春きぬと
思ひなしぬる
朝けより
空も霞の
色に成ゆく
はるきぬと
おもひなしぬる
あさけより
そらもかすみの
いろになりゆく
"Весна пришла!", —
Сомнения пропали,
Ведь с самого рассвета
И небеса стали приобретать
Цвет туманной дымки!
長閑にも
やかて成行
けしきかな
昨日の日影
けふのはるさめ
のどかにも
やがてなりゆく
けしきかな
きのふのひかげ
けふのはるさめ
Может, спокойно сейчас,
Но меняется быстро
Природа вокруг —
Вчера светило солнце,
А ныне уж дождь весенний!
かすみゆく
波路の舟も
ほのかなり
まつらか沖の
春の明ほの
かすみゆく
なみぢのふねも
ほのかなり
まつらがおきの
はるのあけぼの
Виднеется смутно
Сквозь дымку
Корабль в пути.
Весенний рассвет
На море близ Мацура.
春とだに
まだしら雪の
ふるさとは
嵐ぞさむき
三吉野の山
はるとだに
まだしらゆきの
ふるさとは
あらしぞさむき
みよしののやま
さくら花
はやさかりなり
もゝ敷の
大宮人は
今かざすらし
さくらはな
はやさかりなり
ももしきの
おほみやひとは
いまかざすらし
散りまよふ
面影をだに
おもひやれ
尋ねぬ宿の
花の志ら雪
ちりまよふ
おもかげをだに
おもひやれ
たづねぬやどの
はなのしらゆき
うつろふも
心づからの
花ならば
さそふ嵐を
いかゞ恨みむ
うつろふも
こころづからの
はなならば
さそふあらしを
いかがうらみむ
月影を
霞にこめて
山の端の
まだ明けやらぬ
しのゝめの空
つきかげを
かすみにこめて
やまのはの
まだあけやらぬ
しののめのそら
頼めおく
時とはなしに
郭公
ゆふべはわきて
猶まさるらむ
たのめおく
ときとはなしに
ほととぎす
ゆふべはわきて
なほまさるらむ
つれなさを
月にぞかこつ
郭公
まつにむなしき
有明のそら
つれなさを
つきにぞかこつ
ほととぎす
まつにむなしき
ありあけのそら
村さめに
桐の葉落つる
庭の面の
夕べの秋を
問ふ人もがな
むらさめに
きりのはおつる
にはのおもの
ゆふべのあきを
とふひともがな
Осенним вечером,
Когда под дождём
Опадают
Листы павлонии,
Хочу, чтоб кто-то навестил меня!
おどろかす
砧の音に
小夜衣
かへすほどなき
うたゝねの夢
おどろかす
きぬたのおとに
さよころも
かへすほどなき
うたたねのゆめ
霜深く
うつろひ行くを
秋の色の
かぎりと見する
白菊の花
しもふかく
うつろひゆくを
あきのいろの
かぎりとみする
しらきくのはな
五十鈴川
絶えぬ流れの
底きよみ
神代かはらず
澄める月影
いすずがは
たえぬながれの
そこきよみ
かみよかはらず
すめるつきかげ
せめて唯
僞とだに
思はゞや
頼めてふくる
よはのつらさを
せめてただ
いつはりとだに
おもはばや
たのめてふくる
よはのつらさを
月と見て
よるもやこえむ
夕ぐれの
籬の山に
さけるうの花
つきとみて
よるもやこえむ
ゆふぐれの
まがきのやまに
さけるうのはな
ふく風の
うきになしてや
かこたまし
夕はまさる
秋の哀を
ふくかぜの
