かけて見よ
君に心の
深き江に
引けるかひなき
浮根なれ共
かけてみよ
きみにこころの
ふかきえに
ひけるかひなき
うきねなれとも
おのづから
氷殘れる
程ばかり
絶え〴〵に行く
山がはの水
おのづから
こほりのこれる
ほどばかり
たえだえにゆく
やまがはのみづ
天のした
をさまりぬらし
三笠山
あまねくあふぐ
神の惠に
あめのした
をさまりぬらし
みかさやま
あまねくあふぐ
かみのめぐみに
心から
うきを忍びて
いとはぬや
歎くべき身の
報なるらむ
こころから
うきをしのびて
いとはぬや
なげくべきみの
むくひなるらむ
峰の雪
谷の氷も
とけなくに
都のかたは
霞たなひく
みねのゆき
たにのこほりも
とけなくに
みやこのかたは
かすみたなひく
Ни снег на вершинах,
Ни лёд в долинах
Хоть и не тают пока,
Около столицы уже
Тонкая стелется дымка.
猶さゆる
あらしは雪を
吹ませて
夕くれさむき
春雨の空
なほさゆる
あらしはゆきを
ふきまぜて
ゆふぐれさむき
はるさめのそら
И всё же подул
Холодный сильный ветер,
Смешанный со снегом.
Небо во время весеннего дождя,
Холодное в сумерках...
歸るさの
道もやまよふ
夕暮の
かすむ雲居に
消ゆる雁がね
かへるさの
みちもやまよふ
ゆふぐれの
かすむくもゐに
きゆるかりがね
ほとゝぎす
聲もたかねの
横雲に
鳴き捨てゝ行く
曙のそら
ほととぎす
こゑもたかねの
よこぐもに
なきすててゆく
あけぼののそら
うちむれて
麓をくだる
山人の
行くさきくるゝ
野邊の夕霧
うちむれて
ふもとをくだる
やまひとの
ゆくさきくるる
のべのゆふぎり
今夜しも
くもゐの月の
光そふ
秋の深山を
おもひこそやれ
いまよしも
くもゐのつきの
ひかりそふ
あきのみやまを
おもひこそやれ
旅衣
立つより袖は
なみだにて
むすぶ枕も
野邊のゆふつゆ
たびごろも
たつよりそでは
なみだにて
むすぶまくらも
のべのゆふつゆ
始なく
迷ひそめける
長き夜の
夢を此のたび
いかで覺さむ
はじめなく
まよひそめける
ながきよの
ゆめをこのたび
いかでさまさむ
いつまでか
行方定めぬ
うき雲の
浮きて立居に
物を思はむ
いつまでか
ゆくへさだめぬ
うきくもの
うきてたちゐに
ものをおもはむ
物思ふ
心のうちは
亂れ芦の
うきふし茂き
頃にも有るかな
ものおもふ
こころのうちは
みだれあしの
うきふししげき
ころにもあるかな
別れても
まだ夜は深き
鳥の音を
獨なごりの
床にきくかな
わかれても
まだよはふかき
とりのねを
ひとりなごりの
とこにきくかな
同じ世を
頼む方には
あらね共
なれし名殘ぞ
忘れかねぬる
おなじよを
たのむかたには
あらねとも
なれしなごりぞ
わすれかねぬる
天少女
袖ふる夜半の
風さむみ
月を雲居に
おもひやるかな
あめをとめ
そでふるよはの
かぜさむみ
つきをくもゐに
おもひやるかな
朝嵐は
外面の竹に
吹き荒れて
山のかすみも
春さむきころ
あさあらしは
そとものたけに
ふきあれて
やまのかすみも
はるさむきころ
山本の
里の續きに
咲く梅の
ひとへに世こそ
春になりぬれ
やまもとの
