この女、かばかり醜き人とも知らず、あひそめにければ、くやしき事取り返すばかりに思えけれど、いふかひなくて明かし暮らすに、良き事、悪しきこと、すべて物いはず、えも笑はで、世の常はむすぼほれてのみ過ぐしけるを、男、たぐひなく「憂し」と思ひて、「この女に物言はせ、うち笑ませばや」としけれども、いかにもかひなくて三年にもなりにけるに、春、野辺に出でて、もろともに遊び侍りけり。
この女、かばかり醜き人とも知らず、あひそめにければ、くやしき事取り返すばかりに思えけれど、いふかひなくて明かし暮らすに、良き事、悪しきこと、すべて物いはず、えも笑はで、世の常はむすぼほれてのみ過ぐしけるを、男、たぐひなく「憂し」と思ひて、「この女に物言はせ、うち笑ませばや」としけれども、いかにもかひなくて三年 にもなりにけるに、春、野辺に出でて、もろともに遊び侍りけり。