このうちに緑珠と聞こゆる舞姫なん、あまたの中にも優れたりければ、身に代ふばかり浅からず思へりけり。
このうちに緑珠と聞こゆる舞姫なん、あまたの中にも優れたりければ、身に代 ふばかり浅からず思へりけり。
浅からず=底本、「ら」に「か歟」と傍書。諸本「あさからす」
かくて月日を送るに、時の政を執れる人孫秀、この緑珠がたぐひなきありさまを聞く度に、人伝ならざらんことを懇ろに思へりければ、堪へかねて、色に出でぬ。
かくて月日を送るに、時の政 を執れる人孫秀、この緑珠がたぐひなきありさまを聞く度 に、人伝 ならざらんことを懇 ろに思へりければ、堪へかねて、色に出でぬ。
石季倫、「身をはかなきになすとも、心弱はからじ」と思へるを、この人、負けじ心のいちはやさに、兵を集め、勢ひをきはめて、心ざしをやぶる。
石季倫、「身をはかなきになすとも、心弱はからじ」と思へるを、この人、負けじ心のいちはやさに、兵 を集め、勢ひをきはめて、心ざしをやぶる。