山櫻
咲きちる時の
春をへて
よはひも花の
かげにふりにき
やまさくら
さきちるときの
はるをへて
よはひもはなの
かげにふりにき


よる浪の
凉しくもあるか
志きたへの
袖師の裏の
秋の初風
よるなみの
すずしくもあるか
しきたへの
そでしのうらの
あきのはつかぜ


まねけとて
うゑし薄の
一本に
とはれぬ庭ぞ
茂りはてぬる
まねけとて
うゑしうすみの
ひともとに
とはれぬにはぞ
しげりはてぬる

薄の??
日をへては
秋風寒み
さを鹿の
たちのゝ眞弓
紅葉しにけり
ひをへては
あきかぜさむみ
さをしかの
たちののまゆみ
もみぢしにけり


須磨のうらに
秋をとゞめぬ
關守も
殘る霜夜の
月はみる覽
すまのうらに
あきをとどめぬ
せきもりも
のこるしもよの
つきはみるらん
В бухте Сума
Не остановившие осень
Стражники заставы тоже,
Наверное,смотрят на луну,
Что осталась морозной ночью.

くれにもと
いはぬ別の
曉を
つれなく出でし
旅のそらかな
くれにもと
いはぬわかれの
あかつきを
つれなくいでし
たびのそらかな


あづま路の
富士の志ば山
暫しだに
けたぬ思に
立つ烟かな
あづまぢの
ふじのしばやま
しばしだに
けたぬおもひに
たつけぶりかな


暮れて行く
空を彌生の
暫しとも
春の別は
いふかひもなし
くれてゆく
そらをやよひの
しばしとも
はるのわかれは
いふかひもなし


等閑の
おとだにつらき
荻の葉に
夕をわきて
秋かぜぞ吹く
なおざりの
おとだにつらき
をぎのはに
ゆふべをわきて
あきかぜぞふく


闇のうちも
今日を限りの
空にしも
秋の半は
かき暮しつゝ
やみのうちも
けふをかぎりの
そらにしも
あきのなかばは
かきくらしつつ


まだ咲かぬ
軒端のうめに
鶯の
木傳ひ散らす
春のあわゆき
まださかぬ
のきはのうめに
うぐひすの
きつたひちらす
はるのあわゆき


早苗取る
田子の小笠を
その儘に
脱がでぞ歸る
五月雨の比
さなへとる
たごのをかさを
そのままに
ぬがでぞかへる
さみだれのころ


さす棹の
水のみかさの
高瀬舟
はやくぞ降す
五月雨のころ
さすさほの
みづのみかさの
たかせふね
はやくぞくだす
さみだれのころ


秋の野の
尾花にまじる
鹿の音は
色にや妻を
戀ひ渡るらむ
あきののの
をはなにまじる
しかのねは
いろにやつまを
こひわたるらむ


秋風に
不破の關屋の
荒れまくも
惜からぬ迄
月ぞもり來る
あきかぜに
ふはのせきやの
あれまくも
をしからぬまで
つきぞもりくる


後はいさ
逢ひみぬ先の
つらさ社
思ひ比ぶる
方なかりけれ
のちはいさ
あひみぬさきの
つらさこそ
おもひくらぶる
かたなかりけれ


稀ならむ
ことをや兼て
契り置きし
絶えても頼む
心長さは
まれならむ
ことをやかねて
ちぎりおきし
たえてもたのむ
こころながさは


なほざりに
ひとたび契る
僞りも
ながき恨の
夕ぐれのそら
なほざりに
ひとたびちぎる
いつはりも
ながきうらみの
ゆふぐれのそら


聞かざりし
嵐のかぜも
身にそひぬ
今はすみかの
秋の山里
きかざりし
あらしのかぜも
みにそひぬ
いまはすみかの
あきのやまざと


明けて見ぬ
たが玉章を
徒らに
まだ夜をこめて
かへる雁金
あけてみぬ
たがたまづさを
いたづらに
まだよをこめて
かへるかりがね


雲よりも
よそになり行く
かつらきの
高間の櫻
嵐吹くらし
くもよりも
よそになりゆく
かつらきの
たかまのさくら
あらしふくらし
На сановящейся
Даже дальше, чем облака
Высокой вершине
Горы Кацураги
Дует буря сакуры, наверно.