うきになしてや
かこたまし
ゆふべはまさる
あきのあはれを
今日かはる
袖の色にも
露きえじ
あはれや更に
おき所なき
けふかはる
そでのいろにも
つゆきえじ
あはれやさらに
おきところなき
玉しきの
にはのくれ竹
いく千世も
かはらぬ春の
鶯のこゑ
たましきの
にはのくれたけ
いくちよも
かはらぬはるの
うぐひすのこゑ
時過ぎて
更に花さく
藤波の
たち榮えゆく
今日にも有る哉
ときすぎて
さらにはなさく
ふぢなみの
たちさかえゆく
けふにもあるかな
菖蒲草
引き比べても
仕ふべき
ためしは長き
世にや殘らむ
あやめくさ
ひきくらべても
つかふべき
ためしはながき
よにやのこらむ
霞立ち
氷も解けぬ
天つちの
こゝろも春を
おしてうくれば
かすみたち
こほりもとけぬ
あまつちの
こころもはるを
おしてうくれば
夕ぐれの
霞のきはに
飛ぶ鳥の
つばさも春の
色に長閑けき
ゆふぐれの
かすみのきはに
とぶとりの
つばさもはるの
いろにのどけき
春邊とは
思ふ物から
風まぜに
み雪散る日は
いとも寒けし
はるべとは
おもふものから
かぜまぜに
みゆきちるひは
いともさむけし
春の色は
柳のうへに
見え初めて
かすむ物から
空ぞ寒けき
はるのいろは
やなぎのうへに
みえそめて
かすむものから
そらぞさむけき
道のべや
竹吹く風の
寒けきに
春をまぜたる
梅が香ぞする
みちのべや
たけふくかぜの
さむけきに
はるをまぜたる
うめがかぞする
いつはとも
心に時は
分かなくに
遠の柳の
はるになるいろ
いつはとも
こころにときは
わかなくに
とほのやなぎの
はるになるいろ
枝もなく
咲き重なれる
花の色に
梢も重き
はるのあけぼの
えだもなく
さきかさなれる
はなのいろに
こずゑもおもき
はるのあけぼの
花の上の
暮れ行く空に
響きゝて
聲に色ある
いりあひの鐘
はなのうへの
くれゆくそらに
ひひききて
こゑにいろある
いりあひのかね
植渡す
我が世の花も
はるは經ぬ
まして舊木の
昔をぞ思ふ
うゑわたす
わがよのはなも
はるはへぬ
ましてふるきの
むかしをぞおもふ
頼めこし
昨日の櫻
ふりぬとも
とはゞやあすの
雪の木の本
たのめこし
きのふのさくら
ふりぬとも
とはばやあすの
ゆきのこのもと
小夜ふかく
月はかすみて
水落つる
木陰の池に
蛙鳴くなり
さよふかく
つきはかすみて
みづおつる
きかげのいけに
かはづなくなり
霞渡る
とほつ山べの
春の暮
なにのもよほす
哀れともなき
かすみわたる
とほつやまべの
はるのくれ
なにのもよほす
あはれともなき
郭公
なごりしばしの
ながめより
鳴きつる峰は
雲あけぬなり
ほととぎす
なごりしばしの
ながめより
なきつるみねは
くもあけぬなり
月や出づる
星の光の
變るかな
凉しきかぜの
夕やみのそら
つきやいづる
ほしのひかりの
かはるかな
すずしきかぜの
ゆふやみのそら
То ль вышла луна?
Или свет звёзд
Стал каким-то иным?..
Но в ночной темноте
Ветер такой прохладный.
すゞみつる
數多の宿も
靜まりて
夜更けて白き
道のべの月
すずみつる
あまたのやども
しづまりて
よふけてしらき
みちのべのつき
Спала жара,
И во многих домах
Теперь тишина,
Стемнела ночь, и над дорогой
Сияет белая луна!
