唐物語 - 第1話 王子猷山陰といふ所に住みけり・・・
ことに触れて、情け深き人なりければ、月の光清くすさまじき夜、一人起きゐて、なぐさめがたくや思えけん、高瀬舟に竿差しつつ、心にまかせて戴安道を尋ね行くに、道のほど遥かにて、夜も明け、月も傾きぬるを、本意ならずや思ひけむ、かくとも言はで、門のもとより立ち帰りけるを、「いかに」と問ふ人ありければ、
ことに触れて、情け深き人なりければ、月の光清くすさまじき夜、一人起きゐて、なぐさめがたくや思えけん、高瀬舟に竿差しつつ、心にまかせて戴安道を尋ね行くに、道のほど遥かにて、夜も明け、月も傾 きぬるを、本意 ならずや思ひけむ、かくとも言はで、門 のもとより立ち帰りけるを、「いかに」と問ふ人ありければ、
戴安道=戴逵