いかにして
慰む物ぞ
うき世をも
背かで過す
人にとはゞや
いかにして
なぐさむものぞ
うきよをも
そむかですごす
ひとにとはばや
思ひ立つ
木曾の麻衣
淺くのみ
染めてやむべき
袖の色かは
おもひたつ
きそのあさきぬ
あさくのみ
そめてやむべき
そでのいろかは
芦鴨の
はらふ翼に
波越えて
うは毛の霜や
なほこほるらむ
あしかもの
はらふつばさに
なみこえて
うはげのしもや
なほこほるらむ
旅のそら
いく夕暮に
待ち出でゝ
山の端變る
月を見つらむ
たびのそら
いくゆふくれに
まちいでて
やまのはかはる
つきをみつらむ
忍山
またことかたに
道もがな
ふりぬる跡は
人もこそ知れ
しのぶやま
またことかたに
みちもがな
ふりぬるあとは
ひともこそしれ
すみ竈も
年の寒きに
あらはれぬ
烟や松の
つま木なるらむ
すみがまも
としのさむきに
あらはれぬ
けぶりやまつの
つまきなるらむ
都思ふ
草のまくらの
夢をだに
たのむかたなく
山風ぞ吹く
みやこおもふ
くさのまくらの
ゆめをだに
たのむかたなく
やまかぜぞふく
後の世を
歎かぬ程ぞ
知られける
身の憂きにのみ
袖は濡れつゝ
のちのよを
なげかぬほどぞ
しられける
みのうきにのみ
そではぬれつつ