つれなくも
猶長らへて
思ふかな
うき名を惜む
心ばかりに
つれなくも
なほながらへて
おもふかな
うきなををしむ
こころばかりに


月影は
思ひ絶えたる
五月雨の
雲より出づる
ほとゝぎす哉
つきかげは
おもひたえたる
さみだれの
くもよりいづる
ほととぎすかな


軒近き
松の木ずゑに
音づれて
袖に知らるゝ
秋のはつかぜ
のきちかき
まつのこずゑに
おとづれて
そでにしらるる
あきのはつかぜ


存らへて
今朝や嬉しき
老の浪
八千代をかけて
君に仕へよ
ながらへて
けさやうれしき
おいのなみ
やちよをかけて
きみにつかへよ


のどかなる
梢ばかりと
思ひしに
散るも盛りと
見ゆる花哉
のどかなる
こずゑばかりと
おもひしに
ちるもさかりと
みゆるはなかな


花にふる
日數も知らず
今日とてや
古郷人の
我を待つらむ
はなにふる
ひかずもしらず
けふとてや
ふるさとひとの
われをまつらむ


明くるだに
惜まぬ物を
暮ればとは
心の外の
空だのめかな
あくるだに
をしまぬものを
くればとは
こころのほかの
そらだのめかな


見わたせは
麓はかりに
咲初て
花もおくある
みよしのゝ山
みわたせは
ふもとはかりに
さきそめて
はなもおくある
みよしののやま


と山なる
ならのはまては
はけしくて
お花か末に
よはる秋風
とやまなる
ならのはまては
はけしくて
おはなかすゑに
よはるあきかぜ


色にいてぬ
思ひのみこそ
ときは山
我身しくれは
ふるかひもなし
いろにいてぬ
おもひのみこそ
ときはやま
わがみしくれは
ふるかひもなし


はる〳〵と
いや遠さかる
あまを舟
なかむるはては
霞なりけり
はるばると
いやとほざかる
あまをぶね
ながむるはては
かすみなりけり


住吉の
松にしら雪
ふるからに
声よはりぬる
奥つ塩風
すみよしの
まつにしらゆき
ふるからに
こゑよはりぬる
おくつしほかぜ


色かへぬ
竹の葉しろく
月さえて
つもらぬ雪を
はらふ秋風
いろかへぬ
たけのはしろく
つきさえて
つもらぬゆきを
はらふあきかぜ


梅かえの
花のありかを
しらねとも
袖こそにほへ
春の山風
うめかえの
はなのありかを
しらねとも
そでこそにほへ
はるのやまかぜ


はるさめの
降とは空に
みえねとも
きけはさすかに
軒の玉水
はるさめの
ふりとはそらに
みえねとも
きけはさすかに
のきのたまみづ


杣人の
とらぬまきさへ
流るなり
にふの河原の
五月雨の比
そまびとの
とらぬまきさへ
ながるなり
にふのかはらの
さみだれのころ


軒白き
月の光に
山かけの
やみをしたひて
ゆく蛍かな
のきしらき
つきのひかりに
やまかけの
やみをしたひて
ゆくほたるかな


またしらぬ
うきねのとこの
波よりも
なれたる月の
袖ぬらすらん
またしらぬ
うきねのとこの
なみよりも
なれたるつきの
そでぬらすらん


我恋は
人しらぬまの
あやめ草
あやめぬ程そ
ねをも忍ひし
わがこひは
ひとしらぬまの
あやめくさ
あやめぬほどそ
ねをもしのひし


晴ゆくか
たゝよふ雲の
たえまより
星みえそむる
村雨の空
はれゆくか
たたよふくもの
たえまより
ほしみえそむる
むらさめのそら