長閑なる
けしきを四方に
おしこめて
霞ぞ春の
姿なりける
のどかなる
けしきをよもに
おしこめて
かすみぞはるの
すがたなりける
窓明けて
月の影しく
手枕に
梅が香あまる
のきのはるかぜ
まどあけて
つきのかげしく
たまくらに
うめがかあまる
のきのはるかぜ
開け添ふ
梢の花に
露見えて
おとせぬ雨の
そゝぐあさあけ
ひらけそふ
こずゑのはなに
つゆみえて
おとせぬあめの
そそぐあさあけ
山うすき
霞の空は
やゝ暮れて
花の軒端に
にほふつきかげ
やまうすき
かすみのそらは
ややくれて
はなののきはに
にほふつきかげ
春もはや
あらしの末に
吹きよせて
岩根の苔に
花ぞ殘れる
はるもはや
あらしのすゑに
ふきよせて
いはねのこけに
はなぞのこれる
早苗とる
山もと小田に
雨はれて
夕日の峯を
わたるうき雲
さなへとる
やまもとをだに
あめはれて
ゆふひのみねを
わたるうきくも
雨晴れて
露吹きはらふ
木ずゑより
風にみだるゝ
蝉の諸聲
あめはれて
つゆふきはらふ
こずゑより
かぜにみだるる
せみのもろごゑ
もりかぬる
月はすくなき
木の下に
夜深き水の
音ぞ凉しき
もりかぬる
つきはすくなき
このしたに
よふかきみづの
おとぞすずしき
秋さむき
夕日は峰に
かげろひて
岡の尾花に
かぜすさぶ也
あきさむき
ゆふひはみねに
かげろひて
をかのをはなに
かぜすさぶなり
見るまゝに
かべに消え行く
秋の日の
時雨に向ふ
浮雲の空
みるままに
かべにきえゆく
あきのひの
しぐれにむかふ
うきくものそら
山嵐に
木の葉降り添ふ
村時雨
晴るゝ雲間に
三日月のかげ
やまあらしに
このはふりそふ
むらしぐれ
はるるくもまに
みかづきのかげ
枯れつもる
楢の落葉に
音すなり
風吹きまさる
夕ぐれの雨
かれつもる
ならのおちばに
おとすなり
かぜふきまさる
ゆふぐれのあめ
降り晴れて
氷れる雪の
梢より
あかつき深き
鳥のはつこゑ
ふりはれて
こほれるゆきの
こずゑより
あかつきふかき
とりのはつこゑ
身をかへて
見る道もがな
難面さの人にも
かゝる人の心か
みをかへて
みるみちもがな
つれなさの
ひとにもかかる
ひとのこころか
今朝よなほ
怪しく變る
詠かな
いかなる夢の
如何見えつる
けさよなほ
あやしくかはる
ながめかな
いかなるゆめの
いかにみえつる
寢られねば
夢にはあらじ
面影の
心に添ひて
見ゆるなりけり
ねられねば
ゆめにはあらじ
おもかげの
こころにそひて
みゆるなりけり
見るも憂し
流石さこそと
待つくれに
あす必ずの
人の玉章
みるもうし
さすがさこそと
まつくれに
あすかならずの
ひとのたまづさ
さのみやと
我さへ果ては
難面きに
今夜は人に
待つと知られじ
さのみやと
われさへはては
つれなきに
いまよはひとに
まつとしられじ
思ひやる
寢覺もいかゞ
安からむ
頼めし夜半の
あらぬ契は
おもひやる
ねざめもいかが
やすからむ
たのめしよはの
あらぬちぎりは
空しくて
明けつる夜半の
怠を
今日やと待つに
又音もなし
むなしくて
あけつるよはの
おこたりを
けふやとまつに
またおともなし
出でがてに
又立歸り
惜む間に
別れの戸口
明け過ぎぬなり
いでがてに
またたちかへり
をしむまに
わかれのとくち
あけすぎぬなり
名殘をば
さすがにかくる
玉章に
又此の暮も
などか頼めぬ
なごりをば
さすがにかくる
たまづさに
またこのくれも
などかたのめぬ
哀れさらば
忘れて見ばや
生憎に
我が慕へはぞ
人は思はぬ
あはれさらば
わすれてみばや
あやにくに
わがしたへはぞ
ひとはおもはぬ
憂きに添ふ
哀に我れも
みだされて
一方にしも
えこそ定めね
うきにそふ
あはれにわれも
みだされて
ひとかたにしも
えこそさだめね
空の色
草木を見るも
みな悲し
命にかくる
ものをおもへば
そらのいろ
くさきをみるも
みなかなし
いのちにかくる
ものをおもへば
つらし共
中々なれば
云ひはせで
恨みけりとは
いかで知せむ
つらしとも
なかなかなれば
いひはせで
うらみけりとは
いかでしらせむ
聞き聞かず
同じ響きも
亂るなり
嵐のうちの
あかつきの鐘
きききかず
おなじひびきも
みだるなり
あらしのうちの
あかつきのかね
立ちのぼる
烟さびしき
山もとの
里の此方に
もりの一むら
たちのぼる
けぶりさびしき
やまもとの
さとのこなたに
もりのひとむら
雲しづむ
谷の軒端の
雨の暮聞
きなれぬ鳥の
聲もさびしき
くもしづむ
たにののきはの
あめのくき
きなれぬとりの
こゑもさびしき
夏衣
立ちかへてしも
忘れぬは
別れし春の
はなぞめのそで
なつころも
たちかへてしも
わすれぬは
わかれしはるの
はなぞめのそで
Надели все
Одежды летние пускай,
Но не забуду
О рукавах, окрашенных в цвет вишни,
С которыми расстались мы с весной!
大幣や
あさの木綿しで
打ち靡き
みそぎ凉しき
賀茂の川風
おほぬさや
あさのゆふしで
うちなびき
みそぎすずしき
かものかはかぜ
秋風は
梢をはらふ
夕ぐれに
雲もかゝらぬ
やまの端のつき
あきかぜは
こずゑをはらふ
ゆふぐれに
くももかからぬ
やまのはのつき
なれそめし
契忘るな
下帶の
また打ち解くる
人はありとも
なれそめし
ちぎりわするな
したおびの
またうちとくる
ひとはありとも
鳰鳥の
下の通ひ路
絶えざらば
浪の浮巣は
うかれたりとも
にほとりの
したのかよひぢ
たえざらば
なみのうき巣は
うかれたりとも
杉立てる
外面の谷に
水おちて
早苗すゞしき
山のしたかげ
すぎたてる
そとものたにに
みづおちて
さなへすずしき
やまのしたかげ
難波かた
芦の若葉に
風こえて
霞にしつむ
波の上の月
なにはかた
あしのわかばに
かぜこえて
かすみにしつむ
なみのうへのつき
霧はれて
朝日うつろふ
山のはの
雲に過行
初かりの声
きりはれて
あさひうつろふ
やまのはの
くもにすぎゆく
はつかりのこゑ
衣うつ
なれもさこそは
寒からし
あかつき深き
霜におきゐて
ころもうつ
なれもさこそは
さむからし
あかつきふかき
しもにおきゐて