飛鳥風
吹きにけらしな
たをやめの
柳のかづら
今靡くなり
あすかかぜ
ふきにけらしな
たをやめの
やなぎのかづら
いまなびくなり
春を經て
志賀の故郷
いにしへの
都は花の
名にのこりつゝ
はるをへて
しがのふるさと
いにしへの
みやこははなの
なにのこりつつ
春毎の
つらき習ひに
散ると見て
有るべき花を
猶や慕はむ
はるごとの
つらきならひに
ちるとみて
あるべきはなを
なほやしたはむ
せめて我が
近きまもりの
程だにも
御階の櫻
散さずもがな
せめてわが
ちかきまもりの
ほどだにも
みはしのさくら
ちらさずもがな
五月雨に
落ちそふ瀧の
白玉や
頓てふり行く
日數なるらむ
さみだれに
おちそふたきの
しらたまや
やがてふりゆく
ひかずなるらむ
鳴る神の
音ばかりかと
聞くほどに
山風烈し
ゆふだちの空
なるかみの
おとばかりかと
きくほどに
やまかぜはげし
ゆふだちのそら
咲きてこそ
野中の水に
映りけれ
古枝の萩の
本のこゝろは
さきてこそ
のなかのみづに
うつりけれ
ふるえのはぎの
もとのこころは
夜な〳〵は
月の影もや
うつるらむ
遠山どりの
をろの鏡に
よなよなは
つきのかげもや
うつるらむ
とほやまどりの
をろのかがみに
さほ姫の
衣かりかね
春ことに
うらみよとてや
立帰るらん
さほひめの
ころもかりかね
はることに
うらみよとてや
たちかへるらん
つれなくは
忍ひはてなて
時鳥
つゐに鳴音を
何またれけん
つれなくは
しのひはてなて
ほととぎす
つゐになくねを
なにまたれけん
きり〳〵す
夜をへて秋は
手枕の
下やすからぬ
ねをや鳴らん
きりきりす
よをへてあきは
たまくらの
したやすからぬ
ねをやなくらん
忍ふ草
おふる板間は
有なから
もるとしもなき
春雨の空
しのふくさ
おふるいたまは
ありなから
もるとしもなき
はるさめのそら
よしさらは
思ひもよはれ
よそなから
あるかひもなき
命なかさは
よしさらは
おもひもよはれ
よそなから
あるかひもなき
いのちなかさは