鳴く聲も
高き梢の
せみのはの
薄き日影に
あきぞちかづく
なくこゑも
たかきこずゑの
せみのはの
うすきひかげに
あきぞちかづく
庭の面
に夕べの風
は吹きみち
て高き薄の
すゑぞみだるゝ
にはのおも
にゆふべのかぜ
はふきみち
てたかきうすの
すゑぞみだるる
見わたせば
裾野の尾花
吹きしきて
夕暮はげし
山颪のかぜ
みわたせば
すそののをはな
ふきしきて
ゆふぐれはげし
やまおろしのかぜ
こゝにのみ
あはれやとまる
秋風の
荻のうへこす
夕暮の宿
ここにのみ
あはれやとまる
あきかぜの
をぎのうへこす
ゆふぐれのやど
秋風は
遠き草葉を
わたるなり
夕日の影は
野邊はるかにて
あきかぜは
とほきくさばを
わたるなり
ゆふひのかげは
のべはるかにて
庭深き
柳の枯葉
散りみちて
かきほあれたる
あきかぜの宿
にはふかき
やなぎのかれは
ちりみちて
かきほあれたる
あきかぜのやど
朝ぼらけ
霧の晴れ間の
絶え〴〵に
幾列過ぎぬ
天つ雁がね
あさぼらけ
きりのはれまの
たえだえに
いくつらすぎぬ
あまつかりがね
打ちむれて
あまとぶ雁の
つばさまで
夕に向ふ
色ぞ悲しき
うちむれて
あまとぶかりの
つばさまで
ゆふべにむかふ
いろぞかなしき
連れてとぶ
數多の翅
横切りて
月の下行く
夜半のかりがね
つれてとぶ
あまたのつばさ
よこぎりて
つきのしたゆく
よはのかりがね
にほひ志らみ
月の近づく
山の端の
光に弱る
いなづまの影
にほひしらみ
つきのちかづく
やまのはの
ひかりによはる
いなづまのかげ
軒近き
松原山の
あきかぜに
夕ぐれきよく
つきいでにけり
のきちかき
まつはらやまの
あきかぜに
ゆふぐれきよく
つきいでにけり
山風も
時雨になれる
秋の日に
ころもやうすき
遠のたび人
やまかぜも
しぐれになれる
あきのひに
ころもやうすき
とほのたびひと
色ふかき
宿の紅葉の
一枝に
折知るひとの
なさけをぞ見る
いろふかき
やどのもみぢの
ひとえだに
をりしるひとの
なさけをぞみる
夕日うすき
枯葉の淺茅
志たすぎて
それかと弱き
虫の一聲
ゆふひうすき
かれはのあさぢ
したすぎて
それかとよはき
むしのひとこゑ
吹分くる
木の葉の下も
木のはてに
庭見せかぬる
山颪の風
ふきわくる
このはのしたも
きのはてに
にはみせかぬる
やまおろしのかぜ
梢には
夕あらし吹きて
寒き日の
雪げの雲に
かり鳴き渡る
こずゑには
ゆふあらしふきて
さむきひの
ゆきげのくもに
かりなきわたる
降り積る
色より月の
かげになりて
夕暮見えぬ
庭の志ら雪
ふりつもる
いろよりつきの
かげになりて
ゆふぐれみえぬ
にはのしらゆき
廻り逢ふ
同じ月日は
思ひいづや
四とせ舊りに
しゆきの曙
めぐりあふ
おなじつきひは
おもひいづや
よつとせふりに
しゆきのあけぼの
忍ぶらし
少女が袖の
しら雪も
降りにし跡の
今日のおも影
しのぶらし
をとめがそでの
しらゆきも
ふりにしあとの
けふのおもかげ
自ら
垣根のくさも
あをむなり
霜の下にも
はるやちかづく
おのづから
かきねのくさも
あをむなり
しものしたにも
はるやちかづく
思取り
恨果てゝも
かひぞなき
頼むれば又
待たれのみして
おもひとり
うらみはてても
かひぞなき
たのむればまた
またれのみして
とはずなる
今より斯や
隔て行かむ
今夜計は
さて飽かず共
とはずなる
いまよりかくや
へだてゆかむ
こよひばかりは
さてあかずとも
