百首御歌の中に、独述懐と云ことをよませ給うける

後小松院御製



あきつはの
すかたの国と
定をきし
やまとしまねの
そのかみを
おもへはひさに
へたゝりて
あまのかく山
いつる日の
とこやみなりし
ほともなく
晴てさやけき
神代より
みもすそ河の
すみそめて
ともににこらぬ
いはしみつ
なかれはとをく
なりぬれと
この身たかはす
四のうみの
波をおさむる
名をかけて
おほうち山の
松の葉の
年の数のみ
つもれとも
民をしすくふ
ひとことも
なにはのあしの
みこもりに
なにのふしたに
あらはれす
されとこゝろに
をこたらす
世を思ふ程は
ひさかたの
空にしるらん
とあふきつゝ
雲ゐの月の
いくめくり
へにけるかたを
かそふれは
廿とせあまり
五たひの
春秋にこそ
成にけれ
これを思へは
すへらきの
八隅しるてふ
ちかき代の
ためしにさへも
こえぬるは
さやの中山
なか〳〵に
をろかなるみを
はつかしの
もりの下草
ふみ分て
さらは道ある
いにしへの
世にもかへさぬ
なけきのみ
つもる月日は
いたつらに
なすこともなき
なかめして
花もゝみちも
おり〳〵の
なさけはありと
しりなから
かつらの枝も
おりまよひ
わかの浦ちの
玉藻をも
かきえぬ程の
はかなさに
色をもかをも
しらなみの
よし野の河に
みかくるゝ
いはとかしはと
うつもれて
はるけんかたも
なよたけの
世の人はみな
夏ひきの
いとのひき〳〵
みたれつゝ
よりもあはねは
たれにかは
こゝろをよせん
とはかりに
よろつの事の
いふせくて
秋の木の葉の
ちり〳〵に
その色としも
おもほえぬ
筆のすさひは
露ほとの
ひかりもみえぬ
うらみさへ
忘れはてつゝ
入江なる
かけのもくつを
かきあつめぬる