はかなくて
頼む心を
たよりとや
憂き僞も
ある世なるらむ
はかなくて
たのむこころを
たよりとや
うきいつはりも
あるよなるらむ


住みわぶる
時こそありけれ
白雲の
たなびく峯の
秋の夕暮
すみわぶる
ときこそありけれ
しらくもの
たなびくみねの
あきのゆふぐれ


今日と云へば
早ぬぎかへぬ
花衣
散りて幾かの
形見なりけむ
けふといへば
はやぬぎかへぬ
はなころも
ちりていくかの
かたみなりけむ


降るもかつ
晴るゝもやすき
我袖の
涙乾かぬ
時雨なりけり
ふるもかつ
はるるもやすき
わがそでの
なみだかはかぬ
しぐれなりけり


長閑にぞ
中々見つる
山ざくら
暮れて歸らむ
家路ならねば
のどかにぞ
なかなかみつる
やまざくら
くれてかへらむ
いへぢならねば


吹きにけり
我が手枕の
塵ならで
立つ名も志るき
秋の初風
ふきにけり
わがたまくらの
ちりならで
たつなもしるき
あきのはつかぜ


名取川
音にな立てそ
陸奧の
しのぶが原は
つゆあまるとも
なとりがは
おとになたてそ
みちのくの
しのぶがはらは
つゆあまるとも


夕烟
さしも苦しき
下もえの
立つ名とならば
猶やこがれむ
ゆふけぶり
さしもくるしき
したもえの
たつなとならば
なほやこがれむ


したふそよ
ありてはてうき
ことはりも
あたなる花の
色に忘て
したふそよ
ありてはてうき
ことはりも
あたなるはなの
いろにわすれて