いとゝしく
おる袖ぬれて
春雨に
露さへかゝる
松の藤浪
いととしく
おるそでぬれて
はるさめに
つゆさへかかる
まつのふぢなみ


空清き
雲の浪路を
行月の
御船の山に
秋かせそふく
そらきよき
くものなみぢを
ゆくつきの
みふねのやまに
あきかせそふく


梢より
嵐吹おろす
杣川の
いかたをこゆる
花のしら波
こずゑより
あらしふきおろす
そまかはの
いかたをこゆる
はなのしらなみ


なをさりに
待人はみな
ねぬる夜の
ふけて後なく
郭公かな
なをさりに
まつひとはみな
ねぬるよの
ふけてのちなく
ほととぎすかな


咲そめし
梅よりきくに
うつるまて
花のいく色
なれてみつらん
さきそめし
うめよりきくに
うつるまて
はなのいくいろ
なれてみつらん


朝露を
さきたつ友に
はらはせて
おなし跡ゆく
野への旅人
あさつゆを
さきたつともに
はらはせて
おなしあとゆく
のへのたびひと


おもふらん
心になりて
見る時そ
人のうれへも
身にしられける
おもふらん
こころになりて
みるときそ
ひとのうれへも
みにしられける