かはり行く
昨日の哀れ
今日の恨み
人に心の
定めなの世や
かはりゆく
きのふのあはれ
けふのうらみ
ひとにこころの
さだめなのよや
泪だに
思ふが程は
こぼれぬよ
あまりくだくる
いまの心に
なみだだに
おもふがほどは
こぼれぬよ
あまりくだくる
いまのこころに
思ひ〳〵
泪とまでに
なりぬるを
あさくも人の
慰むるかな
おもひおもひ
なみだとまでに
なりぬるを
あさくもひとの
なぐさむるかな
伊勢の海
渚に拾ふ
たま〳〵も
袖干す間なき
物をこそ思へ
いせのうみ
なぎさにひろふ
たまたまも
そでほすまなき
ものをこそおもへ
戀しさに
なり立つ中の
詠めには
面影ならぬ
草も木もなし
こひしさに
なりたつなかの
ながめには
おもかげならぬ
くさもきもなし
それをだに
思ひさまさじ
戀しさの
進むまゝなる
夕暮の空
それをだに
おもひさまさじ
こひしさの
すすむままなる
ゆふぐれのそら
いとゞこそ
頼み所も
なくならめ
憂きには暫し
思ひ定めじ
いとどこそ
たのみところも
なくならめ
うきにはしばし
おもひさだめじ
思ふ人
今宵の月を
いかに見るや
常にしも非ぬ
色に悲しき
おもふひと
こよひのつきを
いかにみるや
つねにしもあらぬ
いろにかなしき
此暮に
我が戀ひをれば
寒き雁
鳴つゝ行くは
妹がりか行く
このくれに
わがこひをれば
さむきかり
なきつつゆくは
いもがりかゆく
憂き事を
爭でなべてに
思做さむ
嬉しくとても
幾程のよに
うきことを
いかでなべてに
おもなさむ
うれしくとても
いくほどのよに
厭ふしも
喞ち顏にや
思ひなさむ
難面しとだに
懸けし命を
いとふしも
かこちかほにや
おもひなさむ
つれなしとだに
かけしいのちを
思ひ連ね
さも憂かりけると
思ふ後に
又戀しきぞ
理もなき
おもひつらね
さもうかりけると
おもふのちに
またこひしきぞ
ことはりもなき
例なく
つらき限や
このきはと
思ひし上の
憂きもありけり
ためしなく
つらきかぎりや
このきはと
おもひしうへの
うきもありけり
鳥の行く
夕の空よ
その夜には
我もいそぎし
方はさだめき
とりのゆく
ゆふべのそらよ
そのよには
われもいそぎし
かたはさだめき
猶も世に
あるやとかくる
人傳よ
うき身の憂きを
更に知れとや
なほもよに
あるやとかくる
ひとつたよ
うきみのうきを
さらにしれとや
面影の
とまる名殘よ
それだにも
人の許せる
形見ならぬを
おもかげの
とまるなごりよ
それだにも
ひとのもとせる
かたみならぬを
思くたす
うさも哀も
幾返り
世はあらぬ世の
身は元の身に
おもくたす
うさもあはれも
いくかへり
よはあらぬよの
みはもとのみに
哀にも
己れうけてや
霞むらむ
誰がなす時の
春ならなくに
あはれにも
おのれうけてや
かすむらむ
たがなすときの
はるならなくに
伏見山
あらたのおもの
末晴れて
霞まぬしもぞ
春の夕ぐれ
ふしみやま
あらたのおもの
すゑはれて
かすみぬしもぞ
はるのゆふぐれ
花鳥の
なさけはうへの
すさびにて
心のうちの
春ぞ物憂き
はなとりの
なさけはうへの
すさびにて
こころのうちの
はるぞものうき
時過ぎし
ふる木の櫻
今は世に
待つべき花の
春もたのまず
ときすぎし
ふるこのさくら
いまはよに
まつべきはなの
はるもたのまず
夏草の
ことしげき世に
みだされて
心の末は
道もとほらず
なつくさの
ことしげきよに
みだされて
こころのすゑは
