都より
たづねてきけば
小倉山
西こそ秋と
しかもなくなれ
みやこより
たづねてきけば
をぐらやま
にしこそあきと
しかもなくなれ
藻鹽やく
煙な立てそ
須磨の蜑の
ぬるゝ袖にも
月は見る覽
もしほやく
けぶりなたてそ
すまのあまの
ぬるるそでにも
つきはみるらん
Дым от костров,
Где жгут из водорослей соль,
Не поднимайся!
Там рыбаки из Сума, должно быть,
Видят луну и в промокших рукавах...
堰きかぬる
泪はあらじ
もろ共に
忍ぶはおなじ
心なりとも
せきかぬる
なみだはあらじ
もろともに
しのぶはおなじ
こころなりとも
浦風の
はげしき磯の
松をみよ
つれなき色も
靡きやはせぬ
うらかぜの
はげしきいその
まつをみよ
つれなきいろも
なびきやはせぬ
さくら花
ちり殘るらし
吉野山
あらしの跡に
かゝる志ら雲
さくらはな
ちりのこるらし
よしのやま
あらしのあとに
かかるしらくも
螢とぶ
おぼろの清水
かすかにも
しらばや己が
もゆる思を
ほたるとぶ
おぼろのしみづ
かすかにも
しらばやおのが
もゆるおもひを
はては又
とよはた雲の
跡もなし
こよひの月の
秋のうら風
はてはまた
とよはたくもの
あともなし
こよひのつきの
あきのうらかぜ
野も山も
うづもれにけり
高圓の
尾上の宮の
雪のあけぼの
のもやまも
うづもれにけり
たかまとの
おのえのみやの
ゆきのあけぼの
立田河
氷のうへに
かけてけり
神代もきかぬ
雪のしらゆふ
たつたかは
こほりのうへに
かけてけり
かみよもきかぬ
ゆきのしらゆふ
おほのなる
三笠の森の
木綿襷
かけてもしらじ
袖の時雨は
おほのなる
みかさのもりの
ゆふだすき
かけてもしらじ
そでのしぐれは
とに斯に
思へばとても
かひもなし
苦しや契
あるに任せむ
とにかくに
おもへばとても
かひもなし
くるしやちぎり
あるにまかせむ
此暮の
つらき報も
みせてまし
またるゝ程の
我身なりせば
このくれの
つらきむかひも
みせてまし
またるるほどの
わがみなりせば
行きめぐる
年は限も
なき物を
暮るゝをはてと
何か思はむ
ゆきめぐる
としはかぎりも
なきものを
くるるをはてと
なにかおもはむ
よしさらば
此の度つきね
我が涙
又もあるべき
別ならねば
よしさらば
このたびつきね
わがなみだ
またもあるべき
わかれならねば
幾春に
井出の下帶
めぐり合ひて
咲く山吹の
花を見つらむ
いくはるに
ゐいでのしたおび
めぐりあひて
さくやまぶきの
はなをみつらむ
里遠き
山田の早苗
歸るさを
急がで取るや
いそぐなるらむ
さととほき
やまだのさなへ
かへるさを
いそがでとるや
いそぐなるらむ
吉野山
雪降り果てゝ
年暮れぬ
かすみし春は
昨日と思ふに
よしのやま
ゆきふりはてて
としくれぬ
かすみしはるは
きのふとおもふに
我が君は
斧の柄朽ちし
年を經て
民の七世の
末に逢ふまで
わがきみは
おののえくちし
としをへて
たみのななよの
すゑにあふまで
僞は
待たれしまでの
なさけにて
なか/\つらく
なる契哉
いつはりは
またれしまでの
なさけにて
なか/\つらく
なるちぎりかな
薦枕
たかせの淀の
鵜飼舟
ねなくにいく夜
かゞりさすらむ
こもまくら
たかせのよどの
うかひふね
ねなくにいくよ
かがりさすらむ
山ざくら
散りのまがひの
頃よりも
家路忘るゝ
花盛かな
やまざくら
ちりのまがひの
ころよりも
いへぢわするる
はなさかりかな
夜寒なる
野寺の鐘は
おとづれて
淺茅が霜と
澄める月かげ
よさむなる
のてらのかねは
おとづれて
あさぢがしもと
すめるつきかげ
浪を越す
尾花がもとに
よわるなり
夜寒の末の
松虫のこゑ
なみをこす
をはながもとに
よわるなり
よさむのすゑの
まつむしのこゑ
もみぢ葉も
誰が禊とて
立田山
秋風吹けば
ぬさと散るらむ
もみぢはも
たがみそぎとて
たつたやま
あきかぜふけば
ぬさとちるらむ
山の端に
暫し絶間の
ある程や
里までめぐる
時雨なるらむ
やまのはに
しばしたえまの
あるほどや
さとまでめぐる
しぐれなるらむ
浦路より
打ち越え來れば
たかし山
峯まで同じ
松風ぞ吹く
うらぢより
うちこえくれば
たかしやま
みねまでおなじ
まつかぜぞふく
朝夕に見ればこそ有れ住吉の浦よりをちの淡路しまやま
あしたゆふにみればこそあれすみよしのうらよりをちのあはぢしまやま
淺き瀬は
たゞも行くべき
澤田河
まきの繼橋
何わたすらむ
あさきせは
ただもゆくべき
さはたかは
まきのつぎはし
なにわたすらむ
徒らに
すぐすになれる
月日かな
さすが心の
隙はなけれど
いたづらに
すぐすになれる
つきひかな
さすがこころの
ひまはなけれど
神垣の
松も榊も
常磐なる
ためしかさねて
世をいのるかな
かみかきの
まつもさかきも
ときはなる
ためしかさねて
よをいのるかな
冬の夜は
塩風さむみ
かみしまの
いそまの浦に
千鳥なくなり
ふゆのよは
しほかぜさむみ
かみしまの
いそまのうらに
ちとりなくなり