何よりも心みじかく、ひきゝりなるが*、あなづらはしく、わろき事にて候。


* 性急なのが
なが〳〵と「何事も、あるやうあらんずらむ。」とおもひのどめたるが、なだらかによく候。



さればとて、大やけわたくしにつけて、いそぐべからんことを、いふかひなくて、月日をおくり、時をうつされ候はんはわろく候。



人にもうちたのまれ、御こと葉をもまぜたらんことをば、きは〴〵しう*すゑとほる*やうに、はかなからんことをも、我御身の手をもふれ、いろひ*たらせたまひ候へ。


* てきぱきと
* 成し遂げる
* 世話を焼く
かく申候へばとて、にくいけしてさし過、さか〳〵しうおもだつさまの御もてなしは、ゆめ〳〵候べからず。



たゞおいらかにうつくしき御さまながら、よしあしを御覽じとゞめて、ことよく申よらん人にもおぼろけにて御心うつさず、また氣にくうもてはなれなどせで、大かたにつけてひとをはぐくみ、なさけあるやうにあはれむはよき事にて候。



とめるをば、人ごとにうらやみ、おもくするならひにて候。



まことに、それほどいかでなくては候べきなれども、御心のうちには、まづしきをあはれなる物にかずまへおもふがほんたい*にて候。


* 本来
たとへば、人のうへをそしり、にくみなどしても、しのぶ事をいひあらはし、うちさゞめきなど、かたへの人の候はんに、露ばかりこと葉まぜさせおはしまし候まじく候。



あやまりて、



「*人はなにとかまうしつる。いかゞ。」などたづねまゐらすること候とも、


* 世間の
「いさ、なにとやらん。あらぬことをいひしほどに、きかずなりにけり。」など、はかなげにおほせられなして、ことざまなる*御あひしらひ候べく候。


* 無関係な風の
人になさけをかけ、あはれかはすさまの御心むけはあるべく候。



しる人ごとにいたづらなるすゞろふみしげくかきかはす事、よからぬ事にて候。



なべてひとにくからぬもてなしにて、さる物から、とりなしうちとけたるむつごとの心よせ*ある御しる人には、おぼろけならず、えらびておぼしめしかはすべく候。


* 好意