契ありて
めぐり逢ひぬる
同じ世に
命のうちの
道は隔つな
ちぎりありて
めぐりあひぬる
おなじよに
いのちのうちの
みちはへだつな
我ればかり
命にかへて
歎く共
惜まれぬべき
身とは頼まじ
わればかり
いのちにかへて
なげくとも
をしまれぬべき
みとはたのまじ
いかに我が
結び置きける
元結の
霜より先に
變りはつらむ
いかにわが
むすびおきける
もとゆひの
しもよりさきに
かはりはつらむ
夜の程に
つもりにけらし
昨日まで
見ざりし山の
峰の白雪
よのほどに
つもりにけらし
きのふまで
みざりしやまの
みねのしらゆき
墨ぞめの
袂は春の
よそなれば
夏立ちかはる
色だにもなし
すみぞめの
たもとははるの
よそなれば
なつたちかはる
いろだにもなし
吹きよする
風にまかせて
池水の
汀にあまる
花の志らなみ
ふきよする
かぜにまかせて
いけみづの
みぎはにあまる
はなのしらなみ
詠むべき
其方の山も
かき暮れて
都も雪の
晴るゝ間もなし
ながむべき
そなたのやまも
かきくれて
みやこもゆきの
はるるまもなし
和歌の浦に
沈み果てにし
捨舟も
今人並の
世にひかれつゝ
わかのうらに
しずみはてにし
すてふねも
いまひとなみの
よにひかれつつ