たまらじと
嵐のつてに
散る雪に
霞みかねたる
まきの一村
たまらじと
あらしのつてに
ちるゆきに
かすみかねたる
まきのひとむら


花鳥の
なさけまでこそ
思ひ籠むる
夕山深き
春のかすみに
はなとりの
なさけまでこそ
おもごむる
ゆふやまふかき
はるのかすみに


春風は
柳の糸を
吹きみだし
庭よりはるゝ
ゆふぐれのあめ
はるかぜは
やなぎのいとを
ふきみだし
にはよりはるる
ゆふぐれのあめ


櫻咲く
とほぢの村の
夕ぐれに
花折りかざし
人かへるなり
さくらさく
とほぢのむらの
ゆふぐれに
はなをりかざし
ひとかへるなり


花の上に
さすや朝日の
かげ晴れて
囀る鳥の
聲も長閑けき



雨しぼる
やよひの山の
木がくれに
殘るともなき
花の色哉
あめしぼる
やよひのやまの
こがくれに
のこるともなき
はなのいろかな


何となく
見るにも春ぞ
慕はしき
芝生に交る
花のいろ〳〵
なにとなく
みるにもはるぞ
したはしき
しばふにかたる
はなのいろいろ


春くれし
昨日も同じ
淺みどり
今日やはかはる
夏山のいろ
はるくれし
きのふもおなじ
あさみどり
けふやはかはる
なつやまのいろ
С прихода весны
До вчерашнего дня
Неизменно
Затуманены были горы.
А сегодня цвет свой сменили!
Примерный перевод

小山田や
早苗の末に
風みえて
行くて凉しき
すぎの下みち
をやまだや
さなへのすゑに
かぜみえて
ゆくてすずしき
すぎのしたみち
На маленьких горных полях
По верхушкам кустиков риса
Видно, что дует ветер,
Так здорово идти
В прохладе в тени криптомерий.
Примерный перевод