一聲の
おぼつかなきに
郭公
われもきゝつと
いふ人もがな
ひとこゑの
おぼつかなきに
ほととぎす
われもききつと
いふひともがな


おのづから
野中の清水
知る人も
忘るばかりに
しげる夏草
おのづから
のなかのきよみ
しるひとも
わするばかりに
しげるなつくさ
Даже те люди,
Кто знал, где вода есть
В полях,
И те даже забыли, —
Так густо разрослись травы!

田子の蜑の
宿まで埋む
富士のねの
雪も一つに
冬はきに鳬
たごのあまの
やどまでうずむ
ふじのねの
ゆきもひとつに
ふゆはきにけり
У рыбаков в Таго
Дома даже замело,
И на вершине Фудзи
Тоже снег, одновременно
Пришла зима.

いつまでか
雲居の櫻
かざしけむ
をり忘れたる
老の春かな
いつまでか
くもゐのさくら
かざしけむ
をりわすれたる
おいのはるかな


しばし猶
月をもみむと
思へども
老いて殘の
秋ぞすくなき
しばしなほ
つきをもみむと
おもへども
をいてのこりの
あきぞすくなき
Хоть ещё немного
На луну полюбуюсь, —
Хоть и думаю я,
Но стар уже, и осталось мне
Не так уж много осеней..

