初瀬山
弓槻かしたも
あらはれて
今宵の月の
名こそかくれね
はつせやま
ゆつきかしたも
あらはれて
こよひのつきの
なこそかくれね


秋の田の
露しく床の
いなむしろ
月の宿とも
もるいほりかな
あきのたの
つゆしくとこの
いなむしろ
つきのやどとも
もるいほりかな


心して
いたくなゝきそ
きり〴〵す
かことかましき
老のね覚に
こころして
いたくななきそ
きりぎりす
かことかましき
おいのねさめに


吹おろす
ひら山かせや
さむからん
まのゝうら人
衣うつなり
ふきおろす
ひらやまかせや
さむからん
まののうらひと
ころもうつなり


いとゝ又
さそはぬ水に
ねをとめて
氷にとつる
池のうき草
いととまた
さそはぬみづに
ねをとめて
こほりにとつる
いけのうきくさ


おく山の
日かけのかつら
かけてなと
思はぬ人に
みたれそめ剣
おくやまの
ひかけのかつら
かけてなと
おもはぬひとに
みたれそめけむ


あふ人に
とへとかはらぬ
おなし名の
幾日になりぬ
むさしのゝ原
あふひとに
とへとかはらぬ
おなしなの
いくひになりぬ
むさしののはら


月をたに
くもらぬ空に
みし物を
たか面かけの
かきくらすらん
つきをたに
くもらぬそらに
みしものを
たかおもかけの
かきくらすらん


かきくもれ
たのむる宵の
村雨に
さはらぬ人の
こゝろをもみん
かきくもれ
たのむるよひの
むらさめに
さはらぬひとの
こころをもみん


もらすなよ
枕のほかに
しる人も
なく〳〵ちきる
よゝのかねこと
もらすなよ
まくらのほかに
しるひとも
なくなくちきる
よよのかねこと


行末は
うきより外に
なにをかは
むかしはとても
人にかたらん
ゆくすゑは
うきよりほかに
なにをかは
むかしはとても
ひとにかたらん


藤なみの
かけさしならふ
みかさ山
人にこえたる
こすゑをそみる
ふぢなみの
かけさしならふ
みかさやま
ひとにこえたる
こすゑをそみる


さらてたに
いそく山路の
郭公
都のかたの
雲になくなり
さらてたに
いそくやまぢの
ほととぎす
みやこのかたの
くもになくなり