をかし東の五條に扇子屋のかゝわづらふありけり。



西の洞院にくずし有けり。



それは本道にはあらで、針に心ふかゝかりけるゆへ行とぶらひけるを、む月の十日ばかりの程にほかと腫にけり。



はれ所はきけど、人の見るべき所にもあらざりければ、猶うしとおもひつゝなむ有りける。



又の年のむ月には目と鼻との間に出で腫て立てみ、ゐてみ、みれど、去年ににるべくもあらず。



打笑て肋骨もいたきにつらのゆかむまで笑て去年を思ひてよめる。



つらやあらぬ
鼻やむかしの
鼻ならぬ
吾身ひとつは
もとの身にして
つらやあらぬ
はなやむかしの
はなならぬ
わがみひとつは
もとのみにして


とよみて夜のほの〳〵と明るに。



なく〳〵おきにけり。