昔、潘安仁という人ありけり。



姿、有様、たぐひなくなまめしく清げにて、その形は玉なとのよく光る様にぞ見えける。
姿、有様、たぐひなくなまめしく清げにて、その形はたまなとのよく光る様にぞ見えける。


秋のあはれを述べて賦に作り、事に触れて情け深くやさしければ、世の中にありける女、さながら、名なを聞き形を見るより、下燃えの煙絶ゆるときなかりけり。
秋のあはれを述べて賦に作り、事に触れて情け深くやさしければ、世の中にありける女、さながら、名なを聞き形を見るより、下燃えのけぶり絶ゆるときなかりけり。


車に乗りて道を行くに、道に会ひける女、思ひのあまりにや、橘の枝を取りて、車の内に投げ入れけり。



人ごとにかくしければ、果物、車に余りにけり。



巡り会ふ
こともやあると
唐車
つみ余るまで
なれる橘
めぐりあふ
こともやあると
からくるま
つみあまるまで
なれるたちばな