常は心地の悪しく、このごろもするにや、顔も身も腫れて、例ならず苦しう侍るにも、「死なむとするにこそは」と思ゆる心地、ともすればかき乱りて、われにもあらずかき乱るやうなるにも、「極楽に必ず参りなむ」とのみぞ、「泥の中の蓮」と譬ひあれば、乱れたる心地なりとも、頼みて侍るなり。
常は心地の悪しく、このごろもするにや、顔も身も腫れて、例ならず苦しう侍るにも、「死なむとするにこそは」と思ゆる心地、ともすればかき乱りて、われにもあらずかき乱るやうなるにも、「極楽に必ず参りなむ」とのみぞ、「でいの中のはちす」と譬ひあれば、乱れたる心地なりとも、頼みて侍るなり。


はかりなき
国を過ぎたる
極楽も
心の内は
絶えぬとぞ聞く
はかりなき
くにをすぎたる
ごくらくも
こころのうちは
たえぬとぞきく


うたた寝の
ほども忘れず
極楽を
夢にも見むと
思ふ心も
うたたねの
ほどもわすれず
ごくらくを
ゆめにもみむと
おもふこころも


なほ、この唐の文のたよりに、ここに文のなき、いとおぼつかなく思えて、
なほ、このたうふみのたよりに、ここに文のなき、いとおぼつかなく思えて、


おぼつかな
ふみ見てしがな
極楽に
降るらむ花の
跡と思ひて
おぼつかな
ふみみてしがな
ごくらくに
ふるらむはなの
あととおもひて


「極楽に必ず参りあへ」とありし、思ひ出でられて、



極楽の
蓮の上を
待つほどに
つゆのわが身ぞ
置き所なき
ごくらくの
はちすのうへを
まつほどに
つゆのわがみぞ
おきところなき


と思ひつつ、明かし暮しても、朝の日の、雲を払ひて出づるにも、「日にそへて作りけむ罪を、つゆも残さず消やし給へ」と念じ、夕べの月の光を見ても、「にやせんまで誘ひ給へ」と頼む。
と思ひつつ、明かし暮しても、あしたの日の、雲を払ひて出づるにも、「日にそへて作りけむ罪を、つゆも残さず消やし給へ」と念じ、夕べの月の光を見ても、「にやせんまで誘ひ給へ」と頼む。


鷲の山
のどかに照らす
月こそは
まことの道の
しるべとは聞け
わしのやま
のどかにてらす
つきこそは
まことのみちの
しるべとはきけ


朝日待つ
露の罪なく
消え果てば
夕べの月は
誘はざらめや
あさひまつ
つゆのつみなく
きえはてば
ゆふべのつきは
さそはざらめや


とこそは頼み侍れ。