また、この同じ男、この二年ばかり、もの言ひすさぶる人ぞありける。
また、この同じ男、この二年ふたとせばかり、もの言ひすさぶる人ぞありける。


「いかで、なほ対面せむ」といふ心ぞ、せちにありける。
「いかで、なほ対面せむ」といふ心ぞ、せちにありける。


返り事に、女、かくなむ。
返り事に、女、かくなむ。


わたつ海の
底にあれたる
みるめをば
三年漕ぎてぞ
海人は刈りける
わたつうみの
そこにあれたる
みるめをば
みとせこぎてぞ
あまはかりける


男、返し
男、返し


うらみつつ
春三返りを
漕がむ間に
命絶えずは
さてややみなん
うらみつつ
はるみかへりを
こがむまに
いのちたえずは
さてややみなん


かかるほどに、この男、「死ぬべく病みてなむ」と告げければ、問はでやみにければ、さて、やみにけり。
かかるほどに、この男、「死ぬべく病みてなむ」と告げければ、問はでやみにければ、さて、やみにけり。