
すみうからまし
たらちねの
むかしのあとと
おもはずば
まつのあらしや
すみうからまし


つらかきな
山の杣木の
我ながら
打つすみ繩に
引かぬ心は
つらかきな
やまのそまぎの
われながら
うつすみなはに
ひかぬこころは


いざ今日は
衣手濡て
降る雪の
粟津の小野に
若菜摘みてむ
いざけふは
ころもでぬれて
ふるゆきの
あはつのをのに
わかなつみてむ


梅の花
色香ばかりを
あるじにて
宿は定かに
訪ふ人もなし
うめのはな
いろかばかりを
あるじにて
やどはさだかに
とふひともなし


見渡せば
今やさくらの
花盛
くものほかなる
山の端もなし
みわたせば
いまやさくらの
はなさかり
くものほかなる
やまのはもなし


さしかへる
雫も袖の
影なれば
月になれたる
宇治の河をさ
さしかへる
しずくもそでの
かげなれば
つきになれたる
うぢのかはをさ


月かげも
にほてる浦の
秋なれば
鹽やくあまの
烟だになし
つきかげも
にほてるうらの
あきなれば
しほやくあまの
けぶりだになし


矢田の野に
打出でゝ見れば
山風の
有乳の嶺は
雪降りに鳬
やたののに
うちいでてみれば
やまかぜの
あらちのみねは
ゆきふりにけり


嵐こす
外山の峯の
ときは木に
雪げしぐれて
かゝるむら雲
あらしこす
とやまのみねの
ときはきに
ゆきげしぐれて
かかるむらくも


富士の嶺は
冬こそ高く
成ぬらめ
分かぬ深雪に
時を重ねて
ふじのねは
ふゆこそたかく
なりぬらめ
わかぬみゆきに
ときをかさねて


今は早十市の池のみくり繩來る夜も知らぬ人に戀ひつゝ



かき遣りし
山井の清水
更に又
絶えての後の
影を戀ひつゝ
かきやりし
やまゐのきよみ
ふけにまた
たえてののちの
かげをこひつつ


人はいさ
鏡に見ゆる
影をだに
うつる方には
頼みやはする
ひとはいさ
かがみにみゆる
かげをだに
うつるかたには
たのみやはする


今はとて
世にも人にも
捨てらるゝ
身に七十ぢの
老ぞ悲しき
いまはとて
よにもひとにも
すてらるる
みにななそぢの
おいぞかなしき


定めなき
心弱さを
顧みて
そむかぬ世こそ
いとゞ惜しけれ
さだめなき
こころよはさを
かへりみて
そむかぬよこそ
いとどをしけれ


船よばふ
聲にむかふる
渡し守
浮世の岸に
誰れかとまらむ
ふねよばふ
こゑにむかふる
わたしもり
うきよのきしに
たれかとまらむ