人はかる
心の隈は
きたなくて
きよき渚を
いかですぎけむ
ひとはかる
こころのくまは
きたなくて
きよきなきさを
いかですぎけむ
近きだに
きかぬ禊を
何かその
から神までは
遠くいのらむ
ちかきだに
きかぬみそぎを
なにかその
からかみまでは
とほくいのらむ
根蓴の
苦しき程の
絶間かと
たゆるをしらで
思ひけるかな
ねぬなはの
くるしきほどの
たえまかと
たゆるをしらで
おもひけるかな
たぐひなく
よに面白き
鳥なれば
床しからずと
誰か思はむ
たぐひなく
よにおもしらき
とりなれば
とこしからずと
たれかおもはむ
折りてみる
色よりもなほ
梅の花
深くぞ袖の
香は匂ひける
をりてみる
いろよりもなほ
うめのはな
ふかくぞそでの
かはにほひける
烏羽玉の
夢の浮橋
あはれなど
人目をよきて
戀ひ渡るらむ
むばたまの
ゆめのうきはし
あはれなど
ひとめをよきて
こひわたるらむ
おのづから
逢ふ夜もあらば
須磨の蜑の
鹽燒衣
まどほなり共
おのづから
あふよもあらば
すまのあまの
しほやくころも
まどほなりとも
跡をとふ
人だになくば
友千鳥
しらぬ浦路に
猶やまよはむ
あとをとふ
ひとだになくば
ともちとり
しらぬうらぢに
なほやまよはむ
いかにして
朽ちだにはてむ
名取河
瀬々の埋木
現れぬまに
いかにして
くちだにはてむ
なとりかは
せぜのうもれき
あらはれぬまに
あけぬとも
心あるべき
別路を
など鳥の音に
喞ち初めけむ
あけぬとも
こころあるべき
わかれぢを
などとりのねに
かこちそめけむ
千早ぶる
松のをやまの
郭公
神もはつねを
けふやきく覽
ちはやぶる
まつのをやまの
ほととぎす
かみもはつねを
けふやきくらん
思ひ出む
後とはいはじ
今のまの
名殘の*
有明の月
おもひいでむ
のちとはいはじ
いまのまの
なごりの*
ありあけのつき
しめ〴〵と
今宵の雨の
ふるまひに
奉行の人の
氣色をぞしる
しめじめと
こよひのあめの
ふるまひに
ぶぎやうのひとの
けしきをぞしる
ともし火の
かげもはづかし
天河
あめもよにとや
渡りかぬ覽
ともしひの
かげもはづかし
あまのがは
あめもよにとや
わたりかぬらん
雲の上に
猶澄ながら
秋のよの
月をさやかに
などかみざらん
くものうへに
なほすみながら
あきのよの
つきをさやかに
などかみざらん
九重に
ちよをかさねて
みゆるかな
大内山の
今朝のしらゆき
ここのへに
ちよをかさねて
みゆるかな
おほうちやまの
けさのしらゆき
いつのよも
忘れやはせむ
しら雪の
古き御垣に
すめる月影
いつのよも
わすれやはせむ
しらゆきの
ふるきみかきに
すめるつきかげ
身におへば
さぞ思ふ覽
たけのこの
てをはなつよの
心迷ひに
みにおへば
さぞおもふらん
たけのこの
てをはなつよの
こころまよひに
しばしまて
うちたれ髪の
差櫛を
さし忘れたる
時のまばかり
しばしまて
うちたれかみの
さしぐしを
さしわすれたる
ときのまばかり
色かはる
をりも有りけり
かすがやま
松をときはと
何思ひけむ
いろかはる
をりもありけり
かすがやま
まつをときはと
なにおもひけむ
春ごとの
花は又とも
たのみなむ
さらぬ別れよ
いつを待つらん
はるごとの
はなはまたとも
たのみなむ
さらぬわかれよ
いつをまつらん
津の國の
難波もしらぬ
世の中に
いかでかあまの
袖ぬらすらん
つのくにの
なにはもしらぬ
よのなかに
いかでかあまの
そでぬらすらん
契ありて
すむべき月の
かげ迄も
空にぞしるき
秋のよろづよ
ちぎりありて
すむべきつきの
かげまでも
そらにぞしるき
あきのよろづよ
雲の上や
しるきみ垣の
内にのみ
くるゝよすがら
もるや殿守
くものうへや
しるきみかきの
うちにのみ
くるるよすがら
もるやとのもり
うちわびぬ
心くらべの
つゑなれば
月みて明かす
名こそ惜しけれ
うちわびぬ
こころくらべの
つゑなれば
つきみてあかす
なこそをしけれ
戀すてふ
名をながしたる
水莖の
跡をみつゝも
袖ぬらせとや
こひすてふ
なをながしたる
みづぐきの
あとをみつつも
そでぬらせとや
思ひあまり
心にかゝる
夕ぐれの
花の名殘も
有りとこそきけ
おもひあまり
こころにかかる
ゆふぐれの
はなのなごりも
ありとこそきけ
秋のよの
月に冴えたる
鐘の音に
やがてもときの
うつりぬる哉
あきのよの
つきにさえたる
かねのねに
やがてもときの
うつりぬるかな
菊のうへに
おきゐる露も
有るものを
たれ徒らに
ねであかす覽
きくのうへに
おきゐるつゆも
あるものを
たれいたづらに
ねであかすらん
秋風の
身にしむばかり
うれしきや
なほ人しれぬ
心成るらん
あきかぜの
みにしむばかり
うれしきや
なほひとしれぬ
こころなるらん
やがて我が
心ぞ移る
ときは井の
水にやどれる
月ならね共
やがてわが
こころぞうつる
ときはゐの
みづにやどれる
つきならねとも
あくがるゝ
心くらべも
ある物を
なほ尋ねみよ
秋のよの月
あくがるる
こころくらべも
あるものを
なほたづねみよ
あきのよのつき