今昔物語集
- 巻28第26話 安房守文室清忠落冠被咲語 第廿六
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今昔、安房守文室の清忠と云ふ者有き。
Ава
外記の労にて安房守に成たる也。
Ава
其れが、外記にて有し間だ、面はしたり顔にて気悪*気にて、長く去張*てなむ有し。
* 「にく」底本異体字。りっしんべんに惡
* 底本頭注「去張(ノサバリ?下文云張ニ作ル」
亦、出羽守大江の時棟と云ふ者有き。
Дэва
其れも同時に外記也し時、腰屈て嗚呼付てなむ有る。
而る間、除目の時に、陣の定めに、陣の御座に召されて、清忠・時棟並て箱文を給はる間、時棟、笏を以て手を廻して指すに、清忠が冠に当て打落しつ。
上達部、此れを見て、咲ひ喤り給ふ事限無し。
其の時に、清忠、迷て土に落たる冠を取て指入て、箱文も給はらずして逃て去にけり。
時棟は奇異気なる顔してぞ、立てりける。
其の比の世の咲ひ物には、此の事をなむしける。
思ふに、実に何かに奇異かりけむ。
清忠も、時棟も、遥に年老るまでなむ有しかば、此なむ語り伝へたるとや。