人の居所の四方に木をうゑて、四神具足の地となすべき事
流水なもしそのけれバ、柳九本をうゑて青竜の代とす。
かくのごときして、四神相応の地となしてゐぬれバ、官位福禄そなはりて、無病長寿なりといへり。
かるがゆヘニ、孤独長者が祗洹精舎をつくりて、仏ニたてまつらむとせし時も、樹のあたひにわずらひき。
しかるを祗蛇大子の思やう、いかなる孤独長者か、黄金をつくして、かの地しきみてて、そのあたひとして、精舎をつくりて、尺尊ニたてまつるぞや。
ただこれを仏にたてまつりてむとて、樹を尺尊にたてまつりをはりぬ。
祗蛇がうゑにき孤独がその、といへるこころなるべし。
秦始皇が書を焼き、儒をうづみしときも、種樹の書おばのぞくべしと、勅下したりとか。
仏ののりをとき、神のあまくだりたまひける時も、樹をたよりにとしたまへり。
樹は青竜白虎朱雀玄武のほかハ、いづれの木をいずれの方にうへむとも、こころにまかすべし。
但古人云、東ニハ花の木をうへ、西ニはもみぢの木をうふべし。
若いけあらば、嶋ニハ、松柳、釣殿のほとりニハかへでやうの、夏こだちすずしげならん木をうふべし。
大臣の門に槐をうゑて槐門となづくること、大臣ハ人を懐て、
但門柳ハしかるべき人、若ハ時の権門にうふべきとか。
これを制止することハなけれども、非人の家に門柳うふる事ハ、みぐるしき事とぞ承侍し。
つねにむかふ方ニちかく、さかきをうふることは、はばかりあるべきよし承こと侍りき。
門の中心ニあたるところに木をうふる事、はばかるべし。
方円なる地の中心に樹あれバ、そのいゑのあるじ常にくるしむことあるべし。
又方円地の中心ニ屋をたててゐれば、その家主禁ぜらるべし。