御てうどどもも、あるべきさまにてみだりがはしからず、わきていみじからぬものなりとも、うたてげにとりなすこと候はで、心ばかりにもとゝのへ、はかなうもてならす扇のひとつも、見所あるやうにしてもたせたまひ候べく候。
中々にぎはゝ敷、ゆたかなる人のあたりは、よのきらにもてなされて、なんにも覺えぬこと有げに候。
その御身などにはけぢめありぬべく候へば、ことふれ*「ことふり」か.
すたれず、なさけふかきやうによういして、「その人のまへは心にくゝ。」などいはれさせたまひ候べく候。
かく申候へばとて、よろづにそみ返り、物めでするさまにもて出て、「えんある氣色あるさま人にみえん。」などは、おぼしめし候まじく候。
はな〴〵とあいぎやうづき、けぢかきもてなしの過候ぬれば、なにわざにつけてもなんになることにて候。
「月も秋のさやかなるかげよりも、冬、霜夜にさえわたりて、氷にまがふ色は、心にしめられ、春の花、秋のもみぢのはえ〴〵しき色よりも、霜がれのせんざいのそこはかとなくかれ行て、『たれにとはまし秋の名殘を』と、さながら雪のしたにうづもれて、心ぐるしげなるかれ野などのわきてあはれにおぼえ候心ならひに、花の色、秋のもみぢをも、人にたがひて、すさめたる御氣色見えさせ給はずとも、ことにふれてけはやからず、物あはれなるかたに御心とゞめて、このませおはしまし候へ。」とおもひまゐらせ候。
ものの色あひもはれ〴〵とうつくしく、たつた姫のにしきをそめかさね、花のたもとをたちそへ、にぎはゝしく、
「『あな、けざやか。』など、めにたつていには。」とて、
うは邊は、をりにつけ時にしたがふやうに候とも、御心のうちには、ものさび、あひなきかたによりて、おほどかなるさまをしめさせ給ひ候べく候。