かくて、ほどなく年も返りぬれば、また三月十七日もめぐり逢ひぬ。
かくて、ほどなく年も返りぬれば、また三月十七日もめぐり逢ひぬ。
しめの外なる伏屋*にうづもれ過しぬるも、おなじ浮世にめぐれども、
しめの外なる伏屋にうづもれ過しぬるも、おなじ浮世にめぐれども、
猶かひなき身なりけり、と口惜しく覺ゆるに、道のたより梢ばかりをよそに見るも、なか〳〵なる心地して、大納言殿花につけて、
月もすむ
雲井の花を
よそに見て
なれしむかしの
今日ぞこひしき
つきもすむ
くもゐのはなを
よそにみて
なれしむかしの
けふぞこひしき
おしなべて
やよひの今日を
忘れぬを
花ゆゑにこそ
思ひ出でけれ
おしなべて
やよひのけふを
わすれぬを
はなゆゑにこそ
おもひいでけれ
花ゆゑとかや見ゆるも恨めしく、その世の事も只今の心地して、今宵は入るまで月を見るもかはゆく、われながらをかしく、興さめて覺えながら、
雲の上の
月にこころは
すむものを
しめの外にや
おもひなすらむ
くものうへの
つきにこころは
すむものを
しめのほかにや
おもひなすらむ
猶はかなく、大方の數には漏れぬこともや、と覺ゆるぞをかしき。