過がてに
たをる櫻の
一枝を
猶九重に
色そへて見よ
すぎがてに
たをるさくらの
ひとえだを
なほここのへに
いろそへてみよ
わきてわが
たのむ心の
ふかきえに
ひけるあやめの
ねとはしらなん
わきてわが
たのむこころの
ふかきえに
ひけるあやめの
ねとはしらなん
けさはゝや
荻の上葉に
音たてゝ
昨日にもにぬ
秋の初風
けさははや
をぎのうはばに
おとたてて
きのふにもにぬ
あきのはつかぜ
花はまだ
片枝ばかりに
咲そめて
露のみしげき
庭の萩原
はなはまだ
かたえばかりに
さきそめて
つゆのみしげき
にはのはぎはら
出ぬより
光ばかりを
さきだてゝ
木の間に更る
秋の夜の月
いでぬより
ひかりばかりを
さきだてて
このまにふける
あきのよのつき
名にしおふ
神の誓の
そのまゝに
心の闇を
てらせとぞ思
なにしおふ
かみのちかひの
そのままに
こころのやみを
てらせとぞおも
祈をく
こゝろのやみも
いつはれて
雲井にすまん
月をみるべき
いのりをく
こころのやみも
いつはれて
くもゐにすまん
つきをみるべき
あさき瀨に
思たえずば
泪川
後はうき名を
猶やながさん
あさきせに
おもひたえずば
なみだかは
のちはうきなを
なほやながさん
思いでむ
人の心は
しらねども
かたみなるべき
夜はの月かな
おもいでむ
ひとのこころは
しらねども
かたみなるべき
よはのつきかな
すゑは又
遠ざかるべき
東路と
しらでやこえし
逢坂の關
すゑはまた
とほざかるべき
あづまぢと
しらでやこえし
あふさかのせき
呉竹の
いく世もあらじ
物故に
身のうきふしは
なげかずも哉
くれたけの
いくよもあらじ
ものゆゑに
みのうきふしは
なげかずもがな
時しらぬ
なげきのもとに
いかにして
かはらぬ色に
花の咲らん
ときしらぬ
なげきのもとに
いかにして
かはらぬいろに
はなのさくらん
みよし野は
見しにもあらず
荒にけり
あだなる花は
猶のこれども
みよしのは
みしにもあらず
あれにけり
あだなるはなは
なほのこれども
かれつゝも
二葉かはらぬ
草の名を
かけはなれぬる
我ぞ悲しき
かれつつも
ふたばかはらぬ
くさのなを
かけはなれぬる
われぞかなしき
ことしこそ
いとゞまたるれ
時鳥
しでの山路の
事やかたると
ことしこそ
いとどまたるれ
ほととぎす
しでのやまぢの
ことやかたると
なきかげを
さそひてやどれ
夜はの月
昔をこふる
袖の泪に
なきかげを
さそひてやどれ
よはのつき
むかしをこふる
そでのなみだに
九重の
玉の臺も
夢なれや
苔の下にし
君をおもへば
ここのへの
たまのうてなも
ゆめなれや
こけのしたにし
きみをおもへば
引つれし
西の司の
ひとりだに
いまはつかへぬ
道ぞ悲しき
ひきつれし
にしのつかさの
ひとりだに
いまはつかへぬ
みちぞかなしき
さびしさも
つゐの栖と
思ふには
心ぞとまる
嶺の松風
さびしさも
つゐのすみかと
おもふには
こころぞとまる
みねのまつかぜ
みるまゝに
泪ぞかゝる
四の絃の
行末ながき
ねにつたへても
みるままに
なみだぞかかる
よのつるの
ゆくすゑながき
ねにつたへても