立ち別れ聞こえし日より、落つる涙の絶え間に、目も霧りて見えぬにも、目さへ見えずなりて、長らへむ命の、心憂く、今日にても死なまほしく待つに、いとわりなかりし心地にも、死なずなりにしも、いと心憂く思ゆ。



「よその人は、深く世をあはれと思ひたる気色にも、心一つのみわびしくて、わびては、これ、この世のことにあらじ、先の世に契りおきてこそ、仇敵なることもあんなれ、これは多くの年ごろ、飽かぬことなくて、あらせ給へるかぎりの、ありける月日のかぎりにや」と思ひなせど、心の中は、慰む方なくて、今は、ただ律師一人あつかひ給ふぞ、いとほしく思ゆる。
「よその人は、深く世をあはれと思ひたる気色にも、心一つのみわびしくて、わびては、これ、この世のことにあらじ、先の世に契りおきてこそ、仇敵あたかたきなることもあんなれ、これは多くの年ごろ、飽かぬことなくて、あらせ給へるかぎりの、ありける月日のかぎりにや」と思ひなせど、心の中は、なぐさむ方なくて、今は、ただ律師りし一人あつかひ給ふぞ、いとほしく思ゆる。


よろづにつけて恋しく、「などて、ただ、いみじき声を出して泣きまどひても、ひかへとどめ聞こえずなりにけむ」と悔しうぞ。



「日ごろ仏に申すは、『いたくな思ひ泣かせ給ひそ』とのたまひし験に、仏、まどひて出だしやり奉りたるなめり」とぞ、心憂く思ゆる。
「日ごろ仏に申すは、『いたくな思ひ泣かせ給ひそ』とのたまひししるしに、仏、まどひて出だしやり奉りたるなめり」とぞ、心憂く思ゆる。


「いかにも、必ず詣で来て、おはし・おはせず、見むとす」と言ひ置かれし。
「いかにも、必ずで来て、おはし・おはせず、見むとす」と言ひ置かれし。


遥かにと
たち別れにし
唐衣
きて見るまでは
経べきわが身か
はるかにと
たちわかれにし
からころも
きてみるまでは
ふべきわがみか


ただ、夜昼泣くよりほかのことなくて、涙のみぞ、尽きせぬ身を知るたぐひにて、暮し明かさるる。



言ふかひも
なみだの川に
沈みたる
みをも誰かは
深くたづねん
いふかひも
なみだのかはに
しずみたる
みをもたれかは
ふかくたづねん