忘れじな
又こむ春を
まつの戸に
明けくれ馴れし
花の面影
わすれじな
またこむはるを
まつのとに
あけくれなれし
はなのおもかげ
しら露の
玉江のあしの
よひ〳〵に
秋風ちかく
行く螢かな
しらつゆの
たまえのあしの
よひよひに
あきかぜちかく
ゆくほたるかな
荻のはに
風の音せぬ
秋もあらば
涙のほかに
月はみてまし
をぎのはに
かぜのおとせぬ
あきもあらば
なみだのほかに
つきはみてまし
わが宿の
菊のあさ露
色もをし
こぼさでにほへ
庭の秋かぜ
わがやどの
きくのあさつゆ
いろもをし
こぼさでにほへ
にはのあきかぜ
木がらしの
紅葉ふき志く
庭の面に
露も殘らぬ
秋の色かな
こがらしの
もみぢふきしく
にはのおもに
つゆものこらぬ
あきのいろかな
Северным ветром
Сдутые и наметённые
Листья осенние в саду,
Без росы, — вот цвет осени,
Которой не осталось.
とゞめばや
流れてはやき
年なみの
よどまぬ水は
柵もなし
とどめばや
ながれてはやき
としなみの
よどまぬみづは
しがらみもなし
Хотел бы я остановить
Текущие так быстро
Волны лет
И для неостановимых вод
Нет никакой плотины.
かすが野に
まだもえやらぬ
若ぐさの
煙みじかき
荻の燒原
かすがのに
まだもえやらぬ
わかぐさの
けぶりみじかき
をぎのやけはら
この里は
竹の葉わけて
もる月の
昔の世々の
影を戀ふらし
このさとは
たけのはわけて
もるつきの
むかしのよ々の
かげをこふらし
初瀬山
あらしの道の
遠ければ
いたりいたらぬ
鐘の音かな
はつせやま
あらしのみちの
とほければ
いたりいたらぬ
かねのおとかな
これのみと
伴なふ影も
さ夜ふけて
ひかりぞうすき
窓の灯
これのみと
ともなふかげも
さよふけて
ひかりぞうすき
まどのともしび
わたの原
漕ぎ出し舟の
友千鳥
八十島がくれ
こゑきこゆなり
わたのはら
こぎいでしふねの
ともちとり
やそしまがくれ
こゑきこゆなり
櫻花
をりしる人の
宿に植ゑて
幾かへりとも
春ぞかぎらぬ
さくらばな
をりしるひとの
やどにうゑて
いくかへりとも
はるぞかぎらぬ
吹く風は
宿りも志らず
谷川の
花の行くへを
ゆきて恨みむ
ふくかぜは
やどりもしらず
たにかはの
はなのゆくへを
ゆきてうらみむ
Ветер дующий,
Приюта не зная,
Завидует
Тому краю, куда уплывают
Лепестки по долинной реке.
夏草に
混るさ百合は
おのづから
秋にしられぬ
露や置く覽
なつくさに
まざるさゆりは
おのづから
あきにしられぬ
つゆやおくらん
С летней травою
Смешавшиеся лилии
Сами по себе,
Не осенней
Росой покрылись!
草まくら
ひと夜の露を
契にて
袖にわかるゝ
野べの月かげ
くさまくら
ひとよのつゆを
ちぎりにて
そでにわかるる
のべのつきかげ
Там, где провёл ночь,
На трав изголовье,
Росе поклявшийся
И и разлучённый с рукавом
Свет луны на поле.
訪ふ人も
嵐ふきそふ
深山べに
木の葉わけ來る
秋の夜の月
とふひとも
あらしふきそふ
みやまべに
このはわけくる
あきのよのつき
住み侘びて
池の芦間を
立つ鴨の
氷に殘る
あともはかなし
すみわびて
いけのあしまを
たつかもの
こほりにのこる
あともはかなし
富士のねや
絶えぬ烟の
行方だに
知らぬ思に
年の經ぬらむ
ふじのねや
たえぬけぶりの
ゆくへだに
しらぬおもひに
としのへぬらむ
哀れ又
末の松山
六十ぢにも
ちかづく年の
こえむとすらむ
あはれまた
すゑのまつやま
むそぢにも
ちかづくとしの
こえむとすらむ
あけわたる
とやまのすゑの
横雲に
はねうちかはし
かへるかりがね
あけわたる
とやまのすゑの
よこぐもに
はねうちかはし
かへるかりがね
吉野川
いはでうつろふ
山吹に
春の日數を
しらせがほなる
よしのかは
いはでうつろふ
やまぶきに
はるのひかずを
しらせがほなる
いにしへの
かたみとなしの
月の色も
三十くれぬる
秋そかなしき
いにしへの
かたみとなしの
つきのいろも
みそぢくれぬる
あきそかなしき
君かすむ
あたりの草に
やとしても
みせはや袖に
あまる白露
きみかすむ
あたりのくさに
やとしても
みせはやそでに
あまるしらつゆ
たのめても
むなしき空の
偽に
ふけゆく月を
待出るかな
たのめても
むなしきそらの
いつはりに
ふけゆくつきを
まちいづるかな
契をく
み山の秋の
あかつきを
猶うき物と
鹿そ鳴なる
ちぎりをく
みやまのあきの
あかつきを
なほうきものと
しかそなくなる
契あれは
暁ふかく
聞かねに
行末かけて
夢やさめなむ
ちぎりあれは
あかつきふかく
きくかねに
ゆくすゑかけて
ゆめやさめなむ
かけうつす
朝な〳〵の
谷水に
うき世はなれて
すむかひもなし
かけうつす
あさなあさなの
たにみづに
うきよはなれて
すむかひもなし
雲ふかき
岩のかけ道
日数へて
みやこの山の
遠さかりぬる
くもふかき
いはのかけみち
ひかぞへて
みやこのやまの
とほさかりぬる
梅かえに
こその跡とふ
鶯の
初音もさむく
淡雪そふる
うめかえに
こそのあととふ
うぐひすの
はつねもさむく
あはゆきそふる
なにと又
枕のちりを
はらふ覧
ならひなき身の
閨の秋風
なにとまた
まくらのちりを
はらふらむ
ならひなきみの
ねやのあきかぜ
橋姫の
待夜の月は
いたつらに
霧立こむる
うちの川なみ
はしひめの
まつよのつきは
いたつらに
きりたちこむる
うちのかはなみ
浅茅生の
をのゝ篠原
露なから
たか秋風に
乱そめけん
あさぢうの
をののしのはら
つゆなから
たかあきかぜに
みだそめけん
花とみて
けふやぬれなん
春雨に
ゆけとかけなき
嶺の白雲
はなとみて
けふやぬれなん
はるさめに
ゆけとかけなき
みねのしらくも
逢ことは
いなおほせ鳥の
鳴しより
秋風つらき
夕暮の空
あことは
いなおほせとりの
なしより
あきかぜつらき
ゆふぐれのそら
日をさふる
ならのひろはに
鳴蝉の
声より晴る
夕立の空
ひをさふる
ならのひろはに
なくせみの
こゑよりはるる
ゆふだちのそら
山里は
軒端の峰の
高けれは
まつの葉なから
月そ更行
やまざとは
のきはのみねの
たかけれは
まつのはなから
つきそふけゆく
けふもまた
むかしかたりに
なりぬとも
忘れやはせん
世ゝの末まて
けふもまた
むかしかたりに
なりぬとも
わすれやはせん
よゝのすゑまて