例の、書読みて、「内侍になさむ」の心ありて、親は書を教ふるなりけり。
例の、ふみ読みて、「内侍ないしになさむ」の心ありて、親は書を教ふるなりけり。


文通はしにはいひたれど、この兄、心をまどはして、思ひいでられけり。
文通はしにはいひたれど、このせうと、心をまどはして、思ひいでられけり。


男、言ふやう
男、言ふやう


「かく思ひ出でられ、かぎりなき心を、思ひ知らずして、よそなる人を思ひ給へるこそつらけれ
「かく思ひ出でられ、かぎりなき心を、思ひ知らずして、よそなる人を思ひ給へるこそつらけれ


目に近く
見るかひもなく
思へども
心をほかに
やらばつらしな」
めにちかく
みるかひもなく
おもへども
こころをほかに
やらばつらしな」


と言ひければ、
と言ひければ、


「人の御心も知らずや。
「人の御心も知らずや。


あはれとは
君ばかりをぞ
思ふらむ
やるかたもなき
心とを知れ
あはれとは
きみばかりをぞ
おもふらむ
やるかたもなき
こころとをしれ


思ひぐまなや」
思ひぐまなや」


と言ひければ、すこし心ゆきて
と言ひければ、すこし心ゆきて


いとどしく
君が嘆きの
こがるれば
あらぬおもひも
燃えまさりけり
いとどしく
きみがなげきの
こがるれば
あらぬおもひも
もえまさりけり