みちもとほらず
遙かなる
門田の末は
山たえて
稻葉にかゝる
入日をぞ見る
はるかなる
かどたのすゑは
やまたえて
いなばにかかる
いりひをぞみる
哀さても
何のすさびの
詠めして
我世の月の
影更けぬらむ
あはれさても
なにのすさびの
ながめして
わがよのつきの
かげふけぬらむ
逢坂や
曉かけて
鳴くとりの
聲しろくなる
せきのすぎむら
あふさかや
あかつきかけて
なくとりの
こゑしろくなる
せきのすぎむら
鐘の音を
ひとつ嵐に
吹きこめて
夕暮しをる
のきの松かぜ
かねのねを
ひとつあらしに
ふきこめて
ゆふくらしをる
のきのまつかぜ
ならび立つ
まつの面は
靜にて
嵐のおくに
かねひゞくなり
ならびたつ
まつのおもては
しづかにて
あらしのおくに
かねひびくなり
山の端の
詠めにあたる
夕ぐれに
聞かで聞ゆる
入相のおと
やまのはの
ながめにあたる
ゆふぐれに
きかできこゆる
いりあひのおと
寺深き
寢覺の山は
明けもせで
あま夜の鐘の
聲ぞしめれる
てらふかき
ねざめのやまは
あけもせで
あまよのかねの
こゑぞしめれる
夜の雨に
心はなりて
思ひやる
千里の寐覺
こゝにかなしも
よのあめに
こころはなりて
おもひやる
ちさとのねざめ
ここにかなしも
浦かぜは
湊のあしに
吹きしをり
夕暮しろき
波のうへの雨
うらかぜは
みなとのあしに
ふきしをり
ゆふぐれしろき
なみのうへのあめ
いましもは
嵐に増る
哀れかな
音せぬ松の
ゆふぐれのやま
いましもは
あらしにまさる
あはれかな
おとせぬまつの
ゆふぐれのやま
山もとの
田面より立つ
白鷺の
行くかた見れば
森の一むら
やまもとの
たおもよりたつ
しらさぎの
ゆくかたみれば
もりのひとむら
つくろはぬ
岩木を庭の
姿にて
宿めづらしき
山のおくかな
つくろはぬ
いはきをにはの
すがたにて
やどめづらしき
やまのおくかな
山かげや
近き入相の
聲くれて
外面のたにゝ
沈むしらくも
やまかげや
ちかきいりあひの
こゑくれて
そとものたにに
しずむしらくも
遠方の
山は夕日の
かげ晴れて
軒端のくもは
雨おとすなり
とほかたの
やまはゆふひの
かげはれて
のきはのくもは
あめおとすなり
山陰や
竹のあなたに
入り日落ち
て林のとり
のこゑぞ爭ふ
やまかげや
たけのあなたに
いりひおち
てはやしのとり
のこゑぞいかふ
天つ空
照る日のしたに
有りながら
曇る心の
隈をもためや
あまつそら
てるひのしたに
ありながら
くもるこころの
くまをもためや
愁へなく
樂みもなし
我が心
いとなまぬ世は
あるに任せて
うれへなく
たのしみもなし
わがこころ
いとなまぬよは
あるにまかせて
花はなほ
春をも分くや
時志らぬ
身のみ物憂き
頃の詠めを
はなはなほ
はるをもわくや
ときしらぬ
みのみものうき
ころのながめを
露けさは
昨日のまゝの
涙にて
秋をかけたる
そでのはる雨
つゆけさは
きのふのままの
なみだにて
あきをかけたる
そでのはるあめ
彦里の
逢ふてふ秋は
うたて我れ
人に別るゝ
時にぞ有りける
ひこぼしの
あふてふあきは
うたてわれ
ひとにわかるる
ときにぞありける
消えつゞき
おくれぬ秋の
哀志らば
先だつ苔の
下や露けき
きえつづき
おくれぬあきの
あはれしらば
さきだつこけの
したやつゆけき
後れても
かつ何時迄と
身をぞ思ふ
列に別るゝ
秋の雁がね
おくれても
かついつまでと
みをぞおもふ
つらにわかるる
