かかるままには、寝ても覚めても、このことの忍びがたきを、また言ひ合はする人だになかりけれど、芹を摘み地に臥して、年ごろになりぬれば、さるべきことにや、浅からぬ心の内をそらに知らせ給ひにける。
かかるままには、寝ても覚めても、このことの忍びがたきを、また言ひ合はする人だになかりけれど、芹 を摘み地に臥して、年ごろになりぬれば、さるべきことにや、浅からぬ心の内をそらに知らせ給ひにける。
あはれにいみじくは思されながら、心に任せぬ御身のふるまひなれば、慰む方さらになくて明かし暮らすに、いかなるひまかありけむ、夢に夢見る御心地して、下紐解けさせ給ひにけり。
あはれにいみじくは思されながら、心に任せぬ御身のふるまひなれば、慰む方さらになくて明かし暮らすに、いかなるひまかありけむ、夢に夢見る御心地して、下紐 解けさせ給ひにけり。
唐国の習ひにて、かやうの事世に聞こえぬれば、いみじき大臣・公卿なれども、たちどころに命を召さるる事なれば、またも逢ひ見給はず、后もあはれにたぐひなく思されながら、雲のかけ橋途絶えがちにて、文伝ふばかりの道だになければ、この男、七夕の年に一夜の契をさへ羨みて、人知れぬ涙のみぞ絶ゆる時なかりける。
公卿=底本「しし」。諸本も同じだが、「公卿」を「志々」と誤ったものと見て訂正
思され=底本「おほそれ」。諸本により訂正
思され=底本「おほそれ」。諸本により訂正