さとのつづきに
さくうめの
ひとへによこそ
はるになりぬれ
何となく
庭の梢は
霞み更けて
いるかた晴るゝ
山の端の月
なにとなく
にはのこずゑは
かすみふけて
いるかたはるる
やまのはのつき
何となき
草の花咲く
野邊の春
雲にひばりの
聲も長閑けき
なにとなき
くさのはなさく
のべのはる
くもにひばりの
こゑものどけき
見るまゝに
軒端の花は
咲き添ひて
春雨かすむ
遠の夕ぐれ
みるままに
のきはのはなは
さきそひて
はるさめかすむ
をちのゆふぐれ
眺め殘す
花の梢も
あらし山
風よりさきに
たづねつるかな
ながめのこす
はなのこずゑも
あらしやま
かぜよりさきに
たづねつるかな
花の上に
志ばし移ろふ
夕附日
入るともなしに
影きえに鳬
はなのうへに
しばしうつろふ
ゆふづくひ
いるともなしに
かげきえにけり
瀧つ瀬や
岩もとしろく
よる花は
流るとすれど
又かへるなり
たきつせや
いはもとしろく
よるはなは
ながるとすれど
またかへるなり
散りうける
山の岩根の
藤つゝじ
色に流るゝ
たに川のみづ
ちりうける
やまのいはねの
ふぢつつじ
いろにながるる
たにかはのみづ
かげ志げき
木の下やみの
暗き夜に
水の音して
水鷄鳴くなり
かげしげき
このしたやみの
くらきよに
みづのおとして
くひななくなり
草の末に
花こそ見えね
雲風も
野分に似たる
ゆふ暮のあめ
くさのすゑに
はなこそみえね
くもかぜも
のわきににたる
ゆふくれのあめ
むら雀
こゑする竹に
うつる日の
影こそ秋の
色になりぬれ
むらすずめ
こゑするたけに
うつるひの
かげこそあきの
いろになりぬれ
眞萩散る
庭の秋風
身にしみて
夕日の影ぞ
かべに消え行く
まはぎちる
にはのあきかぜ
みにしみて
ゆふひのかげぞ
かべにきえゆく
夕附日
岩根の苔に
影消えて
岡のやなぎは
あきかぜぞふく
ゆふづくひ
いはねのこけに
かげきえて
をかのやなぎは
あきかぜぞふく
きり〴〵す
聲はいづくぞ
草もなき
白洲の庭の
秋の夜の月
きりぎりす
こゑはいづくぞ
くさもなき
しらすのにはの
あきのよのつき
村雲に
隱れあらはれ
行く月の
晴れも曇りも
秋ぞかなしき
むらくもに
かくれあらはれ
ゆくつきの
はれもくもりも
あきぞかなしき
さすとなき
日影は軒に
移ろひて
木の葉にかゝる
庭の村雨
さすとなき
ひかげはのきに
うつろひて
このはにかかる
にはのむらさめ
山蔭や
夜のまの霧の
しめりより
又落ちやまぬ
木々の下露
やまかげや
よのまのきりの
しめりより
またおちやまぬ
き々のしたつゆ
もろくなる
桐の枯葉は
庭に落ちて
嵐にまじる
むら雨の音
もろくなる
きりのかれはは
にはにおちて
あらしにまじる
むらあめのおと
月の姿
なほ有明の
村雲に
ひとそゝぎする
しぐれをぞ見る
つきのすがた
なほありあけの
むらくもに
ひとそそぎする
しぐれをぞみる
むら〳〵に
小松まじれる
冬枯の
野べ凄じき
夕ぐれのあめ
むらむらに
こまつまじれる
ふゆがれの
のべすさまじき
ゆふぐれのあめ
寒き雨は
枯野の原に
降り志めて
山松風の
おとだにもせず
さむきあめは
かれののはらに
ふりしめて
やままつかぜの
おとだにもせず
鳥の聲
松の嵐の
おともせず
山志づかなる
ゆきのゆふぐれ
とりのこゑ
まつのあらしの
おともせず
やましづかなる
ゆきのゆふぐれ
殘りなく
今年も早く
くれ竹の
