又、人のすがた・もてなしなどはむまれつきたることにては候へども、それもさすがに心むけにより候へば、「ほのかならんうしろでをも、こは〴〵しからぬやうにみさほに*もてなさば、よろしくはなどか見えざらん。」とおぼえ候。


* 上品に
ひぢのかかり*もてすゝみ、なますゞろく*きはゝ、何と申にもおよび候はず。


* 肘の関節
* そわそわと落ち着かない
たゞなべてよきほどに人とうら〳〵とむかひて、御かほのおきどころ、づしやかに*、すがたうつくしくゐなして、水どりのうきたるさまおぼえて、御袖のおひやう*、おもひはづさずこゝろをそへて、*のはづれゆかしきさまにもてなして、御ぐしのかゝりもおほどかにすだれぬさまながら、「あまりよし有。」と、わざとめかしからぬやうにはづかしきかたをそへて、おほどかによういくはへて御ふるまひ候へ。


* 落ち着いて
* 覆い具合
* 几帳
うちさら*どき、あいぎやうづき、にぎはゝしくなどあるまじく候。


* う歟
かく申候へばとて、さるべき人のまゐりて候はんずるに、神さび物どほくて*、春日野の雪のあした、かものやしろのかはなみなどおぼえたるやうには候まじく候。


* よそよそしく
たゞ御もてなしばかりのおもりかに、あさはかならぬすぢのありたく候。



わざともひとをわかず、なつかしき御人ざまにてありたく候。



人のきは〴〵をおぼしめしわくべく候。



ひとにむかひてなにのすぢともなきものがたりして、代つぎがよゝり、この御代までのこと葉もつづかず、時よもしらぬいたづらものがたりなどおほせられ候まじく候。



みすのきはちかくゐよりて、たれがかうむりのひたひつき、くつのおとなど申わらふ人の候はんに、ゆめ〳〵こと葉まぜさせ給候まじく候。



すべてひとのとしよりもおとなしくおよすげたるがよく候。



人にいみやうつけなどしてわらひ、心しれるどちめ見あはせて、人のあまねくしらぬほどの事、うちわらひ、「そゝや。」などさゝやきて、おのづから「なぞや。」などとふ人あれば、「たゞさることの。」などとて、氣色ばみたる事、かへす〴〵くちをしき事にて候なり。