らうたくうつくしき人の、そのかたちのうきよにならびなく候とも、「心さだまらず。」など候へば、「いたづらごとよ。」とおんこゝろをそへて、いかにあらまほしくおぼしめす御ことありとも、おのづから人ももり聞て、もどきそしりぬべからんことは、御心にこころをかたらひて、おぼしめしわすれ候へ。
たとへひとのいみじうつらき御事候とも、「いろに出て人に見えんははづかしかりぬべきこと。」とおぼしめして、
さらぬかほにてはありながら、さすがに「えやは。」と*覺えて、ことずくななるやうに御もてなし候へ。
また、うれしう御心にあふ事候とも、こと葉に「うれしや。ありがたや。」などおほせごとあるまじく候。
うきも、つらきも、うれしきも、御心に能おぼしめしわきて見え候はんぞ。
また、「人のこゝろのうちなどを」とこそありけれ、「かかる心のして」など、人にもおほせられ、さたする事あるまじく候。
御心のうちばかりにて、よくおぼしめしとゞめて、我心、身のうへをも、人の事をも、おぼろけのひとにうちかたらひ、色見ゆる御ことなど候はで、大かたに何事をも、御心のうちばかりにおぼしめしわき候へ。
あさはかに物などおほせられ候はんはあしき事にて候ぞ。
さればとて、あまりに上ず**びてにくい*したるもわろく候へば、そのほどはわきまへ、ふるまはせ給ひ候へ。