宮城野の
木のしたふかき
夕露も
涙にまさる
秋やなからむ
みやぎのの
このしたふかき
ゆふつゆも
なみだにまさる
あきやなからむ
泪こそ
志のばゝよそに
見えず共
おさふる袖を
人や咎めむ
なみだこそ
しのばゝよそに
みえずとも
おさふるそでを
ひとやとがめむ
子規
ねぬ夜のかずは
思ひ志れ
たが里分かず
ねをばなく共
ほととぎす
ねぬよのかずは
おもひしれ
たがさとわかず
ねをばなくとも
み船こぐ
堀江の蘆に
おく露の
玉しくばかり
月ぞさやけき
みふねこぐ
ほりえのあしに
おくつゆの
たましくばかり
つきぞさやけき
В заливе Хориэ
Где прекрасные челны на вёслах
В камышах идут,
Лишь росы жемчугами выпадают,
Там ярок очень свет луны!
とまるべき
物とも見えぬ
木葉哉
時雨にそへて
嵐吹くなり
とまるべき
ものともみえぬ
このはかな
しぐれにそへて
あらしふくなり
伊勢島や
浦の干潟に
降る雪の
積りもあへず
汐やみつらむ
いせしまや
うらのひかたに
ふるゆきの
つもりもあへず
しほやみつらむ
На островах Исэ
На берегу бухты в отлив
Падает снег,
Но он не копится, —
Ведь нахлынет прилив.
捨遣らぬ
心からにや
出でざらむ
憂世の關は
もる人もなし
すてやらぬ
こころからにや
いでざらむ
うきよのせきは
もるひともなし
こしかたぞ
月日にそへて
忍ばるゝ
又廻りあふ
昔ならねば
こしかたぞ
つきひにそへて
しのばるる
まためぐりあふ
むかしならねば
異浦に
なびく烟も
ある物を
我がしたもえの
行く方ぞなき
ことうらに
なびくけぶりも
あるものを
わがしたもえの
ゆくかたぞなき
夏山の
茂みが志たに
瀧落ちて
ふもとすゞしき
水の音かな
なつやまの
しげみがしたに
たきおちて
ふもとすずしき
みづのおとかな
つらかりし
春の別は
忘られて
哀とぞ聞く
はつかりのこゑ
つらかりし
はるのわかれは
わすられて
あはれとぞきく
はつかりのこゑ
逢はでこそ
戀をいのりと
頼みしか
今はた何か
命なるべき
あはでこそ
こひをいのりと
たのみしか
いまはたなにか
いのちなるべき
住吉の
松にまじれる
玉垣の
あけもみどりも
年は經にけり
すみよしの
まつにまじれる
たまかきの
あけもみどりも
としはへにけり
今日までは
うきもつらきも
忍びきぬ
猶世を慕ふ
心弱さに
けふまでは
うきもつらきも
しのびきぬ
なほよをしたふ
こころよはさに
都出でゝ
今日越え初むる
逢坂の
關や旅寐の
始めなるらむ
みやこいでて
けふこえそむる
あふさかの
せきやたびねの
はじめなるらむ
生ける身の
爲と思ひし
逢ふ事も
今は命に
換へつべきかな
いけるみの
ためとおもひし
あふことも
いまはいのちに
かへつべきかな
登るべき
程はのぼりぬ
位山
これよりうへの
道ぞゆかしき
のぼるべき
ほどはのぼりぬ
くらゐやま
これよりうへの
みちぞゆかしき
ひとこゑに
あくるならひの
短夜も
待つに久しき
ほととぎすかな
ひとこゑに
あくるならひの
みぢかよも
まつにひさしき
ほととぎすかな
くるゝより
おなし空とも
みえぬ哉
秋の今宵の
山のはの月
くるるより
おなしそらとも
みえぬかな
あきのこよひの
やまのはのつき
はかなくも
猶なかき世と
頼む哉
おとろく程の
夢はみれ共
はかなくも
なほなかきよと
たのむかな
おとろくほどの
ゆめはみれとも
道のへの
はにふのこやの
ほとなきに
あまりてかゝる
夕かほの花
みちのへの
はにふのこやの
ほとなきに
あまりてかかる
ゆふかほのはな
ふけはこそ
荻の上葉も
かなしけれ
思へはつらし
秋のはつ風
ふけはこそ
をぎのうはばも
かなしけれ
おもへはつらし
あきのはつかぜ
風わたる
ゆらの湊の
夕しほに
影さしのほる
月のさやけさ
かぜわたる
ゆらのみなとの
ゆふしほに
かげさしのほる
つきのさやけさ
たかし山
夕こえくれて
ふもとなる
はまなの橋を
月にみる哉
たかしやま
ゆふこえくれて
ふもとなる
はまなのはしを
つきにみるかな
みたるとも
人しるらめや
かけろふの
岩かきふちの
底の玉もは
みたるとも
ひとしるらめや
かけろふの
いはかきふちの
そこのたまもは
ならはねは
逢よもおつる
涙かな
うきになれにし
袖の名残に
ならはねは
あふよもおつる
なみだかな
うきになれにし
そでのなごりに
あはさりし
むかしを今に
くらへてそ
うきはためしも
有としらるゝ
あはさりし
むかしをいまに
くらへてそ
うきはためしも
あるとしらるる
涙こそ
うつゝのうさに
あまりぬれ
夢にも今は
ねのみなかれて
なみだこそ
うつつのうさに
あまりぬれ
ゆめにもいまは
ねのみなかれて
契りしに
かはるつらさも
なけかれす
もとよりたのむ
心ならねは
ちぎりしに
かはるつらさも
なけかれす
もとよりたのむ
こころならねは
桜花
ちるをかきりと
思ふ身は
さくと見るまや
命なるらん
さくらばな
ちるをかきりと
おもふみは
さくとみるまや
いのちなるらん
時雨つゝ
さひしき宿の
板間より
もるにも過て
ぬるゝ袖哉
しぐれつつ
さひしきやどの
いたまより
もるにもすぎて
ぬるるそでかな
いにしへは
世のうきはかり
覚えしに
老をかさねて
身を歎く哉
いにしへは
よのうきはかり
おぼえしに
おいをかさねて
みをなげくかな
ねさめする
夜半の心の
まゝならは
思ひさためぬ
身とはなけかし
ねさめする
よはのこころの
ままならは
おもひさためぬ
みとはなけかし
露しけき
袖をはかさし
七夕の
涙ほすまの
秋の一夜に
つゆしけき
そでをはかさし
たなばたの
なみだほすまの
あきのひとよに
けふいくか
野山の嵐
身にしめて
故郷遠く
わかれきぬらん
けふいくか
のやまのあらし
みにしめて
ふるさととほく
わかれきぬらん
由良のとや
波路の末は
遥にて
有明の月に
わたる船人
ゆらのとや
なみぢのすゑは
はるかにて
ありあけのつきに
わたるふなびと
契りしも
つらさにかはる
中なれは
うきも心の
はてそまたるゝ
ちぎりしも
つらさにかはる
なかなれは
うきもこころの
はてそまたるる