風さむみ
なにをか春と
いはしろや
雪だに解ぬ
松の下陰
かぜさむみ
なにをかはると
いはしろや
ゆきだにとけぬ
まつのしたかげ

Ивасиро, току, ока — см. Манъёсю-10
きよみがた
霞や深く
成ぬらん
遠ざかり行
みほの浦松
きよみがた
かすみやふかく
なりぬらん
とほざかりゆく
みほのうらまつ
У берега Киёми
То ли туман густой
Поднялся?
Лишь вдалеке виднеются
Сосны у бухты Мио...
Примерный перевод

九重の
雲のうへなる
花なれば
又まがふべき
色やなからん
ここのへの
くものうへなる
はななれば
またまがふべき
いろやなからん


尋見ぬ
身のをこたりと
櫻花
ちると聞にぞ
おどろかれぬる
たづねみぬ
みのをこたりと
さくらばな
ちるときくにぞ
おどろかれぬる


花はちり
月は有明に
なる比の
春のわかれぞ
いはんかたなき
はなはちり
つきはありあけに
なるころの
はるのわかれぞ
いはんかたなき


忍ふべき
初音なりとも
時鳥
雲まの月に
物忘れせよ
しのふべき
はつねなりとも
ほととぎす
くもまのつきに
ものわすれせよ


春日のや
霜に朽にし
冬草の
又もえ出て
とぶほたるかな
かすがのや
しもにくちにし
ふゆくさの
またもえいでて
とぶほたるかな


今よりの
ね覺の床の
哀まで
かねてしらるゝ
秋の初風
いまよりの
ねさめのとこの
あはれまで
かねてしらるる
あきのはつかぜ


世中の
うけくに秋の
月をみて
泪くもらぬ
夜半ぞすくなき
よのなかの
うけくにあきの
つきをみて
なみだくもらぬ
よはぞすくなき


長月や
末野の霜の
朝ぼらけ
今だに秋の
面影はなし
ながつきや
すゑののしもの
あさぼらけ
いまだにあきの
おもかげはなし


あかつきの
ね覺の鵆
なれをしぞ
哀とは思
友なしにして
あかつきの
ねざめのちどり
なれをしぞ
あはれとはおもひ
ともなしにして


もがみ川
又いな舟の
くだるせを
しばしばかりも
いかでとゞめむ
もがみかは
またいなふねの
くだるせを
しばしばかりも
いかでとどめむ


われをのみ
ふかきになして
袖川や
人を淺瀬に
いかゞくださん
われをのみ
ふかきになして
そでかはや
ひとをあさせに
いかがくださん


ながき夜を
ねにのみ鳴て
庭つ鳥
かけのたれおの
みだれわびつゝ
ながきよを
ねにのみなきて
にはつとり
かけのたれおの
みだれわびつつ


戀しぬと
いひし後しも
つらければ
人のおしまぬ
身とはしりにき
こひしぬと
いひしのちしも
つらければ
ひとのおしまぬ
みとはしりにき


つれもなき
命と人は
いとふとも
逢にしかへば
又やおしまん
つれもなき
いのちとひとは
いとふとも
あふにしかへば
またやおしまん


よしやその
夕付鳥も
なかばなけ
我あふ坂の
關路ならねば
よしやその
ゆふつけどりも
なかばなけ
われあふさかの
せきぢならねば


たのまめや
又あひみんと
契とも
人の心の
二もとのすぎ
たのまめや
またあひみんと
ちぎりとも
ひとのこころの
ふたもとのすぎ


こりずまに
又たのまるゝ
夕哉
人のまことも
身にはしらねど
こりずまに
またたのまるる
ゆふべかな
ひとのまことも
みにはしらねど


わたの原
浪まにちがふ
はや舟の
あふかとすれば
遠ざかりぬる
わたのはら
なみまにちがふ
はやふねの
あふかとすれば
とほざかりぬる


おもひ出は
たが泪にも
くもるらん
契し月の
おなじかたみは
おもひいでは
たがなみだにも
くもるらん
ちぎりしつきの
おなじかたみは


春も猶
朝風寒み
うぢま山
霞の衣
かりぞなくなる
はるもなほ
あさかぜさむみ
うぢまやま
かすみのころも
かりぞなくなる


さらに又
歎と聞ば
かくばかり
いとはしき世を
捨ぞわづらふ
さらにまた
なげきときば
かくばかり
いとはしきよを
すてぞわづらふ


契をく
けふを千とせの
始にて
行すゑ遠し
春の若松
ちぎりをく
けふをちとせの
はじめにて
ゆくすゑとほし
はるのわかまつ