あきのかりがね
心とめし
かたみの色も
哀なり
人は舊りにし
宿のもみぢ葉
こころとめし
かたみのいろも
あはれなり
ひとはふりにし
やどのもみぢは
思へたゞ
露の秋より
しをれ來て
時雨にかゝる
そでの涙を
おもへただ
つゆのあきより
しをれきて
しぐれにかかる
そでのなみだを
あだし色に
心は染めじ
山風に
おつる紅葉の
程も無き世に
あだしいろに
こころはそめじ
やまかぜに
おつるもみぢの
ほどもなきよに
深く染め
し心の匂
すて兼ねぬ
まどひの前の
色とみながら
ふかくそめ
しこころのにほ
すてかねぬ
まどひのまへの
いろとみながら
故さとの
軒端の梅よ
いく春の
心をそむる
つまとなりけむ
ゆゑさとの
のきはのうめよ
いくはるの
こころをそむる
つまとなりけむ
うき世には
由なき梅の
匂かな
色に心は
そめじとおもふに
うきよには
よしなきうめの
にほひかな
いろにこころは
そめじとおもふに
我はいさ
なれもしらじな
春の雁
歸りあふべき
秋の頼みは
われはいさ
なれもしらじな
はるのかり
かへりあふべき
あきのたのみは
なれて見し
雲居の花も
世々ふりて
面影かすむ
九重のはる
なれてみし
くもゐのはなも
よよふりて
おもかげかすむ
ここのへのはる
夕立の
名殘久しき
しづくかな
信太の杜の
千枝のしたつゆ
ゆふだちの
なごりひさしき
しづくかな
しのだのもりの
ちえのしたつゆ
一方に
木々の木の葉を
吹き返し
夕立おくる
風ぞすゞしき
ひとかたに
き々のこのはを
ふきかへし
ゆふだちおくる
かぜぞすずしき
露深き
まだ朝あけの
草がくれ
夜の間の虫の
聲ぞのこれる
つゆふかき
まだあしたあけの
くさがくれ
よのまのむしの
こゑぞのこれる
古郷の
籬の虫や
うらむらむ
野邊の假寐の
夜さむなるころ
ふるさとの
まがきのむしや
うらむらむ
のべのかりねの
よさむなるころ
秋風の
閨すさまじく
吹くなべに
更けて身にしむ
床の月影
あきかぜの
ねやすさまじく
ふくなべに
ふけてみにしむ
とこのつきかげ
雁がねは
雲居がくれに
なきて來ぬ
萩の下葉の
つゆ寒き頃
かりがねは
くもゐがくれに
なきてこぬ
はぎのしたばの
つゆさむきころ
浮きて行く
雲の便の
村時雨
降る程もなく
かつ晴れにけり
うきてゆく
くものたよりの
むらしぐれ
ふるほどもなく
かつはれにけり
露ふかき
野邊の小笹の
かり枕
臥しなれぬ夜は
夢も結ばず
つゆふかき
のべのをささの
かりまくら
ふしなれぬよは
ゆめもむすばず
松が根の
あらしの枕
ゆめ絶えて
寐覺の山に
月ぞかたぶく
まつがねの
あらしのまくら
ゆめたえて
ねざめのやまに
つきぞかたぶく
世と共に
胸あひ難き
我が戀の
たぐひもつらき
今日の細布
よとともに
むねあひかたき
わがこひの
たぐひもつらき
けふのほそぬの
自から
又逢ふ契
ありとても
なれしながらの
世には歸らじ
おのづから
またあふちぎり
ありとても
なれしながらの
よにはかへらじ
うかるべき
身を知る上の
戀しさは
何にか暫し
思ひ沈めむ
うかるべき
みをしるうへの
こひしさは
なににかしばし
おもひしずめむ
石清水
流れの末を
うけつぎて
絶えずぞすまむ
萬代までに
いはしみづ
ながれのすゑを
うけつぎて
たえずぞすまむ
よろづよまでに
神や知る
世の爲とてぞ
身をも思ふ
身の爲にして
世をば祈らず
かみやしる
よのためとてぞ
みをもおもふ
みのためにして