道遠み
思ひしよりも
日は暮れて
更行く宿は
かす人もなし
みちとほみ
おもひしよりも
ひはくれて
ふけゆくやどは
かすひともなし


こりざらむ
心のはての
強面さも
身を存へて
猶やみせまし
こりざらむ
こころのはての
つれなさも
みをながらへて
なほやみせまし

???
言の葉も
秋にはあへず
移ればや
變るつらさの
色を見す覽
ことのはも
あきにはあへず
うつればや
かはるつらさの
いろをみすらん


いかにせむ
慰む月の
なさけだに
又身に厭ふ
老となりぬる
いかにせむ
なぐさむつきの
なさけだに
またみにいとふ
おいとなりぬる


聞きわかぬ
ゆふ付鳥の
こゑよりも
老の寐覺ぞ
時は定むる
ききわかぬ
ゆふつけどりの
こゑよりも
おいのねざめぞ
ときはささむる


老てこそ
世を背くとは
思ひしに
さてしも年の
猶積るかな
おいてこそ
よをそむくとは
おもひしに
さてしもとしの
なほつもるかな


我身から
遠ざかり行く
昔かと
思ふにつけて
老ぞかなしき
わがみから
とほざかりゆく
むかしかと
おもふにつけて
おいぞかなしき


昔をば
面がはりして
思へども
見しよ忘れぬ
月のかげかな
むかしをば
おもがはりして
おもへども
みしよわすれぬ
つきのかげかな


世の常の
年の暮とぞ
をしまゝし
夢の裡なる
日數ならずば
よのつねの
としのくれとぞ
をしままし
ゆめのうちなる
ひかずならずば


山の井の
あかぬ影みる
外に又
あまれる水を
汲みは濁さじ
やまのゐの
あかぬかげみる
ほかにまた
あまれるみづを
くみはにごさじ


高砂の
をのへの松の
あさ霞
たなびく見れば
春は來にけり
たかさごの
をのへのまつの
あさかすみ
たなびくみれば
はるはきにけり


春はまづ
なびきにけりな
佐保姫の
そむる手引の
青柳の糸
はるはまづ
なびきにけりな
さほひめの
そむるてびきの
あをやぎのいと


暮るゝ夜の
嵐は何を
はらふらむ
かねて雲なき
山の端の月
くるるよの
あらしはなにを
はらふらむ
かねてくもなき
やまのはのつき


雲は皆
晴れにしまゝの
秋風に
幾夜もおなじ
月ぞさやけき
くもはみな
はれにしままの
あきかぜに
いくよもおなじ
つきぞさやけき


招くとて
さのみも人の
止まらば
尾花がもとや
所なからむ
まねくとて
さのみもひとの
とどまらば
をはながもとや
ところなからむ


いつまでと
知らぬかたみの
月影を
宿す泪に
袖や朽ちなむ
いつまでと
しらぬかたみの
つきかげを
やどすなみだに
そでやくちなむ


末の松
あだし心の
ゆふ汐に
我が身をうらと
浪ぞこえぬる
すゑのまつ
あだしこころの
ゆふしほに
わがみをうらと
なみぞこえぬる


かゝるべき
契をなどか
結びけむ
先の世志らで
人は恨みし
かかるべき
ちぎりをなどか
むすびけむ
さきのよしらで
ひとはうらみし


五月雨に
八十氏川を
見渡せば
網代やいづこ
瀬々の埋れ木
さみだれに
やそうじかはを
みわたせば
あみよやいづこ
せぜのうもれき


すがの根も
うつろひ變る
冬の日に
夕霜いそぐ
山の下ぐさ
すがのねも
うつろひかはる
ふゆのひに
ゆふしもいそぐ
やまのしたぐさ


明らけき
御影になるゝ
池水を
月にぞみがく
よろづ代の秋
あきらけき
みかげになるる
いけみづを
つきにぞみがく
よろづよのあき


かゝりける
別をしらで
山城の
とはにも君を
頼みけるかな
かかりける
わかれをしらで
やましろの
とはにもきみを
たのみけるかな


徒に
くらせる宵の
さむしろは
夢を頼みて
寢むかたもなし
いたづらに
くらせるよひの
さむしろは
ゆめをたのみて
ねむかたもなし


自づから
逢ふ夜稀なる
契をば
忍ばずとても
誰か知るべき
おのづから
あふよまれなる
ちぎりをば
しのばずとても
たれかしるべき


あだ人の
心の花に
まがへばや
浮きたる雲の
あとも定めぬ
あだひとの
こころのはなに
まがへばや
うきたるくもの
あともさだめぬ


云へばげに
我身のみこそ
うかりけれ
つらき人には
言の葉もなし
いへばげに
わがみのみこそ
うかりけれ
つらきひとには
ことのはもなし


墨染の
そでの千しほに
まどはるゝ
我が身もて
心のはなの
いろやなにぞも
すみぞめの
そでのちしほに
まどはるる
わがみもて
こころのはなの
いろやなにぞも


道遠き
佐野の舟橋
夜をかけて
月にぞ渡る
あきのたびゞと
みちとほき
さののふねはし
よをかけて
つきにぞわたる
あきのたびゞと


濡れてこそ
月をも宿せ
我が袖の
露をばほさじ
涙なりとも
ぬれてこそ
つきをもやどせ
わがそでの
つゆをばほさじ
なみだなりとも


はからざる
八十ぢのそとの
年の暮
積るとだにも
今は覺えず
はからざる
やそぢのそとの
としのくれ
つもるとだにも
いまはおぼえず


月を見て
泊はせじと
漕行けば
知らぬ浪路に
夜ぞ明けにける
つきをみて
とまりはせじと
こぎゆけば
しらぬなみぢに
よぞあけにける


生ける身の
爲こそ憂けれ
それをだに
喞つ方とて
戀や死なまし
いけるみの
ためこそうけれ
それをだに
かこつかたとて
こひやしなまし


袖濡らす
人もや有ると
藻鹽草
形見のうらに
書きぞ集むる
そでぬらす
ひともやあると
もしほくさ
かたみのうらに
かきぞあつむる


無きが無く
有るが有るにも
非ぬ世を
見るこそ老の
涙なりけれ
なきがなく
あるがあるにも
あらぬよを
みるこそおいの
なみだなりけれ


老の波
猶志ば〳〵も
ありと見ば
あはれを懸けよ
玉津島姫
おいのなみ
なほしばしばも
ありとみば
あはれをかけよ
たまつしまひめ