この男、言ひすさびにけるに、□□□なりにけり。
この男、言ひすさびにけるに、□□□なりにけり。

* 底本、三字程度判読不能。「七月に」(萩谷朴)・「女はかなう」(目加田さくを)などの説がある。
さりければ、七日に河原に行きて遊びけるに、この男、夢ごと会ひて、見もえ会はせで、言のかよひは時々言ひかよはす人の車ぞ来て、河原に立ちにける。
さりければ、七日に河原に行きて遊びけるに、この男、夢ごと会ひて、見もえ会はせで、ことのかよひは時々言ひかよはす人の車ぞ来て、河原に立ちにける。


供なる人々、見て言ふを聞きて、男、
供なる人々、見て言ふを聞きて、男、


「かう近きことの嬉しきこと。これをば天の川となん思ひぬる」など言ひはせて、男、
「かう近きことの嬉しきこと。これをば天の川となん思ひぬる」など言ひはせて、男、


彦星に
今日はわが身を
なしてしが
暮れなば天の
川渡るべく
ひこぼしに
けふはわがみを
なしてしが
くれなばあまの
かはわたるべく


と言はせたれば、女、見には見て、つつむ人などやありけん、「ただ暮れなば、かしこにを」と言ひて、去にけり。
と言はせたれば、女、見には見て、つつむ人などやありけん、「ただ暮れなば、かしこにを」と言ひて、にけり。


されば、「日や暮るる」と、いつしか行きて会ひにけり。
されば、「日や暮るる」と、いつしか行きて会ひにけり。


またのつとめて、男。
またのつとめて、男。


天の川
今宵も渡る
瀬もやあると
雲の空にぞ
身はまどふべき
あまのかは
こよひもわる
せもやあると
くものそらにぞ
みはまどふべき


返し、女。
返し、女。


七夕の
会ふ日に会ひて
天の川
誰によりてか
瀬を求むらむ
たなばたの
あふひにあひて
あまのかは
たれによりてか
せをもとむらむ


と言へり。
と言へり。


いたく人につつむ人なりければ、「わづらはし」とて、男、やみにけり。
いたく人につつむ人なりければ、「わづらはし」とて、男、やみにけり。