よをばいのらず
思へたゞ
空しきはしに
雨をおきて
明け難き夜の
秋の心を
おもへただ
むなしきはしに
あめをおきて
あけかたきよの
あきのこころを
色そへむ
行幸をぞ待つ
もみぢ葉も
ふりぬる宿の
庭の景色に
いろそへむ
みゆきをぞまつ
もみぢはも
ふりぬるやどの
にはのけしきに
星うたふ
聲や雲居に
すみぬらむ
空にも頓て
影のさやけき
ほしうたふ
こゑやくもゐに
すみぬらむ
そらにもやがて
かげのさやけき
かきとむる
此水莖の
變らずば
なからむ跡の
形見とも見よ
かきとむる
このみづぐきの
かはらずば
なからむあとの
かたみともみよ
木の間より
映る夕日の
影ながら
袖にぞあまる
梅の下かぜ
このまより
うつるゆふひの
かげながら
そでにぞあまる
うめのしたかぜ
櫻花
咲けるやいづこ
三吉野の
よしのゝ山は
霞みこめつゝ
さくらばな
さけるやいづこ
みよしのの
よしののやまは
かすみこめつつ
木ずゑには
花もたまらず
庭の面の
櫻にうすき
有明のかげ
こずゑには
はなもたまらず
にはのおもの
さくらにうすき
ありあけのかげ
木の間洩る
影ともいはじ
よはの月
霞むも同じ
心づくしを
このまもる
かげともいはじ
よはのつき
かすむもおなじ
こころづくしを
むら雲も
山の端遠く
なり果てゝ
月にのみ吹く
峰の松かぜ
むらくもも
やまのはとほく
なりはてて
つきにのみふく
みねのまつかぜ
嵐吹く
峯のうき雲
さそはれて
心もそらに
澄めるつきかげ
あらしふく
みねのうきくも
さそはれて
こころもそらに
すめるつきかげ
更けぬるか
露のやどりも
夜寒にて
淺茅が月に
秋風ぞ吹く
ふけぬるか
つゆのやどりも
よさむにて
あさぢがつきに
あきかぜぞふく
誰に又
月より外は
うれへまし
なれぬ山路の
秋のこゝろを
たれにまた
つきよりほかは
うれへまし
なれぬやまぢの
あきのこころを
行く秋の
末葉の淺茅
露ばかり
なほ影とむる
ありあけの月
ゆくあきの
すゑはのあさぢ
つゆばかり
なほかげとむる
ありあけのつき
色かはる
心の秋の
葛かづら
恨みをかけて
つゆぞこぼるゝ
いろかはる
こころのあきの
くずかづら
うらみをかけて
つゆぞこぼるる
つらしとて
人を恨みむ
理の
なきにうき身の
程ぞ知らるゝ
つらしとて
ひとをうらみむ
ことはりの
なきにうきみの
ほどぞしらるる
算ふれば
十とせあまりの
秋なれど
面影近き
月ぞかなしき
かぞふれば
ととせあまりの
あきなれど
おもかげちかき
つきぞかなしき
百敷に
みどり添ふべき
呉竹の
變らぬかげは
代々久しかれ
ももしきに
みどりそふべき
くれたけの
かはらぬかげは
よよひさしかれ
咲そむる
外山の花の
色みえて
まとをにかゝる
嶺の白雲
さきそむる
とやまのはなの
いろみえて
まとをにかかる
みねのしらくも
雲はらふ
嵐の空は
嶺はれて
松の陰なる
山のはの月
くもはらふ
あらしのそらは
みねはれて
まつのかげなる
やまのはのつき
草の原
露のよすかに
鳴虫の
怨やなそと
誰にとはまし
くさのはら
つゆのよすかに
なくむしの
うらみやなそと
たれにとはまし
春にあふ
老木の桜
ふりぬれは
あまたかさなる
みゆきをそみる
はるにあふ
おいこのさくら
ふりぬれは
あまたかさなる
みゆきをそみる
またきより
波のしからみ
かけてけり
みそき待まの
かもの河風
またきより
なみのしからみ
かけてけり
みそきまつまの
かものかはかぜ