桜花
うつろふ山の
たかねより
あまきる雲に
匂ふ春風
さくらばな
うつろふやまの
たかねより
あまきるくもに
にほふはるかぜ


夜をかさね
身にしみまさる
秋風を
恨かほにも
衣うつ哉
よをかさね
みにしみまさる
あきかぜを
うらみかほにも
ころもうつかな


思ひ侘
身をつくしてや
おなし江に
又立かへり
恋わたりなん
おもひわび
みをつくしてや
おなしえに
またたちかへり
こひわたりなん


一すちに
思ひさたむる
心たに
あらは浮世を
なけかさらまし
ひとすちに
おもひさたむる
こころたに
あらはうきよを
なけかさらまし


神山の
日影のかつら
かさすてふ
とよのあかりそ
わきてくまなき
かみやまの
ひかげのかつら
かさすてふ
とよのあかりそ
わきてくまなき


紫の
藤さか山に
さく花の
千世のかさしは
君かためかも
むらさきの
ふぢさかやまに
さくはなの
ちよのかさしは
きみかためかも


夕すゝみ
身にしむはかり
成にけり
秋の気しきの
森の下かせ
ゆふすすみ
みにしむはかり
なりにけり
あきのけしきの
もりのしたかせ


今よりは
身にしむ物と
秋風の
吹につけてや
ころもうつらん
いまよりは
みにしむものと
あきかぜの
ふきにつけてや
ころもうつらん


恋すてふ
袖しのうらに
引網の
めにたまらぬは
涙なりけり
こひすてふ
そでしのうらに
ひくあみの
めにたまらぬは
なみだなりけり


幾度か
わか身ひとつに
秋をへて
袖の涙に
月をみるらん
いくたびか
わかみひとつに
あきをへて
そでのなみだに
つきをみるらん


友鶴の
むれゐしことは
むかしにて
みしまかくれに
音をのみそなく
ともつるの
むれゐしことは
むかしにて
みしまかくれに
ねをのみそなく


いかなりし
むくひなれはか
身はかくて
朽木の杣に
年のへぬらん
いかなりし
むくひなれはか
みはかくて
くちきのそまに
としのへぬらん


さくらはな
空さへ匂ふ
山風に
うつろふ雲の
跡もさためす
さくらはな
そらさへにほふ
やまかぜに
うつろふくもの
あともさためす


幾秋か
我身ひとつの
夕暮と
千ゝに物思ふ
年のへぬらん
いくあきか
わがみひとつの
ゆふくれと
ちゝにものおもふ
としのへぬらん


さても又
遠山鳥の
をのつから
まてと契し
ほとそすきゆく
さてもまた
とほやまどりの
をのつから
まてとちぎりし
ほとそすきゆく


色見えて
うつろふ人の
心より
花はつれなき
物としりにき
いろみえて
うつろふひとの
こころより
はなはつれなき
ものとしりにき


あまの住
里のしるへを
うらみても
行方しらす
立けふりかな
あまのすむ
さとのしるへを
うらみても
ゆくへしらす
たけふりかな


物思へは
秋もおほろの
月影に
涙うらみぬ
夕くれそなき
ものおもへは
あきもおほろの
つきかげに
なみだうらみぬ
ゆふくれそなき


吹風の
花にあまきる
霞まて
うらみかねたる
春の明ほの
ふくかぜの
はなにあまきる
かすみまて
うらみかねたる
はるのあけほの