嵐にまじる
ゆきもすさまじ
のこりなく
ことしもはやく
くれたけの
あらしにまじる
ゆきもすさまじ
あれぬ日の
夕べの空は
長閑にて
柳の末も
はるちかく見ゆ
あれぬひの
ゆふべのそらは
のどかにて
やなぎのすゑも
はるちかくみゆ
さても我が
思ふ思よ
遂にいかに
何のかひなき
詠のみして
さてもわが
おもふおもひよ
つひにいかに
なにのかひなき
ながめのみして
怪しくも
心の中ぞ
亂れ行く
物思ふ身とは
なさじと思ふに
あやしくも
こころのなかぞ
みだれゆく
ものおもふみとは
なさじとおもふに
思ふ方に
聞きし人まの
一言よ
偖もいかにと
云ふ道もなし
おもふかたに
ききしひとまの
ひとことよ
さてもいかにと
いふみちもなし
夢かなほ
亂れそめにし
朝寢髮
又かきやらむ
末も知らねば
ゆめかなほ
みだれそめにし
あさねがみ
またかきやらむ
すゑもしらねば
とに斯に
晴れぬ思に
むきそめて
憂きより先に
物の悲しき
とにかくに
はれぬおもひに
むきそめて
うきよりさきに
もののかなしき
こと通ふ
道もさすがに
なからめや
只憂き中ぞ
忍ぶにはなる
ことかよふ
みちもさすがに
なからめや
ただうきなかぞ
しのぶにはなる
包む中の
重ねて聞かぬ
契こそ
まつ物からに
頼みがたけれ
つつむなかの
かさねてきかぬ
ちぎりこそ
まつものからに
たのみがたけれ
嬉しとも
一かたにやは
詠めらるゝ
まつ夜に向ふ
夕暮の空
うれしとも
ひとかたにやは
ながめらるる
まつよにむかふ
ゆふぐれのそら
暮にけり
天とぶ雲の
往來にも
今夜いかにと
傳へてしがな
くれにけり
あめとぶくもの
ゆききにも
いまよいかにと
つたへてしがな
頼め捨てゝ
とはぬはさこそ
易くとも
待つ心をば
思遣らなむ
たのめすてて
とはぬはさこそ
よすくとも
まつこころをば
おもひやらなむ
槇の戸を
風の鳴すも
あじきなし
人知れぬ夜の
稍更くる程
まきのとを
かぜのならすも
あじきなし
ひとしれぬよの
ややふくるほど
我も人も
哀れ難面き
夜な〳〵に
頼めもやまず
待ちも弱らず
われもひとも
あはれつれなき
よなよなに
たのめもやまず
まちもよはらず
云ひし儘の
今宵遠はぬ
今宵にて
又明日ならば
嬉しからまし
いひしままの
こよひとほはぬ
こよひにて
またあすならば
うれしからまし
此のくれの
心も知らで
徒らに
よそにもあるか
我が思ふ人
このくれの
こころもしらで
いたづらに
よそにもあるか
わがおもふひと
何となく
今夜さへこそ
待たれけれ
逢はぬ昨日の
心習ひに
なにとなく
いまよさへこそ
またれけれ
あはぬきのふの
こころならひに
とはぬ哉
訪べき物をい
かに有れば
昨日も今日も
待たず來ぬ覽
とはぬかな
とべきものをい
かにあれば
きのふもけふも
またずこぬらん
きぬ〴〵を
急ぐ別は
夜深くて
また寢久しき
あかつきの床
きぬ〴〵を
いそぐわかれは
よふかくて
またねひさしき
あかつきのとこ
其儘の
夢の名殘の
さめぬ間に
又同じくば
逢ひ見てしがな
それままの
ゆめのなごりの
さめぬまに
またおなじくば
あひみてしがな
なるゝ間の
哀に遂に
ひかれ來て
厭ひ難くぞ
今はなりぬる
なるるまの
あはれにつひに
ひかれきて
いとひかたくぞ
いまはなりぬる
習ひあらば
げにもしやとも
頼まゝし
僞としも
見えぬ言の葉
ならひあらば
げにもしやとも
たのままし
いつはりとしも
