花の色を
えやはとゞめむ
相坂の
關吹き越ゆる
はるの嵐に
はなのいろを
えやはとどめむ
あふさかの
せきふきこゆる
はるのあらしに
五月雨に
入りぬる磯の
草よりも
雲間の月ぞ
見らく少なき
さみだれに
いりぬるいその
くさよりも
くもまのつきぞ
みらくすくなき
出でぬれど
光は猶ぞ
待たれける
まだ暮果てぬ
山の端の月
いでぬれど
ひかりはなほぞ
またれける
まだくれはてぬ
やまのはのつき
行く雲の
うき田の杜の
村時雨
過ぎぬと見れば
紅葉して鳬
ゆくくもの
うきたのもりの
むらしぐれ
すぎぬとみれば
もみぢしてけり
春の夜の
霞や空に
晴れぬらむ
朧げならぬ
つきのさやけさ
はるのよの
かすみやそらに
はれぬらむ
おぼろげならぬ
つきのさやけさ
苗代の
春のかど田に
せく水の
道あるかたに
身をや任せむ
なはしろの
はるのかどたに
せくみづの
みちあるかたに
みをやまかせむ
立ちかへり
又古を
戀ふるかな
頼みし末の
うきにつけても
たちかへり
またいにしへを
こふるかな
たのみしすゑの
うきにつけても
君ゆゑに
身に惜まれし
命こそ
後れて殘る
今日はつらけれ
きみゆゑに
みにをしまれし
いのちこそ
おくれてのこる
けふはつらけれ
有明の
月にぞ頼む
ほとゝぎす
いひしばかりの
契ならねど
ありあけの
つきにぞたのむ
ほととぎす
いひしばかりの
ちぎりならねど
谷かげや
子日にもるゝ
岩ね松
誰にひかれて
春を志らまし
たにかげや
ねのひにもるる
いはねまつ
たれにひかれて
はるをしらまし
澤にのみ
いく年つきを
かさぬらむ
雲居へだつる
鶴の毛衣
さはにのみ
いくとしつきを
かさぬらむ
くもゐへだつる
つるのげころも
思ふ事
せめて空しき
はては又
心なるべき
世をぞそむかぬ
おもふこと
せめてむなしき
はてはまた
こころなるべき
よをぞそむかぬ
老ぬれば
忍ぶべしとも
しらざりし
我古へぞ
さらに戀しき
おいぬれば
しのぶべしとも
しらざりし
われいにしへぞ
さらにこひしき
さのみやは
まだ咲やらぬ
花故に
見まく欲しさの
山路暮さむ
さのみやは
まださやらぬ
はなゆゑに
みまくほしさの
やまぢくらさむ
へだて行く
昔の春の
おもかげに
又立ちかへる
花のしら雲
へだてゆく
むかしのはるの
おもかげに
またたちかへる
はなのしらくも
せき入るゝ
庭の清水は
それながら
秋を心に
任せやはせぬ
せきいるる
にはのしみづは
それながら
あきをこころに
まかせやはせぬ
七夕の
雲の衣を
ふく風に
そでのわかれは
立ちもとまらず
たなばたの
くものころもを
ふくかぜに
そでのわかれは
たちもとまらず
降り暮す
けふさへ雪に
跡たえば
飛鳥の里を
誰か問ふべき
ふりくらす
けふさへゆきに
あとたえば
あすかのさとを
たれかとふべき
夜もすがら
通ふ夢路は
絶果てゝ
月を都の
かたみにぞ見る
よもすがら
かよふゆめぢは
たえはてて
つきをみやこの
かたみにぞみる
Прервались
Все дороги сновидений,
Где бродил ночь напролёт,
И вижу лишь луну
Как память о столице.
遂に又
いかなる道に
迷ふとも
契りしまゝの
しるべ忘るな
つひにまた
いかなるみちに
まよふとも
ちぎりしままの
しるべわするな
住吉の
浪うつきしの
草なれや
人め忘れて
ぬるゝたもとは
すみよしの
なみうつきしの
くさなれや
ひとめわすれて
ぬるるたもとは
人目のみ
志のぶの浦に
おく網の
下にはたえず
引く心かな
ひとめのみ
しのぶのうらに
おくあみの
したにはたえず
ひくこころかな
よしや又
さても絶えずば
銀河
同じ逢瀬に
たゝへこそせめ
戀ひ渡る
心ばかりや
絶えざらむ
久米路の橋の
よるの契は
こひわたる
こころばかりや
たえざらむ
くめぢのはしの
よるのちぎりは
いかにして
思立たまし
世のうさを
隔つる雲の
深き山路に
いかにして
おもひたたまし
よのうさを
へだつるくもの
ふかきやまぢに
隱れなき
にほの通ひぢ
今更に
あさき心の
みづからぞうき
かくれなき
にほのかよひぢ
いまさらに
あさきこころの
みづからぞうき
今更に
苦しさまさる
逢坂を
せき越えなばと
何おもひけむ
いまさらに
くるしさまさる
あふさかを
せきこえなばと
なにおもひけむ
いつのまに
紅葉の橋を
渡すらむ
しぐれぬさきの
星合の空
いつのまに
もみぢのはしを
わたすらむ
しぐれぬさきの
ほしあひのそら
まどろまで
月をぞ見つる
寄る浪の
荒き濱邊の
夜はの假寐に
まどろまで
つきをぞみつる
よるなみの
あれきはまべの
よはのかりねに
鳰鳥の
すむ池水の
絶えもせば
いかに忍べと
通ひそめけむ
にほとりの
すむいけみづの
たえもせば
いかにしのべと
かよひそめけむ
神代より
いくとせふりぬ
鈴鹿川
やそ瀬の浪の
秋の夜の月
かみよより
いくとせふりぬ
すずかがは
やそせのなみの
あきのよのつき
さらでだに
かへさ苦しき
山人の
つま木の上に
積る雪かな
さらでだに
かへさくるしき
やまひとの
つまきのうへに
つもるゆきかな
今更に
曇りな果てそ
春の月
晴れぬは老の
なみだなりとも
いまさらに
くもりなはてそ
はるのつき
はれぬはおいの
なみだなりとも
我が戀は
まだ古巣なる
鶯の
鳴きても人に
知らせかねつゝ
わがこひは
まだふるすなる
うぐひすの
なきてもひとに
しらせかねつつ
越えかぬる
習もつらし
逢坂の
山しもなどか
關路なるらむ
こえかぬる
ならひもつらし
あふさかの
やましもなどか
せきぢなるらむ
行秋を
命あらはと
たのめても
人のわかれは
待かたもなし
ゆくあきを
いのちあらはと
たのめても
ひとのわかれは
まつかたもなし
にほの海は
氷とくらし
しら波の
うち出の浜に
春風そふく
にほのうみは
こほりとくらし
しらなみの
うちいでのはまに
はるかぜそふく
天河
紅葉の橋の
色よりや
こそのわたりも
うつろひにけん
あまのがは
もみぢのはしの
いろよりや
こそのわたりも
うつろひにけん
うかりける
みおの杣山
数ならぬ
おなしなけきは
引人もなし
うかりける
みおのそまやま
かずならぬ
おなしなけきは
ひひともなし
いくとせか
千々に物思ふ
秋をへて
月に涙の
数つもるらん
いくとせか
ちちにものおもふ
あきをへて
つきになみだの
かずつもるらん
かくてはや
暮ぬとみつる
夕立の
日影高くも
晴る空かな
かくてはや
くれぬとみつる
ゆふだちの
ひかげたかくも
はるるそらかな