心ある
夏の景色の
今宵かな
木の間の月に
くひなこゑして
こころある
なつのけしきの
こよひかな
このまのつきに
くひなこゑして


夕日影
寂しく見ゆる
山もとの
田面にくだる
かりの一つら
ゆふひかげ
さびしくみゆる
やまもとの
たおもにくだる
かりのひとつら


天つ雁
霧のあなたに
聲はして
門田のすゑぞ
霜にあけゆく
あまつかり
きりのあなたに
こゑはして
かどたのすゑぞ
しもにあけゆく


聲たつる
軒の松風
庭のむし
夕ぐれかけて
つきやもよほす
こゑたつる
のきのまつかぜ
にはのむし
ゆふぐれかけて
つきやもよほす


夕霜の
古枝の萩の
下葉より
枯れ行く秋の
いろは見えけり
ゆふしもの
ふるえのはぎの
したばより
かれゆくあきの
いろはみえけり


月も見ず
風も音せぬ
窓のうちに
あきをおくりて
むかふ燈
つきもみず
かぜもおとせぬ
まどのうちに
あきをおくりて
むかふともしび


時雨るとも
知られぬ庭は
木葉濡て
寒き夕日は
影落ちに鳬
しぐるとも
しられぬにはは
このはぬれて
さむきゆふひは
かげおちにけり


霜とくる
日影の庭は
木の葉濡れて
朽にし色ぞ
又變りぬる
しもとくる
ひかげのにはは
このはぬれて
くちにしいろぞ
またかはりぬる


鐘の音に
あくるか空と
おきて見れば
霜夜の月ぞ
庭靜なる
かねのねに
あくるかそらと
おきてみれば
しもよのつきぞ
にはしずかなる


岡のべや
寒き朝日の
さしそめて
おのれと落つる
松の白雪
をかのべや
さむきあさひの
さしそめて
おのれとおつる
まつのしらゆき


飛ぶ鳥の
眺めの末も
見えぬまで
都の空を
おもひこそやれ
とぶとりの
ながめのすゑも
みえぬまで
みやこのそらを
おもひこそやれ


味氣なや
人の浮名を
立てじ故
我が思をば
なきになしつる
あぢけなや
ひとのうきなを
たてじゆゑ
わがおもひをば
なきになしつる


いくゆふべ
むなしき空に
飛ぶ鳥の
明日必ずと
又や頼まむ
いくゆふべ
むなしきそらに
とぶとりの
あすかならずと
またやたのまむ


別れ路を
急がぬ鳥の
聲よりも
まだ空たかき
月ぞうれしき
わかれぢを
いそがぬとりの
こゑよりも
まだそらたかき
つきぞうれしき


又や見む
又や見ざらむ
とばかりに
面影暮るゝ
今朝の別路
またやみむ
またやみざらむ
とばかりに
おもかげくるる
けさのわかれぢ


慕ふ方の
進むにつけて
厭ひ増る
人と我との
中ぞはるけき
したふかたの
すすむにつけて
いとひまさる
ひととわれとの
なかぞはるけき


更にこそ
忘れしことの
思ほゆれ
今日星合の
そらに詠めて
さらにこそ
わすれしことの
おもほゆれ
けふほしあひの
そらにながめて


山嵐に
脆く落行く
もみぢ葉の
留らぬ世は
斯こそ有りけれ
やまあらしに
もろくおゆく
もみぢはの
とどまらぬよは
かくこそありけれ


夕山や
麓の檜原
いろさめて
殘る日かげぞ
みねにすくなき
ゆふやまや
ふもとのひばら
いろさめて
のこるひかげぞ
みねにすくなき


鳥の行く
夕のそらの
はる〴〵と
詠めの末に
山ぞいろこき
とりのゆく
ゆふべのそらの
はるばると
ながめのすゑに
やまぞいろこき


尋ね入る
山路のすゑは
人も逢はず
入相の鐘に
嵐こそ吹け
たづねいる
やまぢのすゑは
ひともあはず
いりあひのかねに
あらしこそふけ


一筋に
思ひも果てじ
猶も此の
浮世の友は
月こそありけれ
ひとすじに
おもひもはてじ
なほもこの
うきよのともは
つきこそありけれ


獨あかす
四方の思は
聞きこめぬ
たゞつく〴〵と
更くる夜の雨
ひとりあかす
よものおもひは
ききこめぬ
ただつくづくと
ふくるよのあめ


仰ぎ見て
我が身を問へば
天の原
すめる緑の
言ふ事もなし
あおぎみて
わがみをとへば
あまのはら
すめるみどりの
いふこともなし


秋を待たで
思ひ立ちにし
苔衣
今より露を
いかで干さまし
あきをまたで
おもひたちにし
こけころも
いまよりつゆを
いかでひさまし


山里の
亡き影慕ふ
池水に
むなしきふねぞ
さしてもの憂き
やまざとの
なきかげしたふ
いけみづに
むなしきふねぞ
さしてものうき


神路山
内外のみやの
みや柱
身は朽ちぬとも
末をばたてよ
かみぢやま
うちとのみやの
みやはしら
みはくちぬとも
すゑをばたてよ


沈みぬる
身は木隱れの
石清水
さても流の
世にし絶えずば
しずみぬる
みはこがくれの
いはしみづ
さてもながれの
よにしたえずば


明け渡る
かすみのをちは
ほのかにて
軒の櫻に
風薫るなり
あけわたる
かすみのをちは
ほのかにて
のきのさくらに
かぜかをるなり


飽かずみる
山櫻戸の
あけぼのに
猶あまりある
有明のかげ
あかずみる
やまさくらとの
あけぼのに
なほあまりある
ありあけのかげ


草深き
籬のつゆを
月に見て
秋のこゝろぞ
かねておぼゆる
くさふかき
まがきのつゆを
つきにみて
あきのこころぞ
かねておぼゆる


かき暮す
袖の涙に
せき兼て
言の葉だにも
書きもやられず
かきくらす
そでのなみだに
せきかねて
ことのはだにも
かきもやられず


逢ふ事も
身には渚に
寄る浪の
よその見る目に
ねこそなかるれ
あふことも
みにはなぎさに
よるなみの
よそのみるめに
ねこそなかるれ


見しやいつぞ
豐の明の
そのかみも
面影とほき
雲の上の月
みしやいつぞ
とよのあかりの
そのかみも
おもかげとほき
くものうへのつき