みえぬことのは
思ふ方に
よし唯凡べて
押籠めて
さのみは人の
心をば見じ
おもふかたに
よしただすべて
おしこめて
さのみはひとの
こころをばみじ
憂きも契
つらきも契
よしさらば
皆哀れにや
思ひなさまし
うきもちぎり
つらきもちぎり
よしさらば
みなあはれにや
おもひなさまし
大方は
頼むべくしも
なき人の
憂からぬにこそ
思侘びぬれ
おほかたは
たのむべくしも
なきひとの
うからぬにこそ
おもひわびぬれ
その行くへ
きけば涙ぞ
先落つる
憂さ戀しさも
思分かねど
そのゆくへ
きけばなみだぞ
さきおつる
うさこひしさも
おもひわかねど
今日はもし
人もや我を
思ひ出づる
我も常より
人の戀しき
けふはもし
ひともやわれを
おもひいづる
われもつねより
ひとのこひしき
今しもあれ
人の詠も
かゝらじを
消ゆるも惜しき
雲の一村
いましもあれ
ひとのながめも
かからじを
きゆるもをしき
くものひとむら
大方の
世は安げなし
人はうし
我が身孰くに
暫し置かまし
おほかたの
よはやすげなし
ひとはうし
わがみいづくに
しばしおかまし
かはり立つ
人の心の
色や何
恨みむとすれば
その節となき
かはりたつ
ひとのこころの
いろやなに
うらみむとすれば
そのふしとなき
一筋に
憂きよりも猶
憂かりけり
有りしにかはる
人の情は
ひとすじに
うきよりもなほ
うかりけり
ありしにかはる
ひとのなさけは
我のみは
憂さをも強て
忍ぶとも
變るが上の
人はいつまで
われのみは
うさをもつよて
しのぶとも
かはるがうへの
ひとはいつまで
晴れずのみ
心に物を
思ふ間に
萩の花咲く
あきも來にけり
はれずのみ
こころにものを
おもふまに
はぎのはなさく
あきもきにけり
すべて唯
人になれじと
こりぬるも
いつの爲ぞと
哀なる哉
すべてただ
ひとになれじと
こりぬるも
いつのためぞと
あはれなるかな
今は早と
思ひしことも
幾へだて
隔つるはては
ことのはもなし
いまははやと
おもひしことも
いくへだて
へだつるはては
ことのはもなし
猶暫し
此の一ふしは
恨みはてじ
なじかと思ふ
情もぞ見る
なほしばし
このひとふしは
うらみはてじ
なじかとおもふ
なさけもぞみる
立歸り
これも夢にて
又絶えば
ありしにまさる
物や思はむ
たちかへり
これもゆめにて
またたえば
ありしにまさる
ものやおもはむ
さらばとて
恨をやめて
見る中の
うきつま〴〵に
頼兼ねぬる
さらばとて
うらみをやめて
みるなかの
うきつまづまに
たのみかねぬる
見る人も
物を思はぬ
樣なれば
心のうちを
たれにうれへむ
みるひとも
ものをおもはぬ
さまなれば
こころのうちを
たれにうれへむ
厭ひ惜み
我のみ身を
ば憂ふれど
戀ふなる果を
知る人もなし
いとひをし
みわれのみみを
ばうふれど
こふなるはてを
しるひともなし
さま〴〵の
我が慰めも
事つきて
今はと弱る
程ぞかなしき
さまざまの
わがなぐさめも
ことつきて
いまはとよはる
ほどぞかなしき
月のよは
雲の夕も
みな悲し
その夜は逢はぬ
時しなければ
つきのよは
くものゆふべも
みなかなし
そのよはあはぬ
ときしなければ
遂にさても
恨の中に
過ぎにしを
思ひ出づるぞ
思出もなき
つひにさても
うらみのなかに
すぎにしを
おもひいづるぞ
おもひいでもなき
知られじな
憂きみがくれの
菖蒲草
我のみ長き
音には泣く共
