別るらむ
名殘ならでも
春の雁
哀なるべき
あけぼのゝこゑ
わかるらむ
なごりならでも
はるのかり
あはれなるべき
あけぼののこゑ
咲き滿ちて
散るべくも非ぬ
花盛
薫るばかりの
風は厭はず
さきみちて
ちるべくもあらぬ
はなさかり
かをるばかりの
かぜはいとはず
夕附日
梢によわく
鳴く蝉の
はやまのかげは
今ぞすゞしき
ゆふづくひ
こずゑによわく
なくせみの
はやまのかげは
いまぞすずしき
暮れうつる
眞垣の花は
見え分かで
霧に隔てぬ
小牡鹿の聲
くれうつる
まがきのはなは
みえわかで
きりにへだてぬ
さをじかのこゑ
稻づまの
暫しもとめぬ
光にも
草葉のつゆの
數は見えけり
いなづまの
しばしもとめぬ
ひかりにも
くさばのつゆの
かずはみえけり
霧はるゝ
遠の山もと
あらはれて
月かげみがく
宇治の川波
きりはるる
とほのやまもと
あらはれて
つきかげみがく
うぢのかはなみ
立ちそむる
霧かと見れば
秋の雨の
細かにそゝぐ
夕暮の空
たちそむる
きりかとみれば
あきのあめの
ほそかにそそぐ
ゆふぐれのそら
瀬だえする
ふる川水の
薄氷
ところ〴〵に
みがくつきかげ
せだえする
ふるかはみづの
うすこほり
ところどころに
みがくつきかげ
折々に
きゝ見る事の
それも皆
戀しき中の
すさびにぞなる
をりをりに
ききみることの
それもみな
こひしきなかの
すさびにぞなる