待ちいでゝ
見るも難面き
我身かな
すむべき山の
有明の月
まちいでて
みるもつれなき
わがみかな
すむべきやまの
ありあけのつき


いづるより
入る迄見るを
秋の夜の
月には誰か
寐覺しつ覽
いづるより
いるまでみるを
あきのよの
つきにはたれか
ねざめしつらん


難波より
見えし雲間の
伊駒山
今はいづくぞ
五月雨のころ
なにはより
みえしくもまの
いこまやま
いまはいづくぞ
さみだれのころ


さもこそは
淺き契の
すゑならめ
やがて瀬絶えし
中河の水
さもこそは
あさきちぎりの
すゑならめ
やがてせたえし
なかかはのみづ


斯ばかり
絶えける物を
葛かづら
來る夜をかけて
何恨みけむ
かくばかり
たえけるものを
くずかづら
くるよをかけて
なにうらみけむ