しられじな
うきみがくれの
あやめくさ
われのみながき
ねにはなくとも
よそなりし
其夜に人は
歸れども
身は改めぬ
物をこそ思へ
よそなりし
それよにひとは
かへれども
みはあらためぬ
ものをこそおもへ
人の捨てし
哀を獨り
身にとめて
歎き殘れる
はてぞ久しき
ひとのすてし
あはれをひとり
みにとめて
なげきのこれる
はてぞひさしき
常よりも
哀なりしを
限にて
此世ながらは
げにさてぞかし
つねよりも
あはれなりしを
かぎりにて
このよながらは
げにさてぞかし
時知らぬ
宿の軒端の
花ざかり
君だにとへな
又たれをかは
ときしらぬ
やどののきはの
はなざかり
きみだにとへな
またたれをかは
かくしてぞ
昨日も暮れし
山の端の
入日のあとに
鐘の聲々
かくしてぞ
きのふもくれし
やまのはの
いりひのあとに
かねのこゑごゑ
山合に
おりしづまれる
白雲の
暫しと見れば
早消えにけり
やまあひに
おりしづまれる
しらくもの
しばしとみれば
はやきえにけり
沈み果てぬ
入日は浪の
上にして
汐干に清き
いそのまつ原
しずみはてぬ
いりひはなみの
うへにして
しほほしにきよき
いそのまつはら
思ひやる
苔の衣の
露かけて
もとのなみだの
袖や朽ちなむ
おもひやる
こけのころもの
つゆかけて
もとのなみだの
そでやくちなむ
忘られぬ
昔語りも
押しこめて
遂にさてやの
それぞ悲しき
わすられぬ
むかしかたりも
おしこめて
つひにさてやの
それぞかなしき
今日暮れぬ
明日ありとても
幾程の
あだなる世にぞ
憂きも慰む
けふくれぬ
あすありとても
いくほどの
あだなるよにぞ
うきもなぐさむ
時しもあれ
嶺の霞は
たなびけど
猶山さむし
雪のむらぎえ
ときしもあれ
みねのかすみは
たなびけど
なほやまさむし
ゆきのむらぎえ
咲き散るも
知る人も無き
宿の花
いつの春まで
御幸待ちけむ
さきちるも
しるひともなき
やどのはな
いつのはるまで
みゆきまちけむ
早晩と
冬をや告ぐる
はつ時雨
庭の木の葉に
音づれて行く
いつしかと
ふゆをやつぐる
はつしぐれ
にはのこのはに
おとづれてゆく
人心
淺きにまさる
おもひ川
浮瀬に消えぬ
みづからもうし
ひとこころ
あさきにまさる
おもひかは
うきせにきえぬ
みづからもうし
村雨の
はるゝ夕日の
影もりて
木の下きよき
露のいろかな
むらさめの
はるるゆふひの
かげもりて
このしたきよき
つゆのいろかな
さやかなる
月さへ疎く
成ぬべし
涙の外に
見る夜なければ
さやかなる
つきさへうとく
なりぬべし
なみだのほかに
みるよなければ
更行は
真木の尾山に
霧晴て
月影清し
うちの川波
ふけゆけは
まきのをやまに
きりはれて
つきかげきよし
うちのかはなみ
峰の霞
ふもとの草の
うすみとり
野山をかけて
春めきにけり
ねのかすみ
ふもとのくさの
うすみどり
のやまをかけて
はるめきにけり
木ゝの心
花ちかゝらし
昨日今日
世はうすくもり
春雨のふる
きゝのこころ
はなちかからし
きのふけふ
よはうすくもり
はるさめのふる
遠近の
山はさくらの
花さかり
野へは霞に
うくひすのこゑ
をちこちの
やまはさくらの
はなさかり
のへはかすみに
うくひすのこゑ
おりかさす
道ゆき人の
けしきにて
世はみな花の
盛をそしる
おりかさす
みちゆきひとの
けしきにて
よはみなはなの
さかりをそしる
山もとの
鳥の声より
