人の心ほど、うちとけにくうおそろしきものは候はぬぞ。



「何のみちに車をくだき、なにの海に舟をうかべたらんよりも。」と、ふかく申ならはして候へば、よく〳〵やうあることとおぼえ候ぞ。



かへす〴〵御心得候べく候。



我めしつかふ人々の中にも、おとなしく、さもありぬべからんには、物をもおほせられあはせ、うちたのむやうにあたらせたまひなどして、わかうさいど*才度か。



なからんには、たゞいまにくからぬやうにおぼしめし候とも、ひたひさしあはせて、御きそくよげにうちさゝやき、たはぶれかはしなどするも、かろ〴〵しく、あなづらはしきことにて候。



さやうの御わきまへは、「さりとも。」と御心やすくおもひまゐらせて候へども、わかきほどの心は、おもふにつけて人のもてなし*によることも候へば、なほうしろめたきやうにてこれまで申候。


* 仕向け