ふく風を
いはばいはなむ
さくら花
散りかふころの
春の山守
ふくかぜを
いはばいはなむ
さくらはな
ちりかふころの
はるのやまもり
今はまた
花のかげとも
頼まれず
暮れなばなげの
春の日數に
いまはまた
はなのかげとも
たのまれず
くれなばなげの
はるのひかずに
春くるる
ゐでのしがらみ
せきかねて
ゆくせにうつる
山吹の花
はるくるる
ゐでのしがらみ
せきかねて
ゆくせにうつる
やまぶきのはな
秋風に
妻まつ山の
夜をさむみ
さこそおのへの
鹿は鳴らめ
あきかぜに
つままつやまの
よをさむみ
さこそおのへの
しかはなくらめ
くもれとや
老の涙も
契けむ
昔より見る
秋の夜の月
くもれとや
おいのなみだも
ちぎりけむ
むかしよりみる
あきのよのつき
老となる
つらさはしりぬ
しかりとて
そむかれなくに
月をみる哉
おいとなる
つらさはしりぬ
しかりとて
そむかれなくに
つきをみるかな
浅ちふの
秋の夕の
きり〴〵す
ねになきぬへき
時はしりけり
あさちふの
あきのゆふべの
きりぎりす
ねになきぬへき
ときはしりけり
晴くもり
しくるゝ数は
しらねとも
ぬれて千しほの
秋のもみちは
はれくもり
しくるるかずは
しらねとも
ぬれてちしほの
あきのもみちは
紅葉はを
風にまかする
手向山
ぬさもとりあへす
秋はいぬめり
もみぢはを
かぜにまかする
たむけやま
ぬさもとりあへす
あきはいぬめり
冬きぬと
いふはかりにや
神無月
けさは時雨の
ふりまさりつゝ
ふゆきぬと
いふはかりにや
かみなづき
けさはしぐれの
ふりまさりつつ
下おれの
をとのみ杉の
しるしにて
雪の底なる
三輪の山本
したおれの
をとのみすぎの
しるしにて
ゆきのそこなる
みはのやまもと
逢事は
むかしかたりの
夢なれと
おとろかさはや
思ひ出やと
あふごとは
むかしかたりの
ゆめなれと
おとろかさはや
おもひいでやと
山のはに
待よひとこそ
契しか
月さへあらぬ
あり明の空
やまのはに
まつよひとこそ
ちぎりしか
つきさへあらぬ
ありあけのそら
我身さて
ふるの山への
木かくれを
月のしるへに
出にけるかな
わがみさて
ふるのやまへの
きかくれを
つきのしるへに
いでにけるかな
月はよも
すみもわひしを
世中に
うき身の友と
いかゝ頼まん
つきはよも
すみもわひしを
よのなかに
うきみのともと
いかかたのまん
かすならて
思ふ心は
道もなし
たかなさけにか
身をうれへまし
かすならて
おもふこころは
みちもなし
たかなさけにか
みをうれへまし
なき数に
今まてもるゝ
老の身の
またくはゝらん
程のかなしさ
なきかずに
いままてもるる
おいのみの
またくははらん
ほどのかなしさ
朝戸あけに
立出てきけは
郭公
山のはみゆる
かたに鳴なり
あさとあけに
たちいでてきけは
ほととぎす
やまのはみゆる
かたになくなり
名にしおふ
さかひやいつく
明石かた
猶浦遠く
すめる月かな
なにしおふ
さかひやいつく
あかしかた
なほうらとほく
すめるつきかな
みるまゝに
ならのはかしは
紅葉して
さほのわたりの
山そしくるゝ
みるままに
ならのはかしは
もみぢして
さほのわたりの
やまそしくるる
さらに又
思ひありとや
しくるらん
室の八島の
浮雲の空
さらにまた
おもひありとや
しくるらん
むろのやしまの
うきくものそら
いたつらに
けふもかさねて
ふりしきぬ
けぬかうへなる
山の白雪
いたつらに
けふもかさねて
ふりしきぬ
けぬかうへなる
やまのしらゆき
をしほ山
尾上の松の
秋風に
神代もふりて
すめる月影
をしほやま
おのえのまつの
あきかぜに
かみよもふりて
すめるつきかげ
またしらぬ
野原の末の
夕附日
しはしなくれそ
いほりさすまて
またしらぬ
のはらのすゑの
ゆふづくひ
しはしなくれそ
いほりさすまて
塩風に
笘のうはふき
ひまみえて
うきねの枕
あけぬ此夜は
しほかぜに
とまのうはふき
ひまみえて
うきねのまくら
あけぬこのよは
年へての
後にも恋の
あらはれは
忍ひけりとや
人にしられん
としへての
のちにもこひの
あらはれは
しのひけりとや
ひとにしられん
こひしぬる
はてをはしらて
逢まての
命をおしく
思ひけるかな
こひしぬる
はてをはしらて
あふまての
いのちをおしく
おもひけるかな
むすひをく
契りは今と
思へとも
なをさきの世を
初なりけん
むすひをく
ちぎりはいまと
おもへとも
なをさきのよを
はじめなりけん
衣〳〵の
袂にわけし
月かけは
たか涙にか
やとりはつらん
きぬきぬの
たもとにわけし
つきかけは
たかなみだにか
やとりはつらん
いかならん
時かはとのみ
おもふかな
人を忘れぬ
心なかさに
いかならん
ときかはとのみ
おもふかな
ひとをわすれぬ
こころなかさに
手にならす
かひこそなけれ
梓弓
ひけは中のみ
遠さかりつゝ
てにならす
かひこそなけれ
あづさゆみ
ひけはなかのみ
とほさかりつつ
くもれとは
思はぬ物を
秋のよの
月になみたの
なとこほるらん
くもれとは
おもはぬものを
あきのよの
つきになみたの
なとこほるらん
年といひて
ことしさへ又
暮にけり
あはれおほくの
老のかすかな
としといひて
ことしさへまた
くれにけり
あはれおほくの
おいのかすかな
里とをみ
塩やくうらは
みえわかて
煙にかゝる
沖つしら波
さととをみ
しほやくうらは
みえわかて
けぶりにかかる
おきつしらなみ
あかすのみ
思ひをかるゝ
かなしさに
このころいたく
月をみる哉
あかすのみ
おもひをかるる
かなしさに
このころいたく
つきをみるかな
いにしへの
恋しさいかに
おほゆらん
きのふの事も
忘らるゝ身に
いにしへの
こひしさいかに
おほゆらん
きのふのことも
わすらるるみに
思ひいての
ありきあらすは
いにしへを
こふる心の
うちそしるらん
おもひいての
ありきあらすは
いにしへを
こふるこころの
うちそしるらん
身におはぬ
かさしなりとも
同しくは
若木の梅の
花やおらまし
みにおはぬ
かざしなりとも
おなじくば
わかぎのうめの
はなやおらまし
Пусть не идёт мне
Это украшение,
Даже так
Стал бы я разве срывать
Ветви молодой сливы?
庭のうへの
水音近き
うたゝねに
枕すゝしき
月をみるかな
にはのうへの
みづおとちかき
うたたねに
まくらすすしき
つきをみるかな