明そめて
花もむら〳〵
色そみえ行
やまもとの
とりのこゑより
あけそめて
はなもむらむら
いろそみえゆく
入逢の
声する山の
陰暮て
花の木のまに
月出にけり
いりあひの
こゑするやまの
かげくれて
はなのこのまに
つきいでにけり
すきうつる
時と風とそ
うらめしき
花の心は
ちらんともせし
すきうつる
ときとかぜとそ
うらめしき
はなのこころは
ちらんともせし
うすみとり
ましるあふちの
花みれは
面影にたつ
春の藤浪
うすみとり
ましるあふちの
はなみれは
おもかげにたつ
はるのふぢなみ
郭公
空に声して
卯の花の
垣ねもしろく
月そ出ぬる
ほととぎす
そらにこゑして
うのはなの
かきねもしろく
つきそいでぬる
風にきゝ
雲になかむる
夕暮の
秋のうれへそ
たへす成行
かぜにきき
くもになかむる
ゆふぐれの
あきのうれへそ
たへすなりゆく
しほりつる
風はまかきに
しつまりて
小萩かうへに
雨そゝくなり
しほりつる
かぜはまかきに
しつまりて
こはぎかうへに
あめそそくなり
尾花のみ
庭になひきて
秋風の
ひゝきは峰の
梢にそきく
をはなのみ
にはになひきて
あきかぜの
ひゝきはみねの
こずゑにそきく
うす霧の
はるゝ朝けの
庭みれは
草にあまれる
秋の白露
うすきりの
はるるあさけの
にはみれは
くさにあまれる
あきのしらつゆ
秋の雨の
物さむくふる
夕暮の
空にしほれて
渡る雁金
あきのあめの
ものさむくふる
ゆふぐれの
そらにしほれて
わたるかりがね
ふりまさる
あま夜の閨の
きり〳〵す
絶〳〵になる
声も悲しき
ふりまさる
あまよのねやの
きりぎりす
たえだえになる
こゑもかなしき
空きよく
月さしのほる
山の端に
とまりて消る
雲の一村
そらきよく
つきさしのほる
やまのはに
とまりてきゆる
くものひとむら
秋風は
軒端の松を
しほる夜に
月は雲ゐを
のとかにそ行
あきかぜは
のきはのまつを
しほるよに
つきはくもゐを
のとかにそゆく
夕暮の
庭すさましき
秋風に
梧の葉おちて
村雨そふる
ゆふぐれの
にはすさましき
あきかぜに
きりのはおちて
むらさめそふる
紅葉はの
おりを忘ぬ
なさけにも
なれみし雲の
うへや恋しき
もみぢはの
おりをわすれぬ
なさけにも
なれみしくもの
うへやこひしき
風のをとの
はけしくわたる
梢より
むら雲さむき
三か月の空
かぜのをとの
はけしくわたる
こずゑより
むらくもさむき
みかつきのそら
河千鳥
月夜をさむみ
いねすあれや
ねさむることに
声の聞ゆる
かはちとり
つきよをさむみ
いねすあれや
ねさむることに
こゑのきこゆる
月影は
森のこすゑに
かたふきて
うす雪しろし
有明の庭
つきかげは
もりのこすゑに
かたふきて
うすゆきしろし
ありあけのには
涙川
うき名はかりを
なかしても
身はうたかたの
まつやきえなん
なみだかは
うきなはかりを
なかしても
みはうたかたの
まつやきえなん
いはしたゝ
しらはさすかに
思ひなす
なくさめにこそ
かゝる頼みを
いはしたた
しらはさすかに
おもひなす
なくさめにこそ
かかるたのみを
をとせぬか
うれしきおりも
有けるよ
頼みさためて
後の夕暮
をとせぬか
うれしきおりも
ありけるよ
たのみさためて
のちのゆふぐれ
頼めねは
人やはうきと
思ひなせと
こよひもつゐに
又明にけり
たのめねは
ひとやはうきと
おもひなせと
こよひもつゐに
またあけにけり
つねよりも
哀なりつる
名残しも
つらきかたさへ
けふはそひぬる
つねよりも
あはれなりつる
なごりしも
つらきかたさへ
けふはそひぬる
今朝のなこり
はれぬ夕の
なかめより
こよひもさてや
思ひ明さん
けさのなこり
はれぬゆふべの
なかめより
こよひもさてや
おもひあかさん
常よりも
涙かきくらす
おりしもあれ
草木をみるも
雨の夕暮
つねよりも
なみだかきくらす
おりしもあれ
くさきをみるも
あめのゆふぐれ
思ひけるか
さすかあはれにと
思ふより
うきにまさりて
涙そおつる
おもひけるか
さすかあはれにと
おもふより
うきにまさりて
なみだそおつる
玉章に
たゝひと筆と
むかへとも
おもふ心を
とゝめかねぬる
たまづさに
たたひとふでと
むかへとも
おもふこころを
ととめかねぬる
つらきをは
さらにもいはす
人心
あはれなるにも
物をこそ思へ
つらきをは
さらにもいはす
ひとこころ
あはれなるにも
ものをこそおもへ
鳥の声
さへつりつくす
春日影
くらしかたみに
物をこそ思へ
とりのこゑ
さへつりつくす
はるひかげ
くらしかたみに
ものをこそおもへ
人やかはる
我心にや
頼みまさる
はかなきことも
たゝつねにうき
ひとやかはる
わがこころにや
たのみまさる
はかなきことも
たたつねにうき
かくはかり
うきかうへたに
哀なる
あはれなりせは
いかゝあらまし
かくはかり
うきかうへたに
あはれなる
あはれなりせは
いかかあらまし
よはりはつる
今はのきはの
思ひには
うさも哀に
なるにそ有ける
よはりはつる
いまはのきはの
おもひには
うさもあはれに
なるにそありける
物ことに
うれへにもるゝ
色もなし
すへてうき世を
あきの夕暮
ものことに
うれへにもるる
いろもなし
すへてうきよを
あきのゆふぐれ
さ夜ふかき
軒はの峰に
月は入て
くらきひはらに
嵐をそきく
さよふかき
のきはのみねに
つきはいりて
くらきひはらに
あらしをそきく
里〳〵の
鳥の初音は
聞ゆれと
また月たかき
暁の空
さとさとの
とりのはつねは
きこゆれと
またつきたかき
あかつきのそら
みるまゝに
山は消ゆく
あま雲の
かゝりもしける
まきの一もと
みるままに
やまはきえゆく
あまくもの
かかりもしける
まきのひともと
くらき夜の
山松風は
さはけとも
梢の空に
星そのとけき
くらきよの
やままつかぜは
さはけとも
こずゑのそらに
ほしそのとけき
明しかね
窓くらき夜の
雨のをとに
ねさめの心
いくしほれしつ
あかしかね
まどくらきよの
あめのをとに
ねさめのこころ
いくしほれしつ
いにしへを
かくる涙の
玉つさの
かたみの声に
ねをそゝへぬる
いにしへを
かくるなみだの
たまつさの
かたみのこゑに
ねをそそへぬる
思はさりし
ふちの袂の
秋の露
かゝる契りの
哀をそしる
おもはさりし
ふちのたもとの
あきのつゆ
かかるちぎりの
あはれをそしる
心うつる
なさけいつれと
わきかねぬ
花時鳥
月ゆきのとき
こころうつる
なさけいつれと
わきかねぬ
はなほととぎす
つきゆきのとき
過てゆく
月日をかへす
物にあらは
恋しきかたを
又も見てまし
すぎてゆく
つきひをかへす
ものにあらは
こひしきかたを
またもみてまし
かりそめに
心の宿と
なれる身を
ある物かほに
なに思ふらん
かりそめに
こころのやどと
なれるみを
あるものかほに
なにおもふらん